37 / 55
13-2
しおりを挟む
「いや、……俺たちの子が生まれていたら、こんなにも可愛かったのかと思ったら思わず……すまない。言葉が悪かった」
目を伏せて下を見つめる彼の顔には、後悔の念が少し見た気がした。
まだ少し彼の言葉にはムッとしていたが、素直に謝る彼を睨みつけるのをやめた。そして、彼は目を細めてまた同じことを聞いてきた。
「あの教授との子どもなのか?」
「それは……」
切ないブルーの瞳が泣きそうなほど揺れている。彼はすぐに目を逸らした。
「いや、やっぱり言わなくてもいいよ」
彼の子どもだとはバレていないみたいだ。ケビンとの子どもだと誤解してくれたのかしら?
「他の男と暮らして、子どもまでいる君のことを嫌いになれない俺はなんて愚かなんだろう」
私だってあなたを嫌いになりたい。だけど、どうしても嫌うことができないからせめて忘れようとしたのに、なぜまた私の前に現れたの。
「いっそのこと嫌いになってしまえたらどんなに楽か。どうしようもないくらいに君に惚れている」
「私たちの関係はもう終わっているわ」
「終わらせたくないんだ」
なんでしつこいのかしら。その執着心に呆れた。
とこまでも平行線で、交わることがない互いの意見。
睨み合っていたが、ランドルフがセーラに視線を落とす。
「ジュリア、その子を抱かせてもらってもいいだろうか」
「ええ」
セーラをランドルフの腕の中に渡した。おっかなびっくりセーラを抱き抱える。大きなランドルフの体に抱っこされているセーラは、さらに小さく見えた。
「赤ん坊はこんなにふわふわで柔らかいのか。潰してしまいそうで怖いな」
「落としたりしないでよ」
そんな心配は全くしていなかったけど、何か言わないといけない気がして軽口を叩いた。
「ああ、絶対に落としたりしない」
セーラを愛おしそうに抱きしめている姿を見て、なんだか泣きそうになった。
◇
1週間が経ったが、ランドルフはセーラと出会った後も変わらず研究室にいる私の元へ毎日訪ねてくる。
もう彼は戻ってきて欲しいと復縁を迫ることはなかった。代わりにセーラの居所を毎回尋ねてくるのだ。
「今日はセーラはいないのか?」
「ケビンのお母さんに預けているわ」
「そうか……」
そうやって寂しそうに呟かれると、なぜか私が悪いことをしている気がしてくる。
「セーラは次いつ来るんだ?」
「ここに連れてくることは滅多にないわよ」
「なぜ?」
「なぜって、ここは大学で仕事場よ? 子どもを連れてくる場所じゃないわ」
「俺がずっと見ているよ」
「あなたに赤ちゃんの扱い方がわかるとは思えないけど」
「教えてくれ。覚えるから」
「どうしてそんなに必死なの」
「さあ、なぜだか自分でもわからない。けど、あの天使にもう一度会いたくてたまらないんだ」
毎日交わすこのやりとり。
セーラはここにはいないけれど、もう彼は私ではなくてセーラに会いに来ているようなものだった。
セーラの青い目や金髪、この精悍で美しい顔立ちはあなたそっくりなのに、なんで気づかないの?本当に愚か者だわ。
気づいてほしくないのに、気がついてほしい。
相反する気持ちが溢れて声に出してしまいそうだ。
これ以上彼に会いたくない。セーラに会わせるのもダメだ。
目を伏せて下を見つめる彼の顔には、後悔の念が少し見た気がした。
まだ少し彼の言葉にはムッとしていたが、素直に謝る彼を睨みつけるのをやめた。そして、彼は目を細めてまた同じことを聞いてきた。
「あの教授との子どもなのか?」
「それは……」
切ないブルーの瞳が泣きそうなほど揺れている。彼はすぐに目を逸らした。
「いや、やっぱり言わなくてもいいよ」
彼の子どもだとはバレていないみたいだ。ケビンとの子どもだと誤解してくれたのかしら?
「他の男と暮らして、子どもまでいる君のことを嫌いになれない俺はなんて愚かなんだろう」
私だってあなたを嫌いになりたい。だけど、どうしても嫌うことができないからせめて忘れようとしたのに、なぜまた私の前に現れたの。
「いっそのこと嫌いになってしまえたらどんなに楽か。どうしようもないくらいに君に惚れている」
「私たちの関係はもう終わっているわ」
「終わらせたくないんだ」
なんでしつこいのかしら。その執着心に呆れた。
とこまでも平行線で、交わることがない互いの意見。
睨み合っていたが、ランドルフがセーラに視線を落とす。
「ジュリア、その子を抱かせてもらってもいいだろうか」
「ええ」
セーラをランドルフの腕の中に渡した。おっかなびっくりセーラを抱き抱える。大きなランドルフの体に抱っこされているセーラは、さらに小さく見えた。
「赤ん坊はこんなにふわふわで柔らかいのか。潰してしまいそうで怖いな」
「落としたりしないでよ」
そんな心配は全くしていなかったけど、何か言わないといけない気がして軽口を叩いた。
「ああ、絶対に落としたりしない」
セーラを愛おしそうに抱きしめている姿を見て、なんだか泣きそうになった。
◇
1週間が経ったが、ランドルフはセーラと出会った後も変わらず研究室にいる私の元へ毎日訪ねてくる。
もう彼は戻ってきて欲しいと復縁を迫ることはなかった。代わりにセーラの居所を毎回尋ねてくるのだ。
「今日はセーラはいないのか?」
「ケビンのお母さんに預けているわ」
「そうか……」
そうやって寂しそうに呟かれると、なぜか私が悪いことをしている気がしてくる。
「セーラは次いつ来るんだ?」
「ここに連れてくることは滅多にないわよ」
「なぜ?」
「なぜって、ここは大学で仕事場よ? 子どもを連れてくる場所じゃないわ」
「俺がずっと見ているよ」
「あなたに赤ちゃんの扱い方がわかるとは思えないけど」
「教えてくれ。覚えるから」
「どうしてそんなに必死なの」
「さあ、なぜだか自分でもわからない。けど、あの天使にもう一度会いたくてたまらないんだ」
毎日交わすこのやりとり。
セーラはここにはいないけれど、もう彼は私ではなくてセーラに会いに来ているようなものだった。
セーラの青い目や金髪、この精悍で美しい顔立ちはあなたそっくりなのに、なんで気づかないの?本当に愚か者だわ。
気づいてほしくないのに、気がついてほしい。
相反する気持ちが溢れて声に出してしまいそうだ。
これ以上彼に会いたくない。セーラに会わせるのもダメだ。
281
あなたにおすすめの小説
【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる