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しおりを挟むどうして俺はこれほどジュリアを愛しく思うのだろう?
今までの女性とどこが違う?
彼女の屈託のない笑顔を思い出そうとしても、心は怒りに占領されてしまっていた。
どうしてアガトンに体を許した? しかも俺の弟に! それとも、不貞などアガトンの嘘なのか? 嘘だとしたらどうして? 本当に彼女が体を許していたら、お腹の子が弟との子どもだったとしたら、俺はどうすればいい?
この怒りをどう処理すればいい?
苦しくて辛くて、自分の心臓を握りつぶしてしまいたいくらいだった。
確かなことは、今はもう彼女の言葉を信じることも聞くこともできないということだった。
待ち望んでいた彼女との子どもも、なにか汚いものに汚されてしまったかのように思えてならなかった。悪魔が彼女の腹に宿っている、なんて感覚にさえ陥った。そんなことあり得るわけがないのに。
頭では彼女を信じるべきだと、不貞など起こすはずかないと、そう訴えてくるのに、心はそれを拒否してくる。
もう自分ではどうしようもなかった。抑えきれない怒りと憎しみに押しつぶされそうになった。
衝動的に取った俺の行動のせいで、彼女は脅え、足を踏み外して階段から落ちる羽目になってしまったのだ。
今の俺は無力だ。
ただジュリアの無事を祈ることしかできない。
もう一本葉巻を吸い直そうとシガーケースを手にした時だった。
ガチャリ。
中から医者が沈痛な面持ちで出てきた。
俺はシガーケースをむねぽけっとにしまう。
「先生、妻の容態はどうです?」
「幸運なことに夫人の命に別状はありませんでした」
「よかった……」
ホッと胸を撫で下ろした。いつのまにか肩に力が入っていたようで、それもふっと抜けた感覚があった。
ジュリアは階段から受け身も取らず転げ落ちてしまったのだ。何かあったらと思うと気が気ではなかった。真っ青になって傷だらけになったジュリアを思い出しただけて今でもヒヤリと胸が冷たくなる。
「それで、お腹の子は?」
「それが……何とお伝えすればいいのか……」
暗い表情で言葉を濁す医者に、俺はすぐさま状況を察した。
「先生は、先生にできることを精一杯してくださいました」
あれだけの衝撃を体に受けて、お腹の子が無事であるはずがない。ジュリアは腹をとっさに庇っていたが、庇いきれなかったのだろう。
お腹の子は、階段を落ちた衝撃によって、儚くなって天に召されてしまったのだ。
先生に最後まで言わせてしまうのも酷だと思い、これ以上何も言わせない方がいいと思った。
「先生、ありがとうございました」
俺は医者の言葉を最後まで聞かずに、部屋の中に入った。
中にはベッドで横になるジュリアと、そばに寄り添うクリスティーナがいた。
重苦しい空気が部屋中を取り巻いていた。ゆっくりとベッドに近づくと、彼女の側にあった椅子に座り、彼女の手を取った。
「ジュリア、無事でよかった」
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