89 / 233
88:旅の理由
しおりを挟む
セレスティアとエメリーネは話を聞くために、個室のあるカフェに入った。
「本当にごめんなさい、ごめんなさい!ご迷惑になるのは、わかってはいるんですが、本当に私一人ではどうしたらいいのか、わからなくて・・・」
そういうとエメリーネは、またグスッと泣きそうになっていた。
「いえ、お話しを伺うと決めたのは、私なので。ただ一つだけ、念を押しておきますね。」
「は、はい!」
「あくまでお話しを伺いますが、必ずしもご協力できるとはお約束できませんので、そこはご了承いただきたいです。」
当然だが、セレスティアは万能ではない。ぶっちゃけると『竜の祖』であるカイエルが番にいるし、懇意にしている『竜の祖』であるイシュタルやアンティエル、ラーファイルがいることから、何とかできるかもしれないが、まだ親しくもない相手に(いくらモフモフが可愛くても)安請け合いしたくないこともあるし、変に当てにされても困ることから、事前に予防線を張っておいた。それを聞いたエメリーネは何度も頷き、
「も、もちろんです。まずは私がなぜここフェリス王国まで来たのかお話しします。ただ、もし知っていることがあれば、教えて欲しいのです。」
セレスティアは、エメリーネは恐らく本当に手がかりがなくて、藁にもすがる気持ちで自分に打ち明けるのだろなと思った。
「・・・わかりました。」
「あ、ありがとうございます!」
パァッと明るい笑顔になったエメリーネであるが、必ずしも役に立てるか確約できる話かどうかもわからないだけに、セレスティアはの良心はチクリと傷んだ。
「え、えと私はシェスティラン共和国にあるラパルという村から来ました。」
シェスティラン共和国、それはアルス・アーツ大陸の五大国家のうちの一つで、獣人の国である。首都と呼ばれるバーナビーには、様々な種族の獣人が集っているが、基本的に獣人は、同じ種族で街や村が形成されていることが多いのだ。だが近年では首都を中心に各地で他種族同士で暮らす街や村も増えてきているのが昨今の状況である。それでも、人族に対しての偏見はまだ残っていた。そういう意味では、エメリーネのように初対面から低姿勢であるのは珍しかった。
また専制政治ではあるものの、世襲制ではないのが、この国の特徴でもあった。獣人らしく、決闘をして王を決めるのが習わしであったからだ。つまりは実力のない物は統治せずに能わず、ということである。
「私の村では、代々伝わるあるモノがあったのですが・・・」
「代々伝わるあるモノ?」
「はい、それについては後で詳しく話しますが、それが先日盗まれてしまったのです。」
何となく話が見えてきたなと思ったセレスティアは、
「もしかしてなんですけど、ソレがここフェリス王国にあるってことですかね?」
「凄いです!まだ全部お話していないのに、どうしてわかったんですか?!」
エメリーネは心底感心して驚いていた。
「・・・・・」
いや、今の話の流れなら誰でもわかると思う、とセレスティアは突っ込みを入れそうになったが、敢えて伏せていた。
「続きですが、私の村で占いに長けている者がいまして、その者の占いによると、ソレはフェリス王国にあるというのです。」
「ですが、どうして貴方がここに?失礼ですが、旅慣れもしていなさそうですし、女性よりも男性の方が任務としては適任だったと思うのですが・・・」
セレスティアは疑問だった。いくら獣人で身体能力が高いとはいっても、やはり女性だからだ。それに彼女は獣人にしては控えめな性格なようなので、本当にここまでよく辿り着けたと思ったのだ。というのもシェスティラン共和国はフェリス王国とは国を三つは挟むほどの距離があるので、通常であれば10日、獣人の足でも1週間以上はかかる距離にあったからだ。故に女性一人に捜索をさせるという行為に疑問だったのだ。
「は、はい仰ることは、ごもっともだと思います。ですが、その占いによりますと、奪還するには、私一人で赴かなければいけないということだったのです。だから一人できました。」
セレスティアには理解できないが、エメリーネの住む村では、占いとやらが重要視されているようであった。
「それは、・・・女性一人で大変でしたね。」
セレスティアは、先程の粗暴な輩に絡まれていたのを目の当たりにしていただけに心底同情していた。
「はい、本当に、先程のような荒くれ者に絡まれるのも一度や二度や三度ではなかったので・・・」
エメリーネは泣きべそをかいていたので、うんうん、そうだろうな、とセレスティアは思ったが、んんっ?と同時に疑問も沸いた。絡まれたのは一度や二度どころか三度ではない。ならばどうやってその場面を切り抜けたのだろうと思ったのだ。
「えーと、そんなに何度も危ない目にあったのですか?」
「はい!村を出てから、あんなに絡まれたのは初めてでした!そのたびに武術で撃退していましたが、私加減がいまいち掴めなくて、つい相手に必要以上に重傷を負わせてしまうのです。だからとっても怖かったです。グスッ」
そう言いながら、エメリーネはまた泣きべそになっていた。
えーと怖いの論点が少し違うのでは?とセレスティアは思ったが・・・あれ?もしかして私助けなくてもよかったのでは?と今更ながらに気付いてしまったのであった。
