傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う

ノルジャン

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19 ランドルフの姿

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 馬車にしばらく揺られて、ガタゴトと揺れる振動が心地よかったのか、セーラはぐっすりと眠ってくれた。

 そしてついに、プロミネンス伯爵家の屋敷へ辿り着いた。

「ジュリア様、ようこそお越しくださいました」

 クリスティーナが深々と腰を追って屋敷のへ迎え入れてくれる。

「クリスティーナ、この前会った時よりあなたなんだかやつれていない?」

 数日前だったというのに、疲弊し切った顔をしているのがわかった。

「私はもうどうしたらいいか」

 彼女は泣き出しそうなほど悲痛な顔を手で覆い隠した。

「泣かないでクリスティーナ。私が来たのだから大丈夫よ。さぁ、こんなところでは目立ってしまうわ。中に入りましょう?」

 私はセーラを連れ、彼女の肩を抱いて中に進んでいった。

 久々に足を踏み入れたお屋敷は、相変わらず荘厳な雰囲気に包まれていた。重厚な扉や柱は重々しく陰気な気持ちにさせられる。
 初めてここを訪れた時は、物珍しさの方が勝ってしまって、きょろきょろと辺りを見回してランドルフに笑われたことを思い出した。
 あの頃の自分の能天気さと純粋さを思い出して、懐かしむ気持ちと苦々しさを同時に感じた。

 今まで使っていた夫婦の部屋ではなく、ゲストルームを案内してもらい、泣き崩れそうなクリスティーナを近くの椅子に座らせた。

「クリスティーナ、話を聞かせてちょうだい。どうしてこんなに疲れ切っているのかを」

 私はクリスティーナにハンカチを手渡した。彼女はそれを受け取って涙を拭いた後、口を開いた。
 
「ランドルフ様は帰還後、ずっと自室に篭っております。なので看病もこれといってすることは少ないのですが、ランドルフ様は戦場で両目を負傷されてしまったのです。敵の砲弾の破片が目に入ってしまい、角膜を損傷したことで視力の回復は見込めないとのことです。」

「そんな……で、でも、もしかしたらこれから治るかもしれないでしょう?」

「お医者様の見立てでは、もう視力は戻らないだろうとのことです」

「どうしてランドルフがそんな目に」

 私は両手で口を覆った。
 
「もう目の中の破片は全て取り除いているはずなのに、ランドルフ様は毎晩悪夢にうなされて苦しんでおります」

「それをあなたは1人で看病を?」

「はい、その通りです。看病するのは別に問題ではないのです。ですが、ランドルフ様の苦しみようを見ていられないのです」

「どういうことなの」

「毎夜毎夜、うなされております。ずっとお仲間の兵士の方のお名前を叫んで、最後にアガトン様のお名前を出されて、ずっと謝っておいでなのです」

「そうなの……」

「あんなに苦しんでいるランドルフ様を見るのは初めてです。睡眠薬をお医者様に処方してもらっているのに、それでもひどくうなされております! もうどうしたらいいか、わからないのです」
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