傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う

ノルジャン

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「いや、……俺たちの子が生まれていたら、こんなにも可愛かったのかと思ったら思わず……すまない。言葉が悪かった」

 目を伏せて下を見つめる彼の顔には、後悔の念が少し見た気がした。

 まだ少し彼の言葉にはムッとしていたが、素直に謝る彼を睨みつけるのをやめた。そして、彼は目を細めてまた同じことを聞いてきた。

「あの教授との子どもなのか?」

「それは……」

 切ないブルーの瞳が泣きそうなほど揺れている。彼はすぐに目を逸らした。

「いや、やっぱり言わなくてもいいよ」
 
 彼の子どもだとはバレていないみたいだ。ケビンとの子どもだと誤解してくれたのかしら?

「他の男と暮らして、子どもまでいる君のことを嫌いになれない俺はなんて愚かなんだろう」

 私だってあなたを嫌いになりたい。だけど、どうしても嫌うことができないからせめて忘れようとしたのに、なぜまた私の前に現れたの。
 
「いっそのこと嫌いになってしまえたらどんなに楽か。どうしようもないくらいに君に惚れている」

「私たちの関係はもう終わっているわ」

「終わらせたくないんだ」

 なんでしつこいのかしら。その執着心に呆れた。

 とこまでも平行線で、交わることがない互いの意見。

 睨み合っていたが、ランドルフがセーラに視線を落とす。

「ジュリア、その子を抱かせてもらってもいいだろうか」

「ええ」

 セーラをランドルフの腕の中に渡した。おっかなびっくりセーラを抱き抱える。大きなランドルフの体に抱っこされているセーラは、さらに小さく見えた。

「赤ん坊はこんなにふわふわで柔らかいのか。潰してしまいそうで怖いな」

「落としたりしないでよ」

 そんな心配は全くしていなかったけど、何か言わないといけない気がして軽口を叩いた。
 
「ああ、絶対に落としたりしない」

 セーラを愛おしそうに抱きしめている姿を見て、なんだか泣きそうになった。


 ◇

 1週間が経ったが、ランドルフはセーラと出会った後も変わらず研究室にいる私の元へ毎日訪ねてくる。

 もう彼は戻ってきて欲しいと復縁を迫ることはなかった。代わりにセーラの居所を毎回尋ねてくるのだ。

「今日はセーラはいないのか?」

「ケビンのお母さんに預けているわ」

「そうか……」

 そうやって寂しそうに呟かれると、なぜか私が悪いことをしている気がしてくる。

「セーラは次いつ来るんだ?」

「ここに連れてくることは滅多にないわよ」

「なぜ?」

「なぜって、ここは大学で仕事場よ? 子どもを連れてくる場所じゃないわ」

「俺がずっと見ているよ」

「あなたに赤ちゃんの扱い方がわかるとは思えないけど」

「教えてくれ。覚えるから」

「どうしてそんなに必死なの」

「さあ、なぜだか自分でもわからない。けど、あの天使にもう一度会いたくてたまらないんだ」

 毎日交わすこのやりとり。
 セーラはここにはいないけれど、もう彼は私ではなくてセーラに会いに来ているようなものだった。

 セーラの青い目や金髪、この精悍で美しい顔立ちはあなたそっくりなのに、なんで気づかないの?本当に愚か者だわ。

 気づいてほしくないのに、気がついてほしい。
 相反する気持ちが溢れて声に出してしまいそうだ。
 これ以上彼に会いたくない。セーラに会わせるのもダメだ。
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