「本当にごめんなさい、ごめんなさい!ご迷惑になるのは、わかってはいるんですが、本当に私一人ではどうしたらいいのか、わからなくて・・・」
そういうとエメリーネは、またグスッと泣きそうになっていた。
「いえ、お話しを伺うと決めたのは、私なので。ただ一つだけ、念を押しておきますね。」
「は、はい!」
「あくまでお話しを伺いますが、必ずしもご協力できるとはお約束できませんので、そこはご了承いただきたいです。」
当然だが、セレスティアは万能ではない。ぶっちゃけると『竜の祖』であるカイエルが番にいるし、懇意にしている『竜の祖』であるイシュタルやアンティエル、ラーファイルがいることから、何とかできるかもしれないが、まだ親しくもない相手に(いくらモフモフが可愛くても)安請け合いしたくないこともあるし、変に当てにされても困ることから、事前に予防線を張っておいた。それを聞いたエメリーネは何度も頷き、
「も、もちろんです。まずは私がなぜここフェリス王国まで来たのかお話しします。ただ、もし知っていることがあれば、教えて欲しいのです。」
セレスティアは、エメリーネは恐らく本当に手がかりがなくて、藁にもすがる気持ちで自分に打ち明けるのだろなと思った。
「・・・わかりました。」
「あ、ありがとうございます!」
パァッと明るい笑顔になったエメリーネであるが、必ずしも役に立てるか確約できる話かどうかもわからないだけに、セレスティアはの良心はチクリと傷んだ。
「え、えと私はシェスティラン共和国にあるラパルという村から来ました。」
シェスティラン共和国、それはアルス・アーツ大陸の五大国家のうちの一つで、獣人の国である。首都と呼ばれるバーナビーには、様々な種族の獣人が集っているが、基本的に獣人は、同じ種族で街や村が形成されていることが多いのだ。だが近年では首都を中心に各地で他種族同士で暮らす街や村も増えてきているのが昨今の状況である。それでも、人族に対しての偏見はまだ残っていた。そういう意味では、エメリーネのように初対面から低姿勢であるのは珍しかった。
また専制政治ではあるものの、世襲制ではないのが、この国の特徴でもあった。獣人らしく、決闘をして王を決めるのが習わしであったからだ。つまりは実力のない物は統治せずに能わず、ということである。
「私の村では、代々伝わるあるモノがあったのですが・・・」
「代々伝わるあるモノ?」
「はい、それについては後で詳しく話しますが、それが先日盗まれてしまったのです。」
何となく話が見えてきたなと思ったセレスティアは、
「もしかしてなんですけど、ソレがここフェリス王国にあるってことですかね?」
「凄いです!まだ全部お話していないのに、どうしてわかったんですか?!」
エメリーネは心底感心して驚いていた。
「・・・・・」
いや、今の話の流れなら誰でもわかると思う、とセレスティアは突っ込みを入れそうになったが、敢えて伏せていた。
「続きですが、私の村で占いに長けている者がいまして、その者の占いによると、ソレはフェリス王国にあるというのです。」
「ですが、どうして貴方がここに?失礼ですが、旅慣れもしていなさそうですし、女性よりも男性の方が任務としては適任だったと思うのですが・・・」
セレスティアは疑問だった。いくら獣人で身体能力が高いとはいっても、やはり女性だからだ。それに彼女は獣人にしては控えめな性格なようなので、本当にここまでよく辿り着けたと思ったのだ。というのもシェスティラン共和国はフェリス王国とは国を三つは挟むほどの距離があるので、通常であれば10日、獣人の足でも1週間以上はかかる距離にあったからだ。故に女性一人に捜索をさせるという行為に疑問だったのだ。
「は、はい仰ることは、ごもっともだと思います。ですが、その占いによりますと、奪還するには、私一人で赴かなければいけないということだったのです。だから一人できました。」
セレスティアには理解できないが、エメリーネの住む村では、占いとやらが重要視されているようであった。
「それは、・・・女性一人で大変でしたね。」
セレスティアは、先程の粗暴な輩に絡まれていたのを目の当たりにしていただけに心底同情していた。
「はい、本当に、先程のような荒くれ者に絡まれるのも一度や二度や三度ではなかったので・・・」
エメリーネは泣きべそをかいていたので、うんうん、そうだろうな、とセレスティアは思ったが、んんっ?と同時に疑問も沸いた。絡まれたのは一度や二度どころか三度ではない。ならばどうやってその場面を切り抜けたのだろうと思ったのだ。
「えーと、そんなに何度も危ない目にあったのですか?」
「はい!村を出てから、あんなに絡まれたのは初めてでした!そのたびに武術で撃退していましたが、私加減がいまいち掴めなくて、つい相手に必要以上に重傷を負わせてしまうのです。だからとっても怖かったです。グスッ」
そう言いながら、エメリーネはまた泣きべそになっていた。
えーと怖いの論点が少し違うのでは?とセレスティアは思ったが・・・あれ?もしかして私助けなくてもよかったのでは?と今更ながらに気付いてしまったのであった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる