異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ

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第1章 転生と牧場のはじまり

第5話「はじめての動物屋さんと、牛のナナちゃん」

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 出荷箱の売上通知を確認し、ほくほく顔のはるとは、今日は朝からお出かけの準備をしていた。

「よし、今日は“動物屋さん”に行くか」

 リンネが以前話していた「牧畜初心者支援サービス」とやらを受けに、リーヴァの村の西にあるグレイン牧畜屋を目指すのだ。

「トコトコのコトコも元気そうだし、そろそろ“本格的な家畜”もお迎えしたいよな」

 飼い葉のストックも増えたし、牧場の柵も昨日補修したばかり。
 牧場主(見習い)として、一歩前進のタイミングだ。



 午前10時ごろ、村の西のはずれ。木造の広い建物の前に「グレイン牧畜屋」と書かれた看板が揺れていた。

「こんにちはー!」

「いらっしゃい!」

 出迎えたのは、背の高い、優しそうな女性。栗色の髪を三つ編みにしたおっとり系のエマさんだった。

「あなたが、最近牧場を始めた“はるとさん”ね? リンネちゃんから聞いてるわ♪」

「……あ、やっぱり話回ってるんですね」

「うふふ。あの子、おしゃべりだけどいい子よ」

 エマさんに案内されて、屋内へ入ると、そこには……いた。

 白と茶のまだら模様の子牛が、干し草の上でのんびり寝転んでいた。丸っこい身体に、とろーんとした瞳。

「こ、この子は……!」

「この子は“ナナ”。人懐っこくて初心者向け。今朝生まれたばかりで、まだ名前もついてないの」

 エマさんがそう言った瞬間──

「ナナちゃんっ、かわいいーっ!」

 背後から飛び込んできた元気な声。振り向くと、案の定リンネが駆け込んできた。

「……え、なんでいるの?」

「だって今日は“動物屋さんに行く日”って言ってたじゃん! 一緒に行こうと思って~!」

 ふわふわの耳がぱたぱたと揺れ、嬉しそうなリンネがナナちゃんの鼻先に指を差し出すと──

「もーぅ」

 ナナちゃんは遠慮なくぺろぺろと舐め始めた。

「きゃっ、くすぐった~い!」

 リンネの笑い声に、牛も楽しそうに鳴く。

「はるとさん、この子、今日からあなたの牧場に行く? お試し期間中だから、1週間無料で貸し出しできるわ」

「えっ、そんな制度あるんですか」

「うんうん、牧場振興制度の一環でね。“牛1週間お試しキャンペーン”っていうの。エサも2日分つけておくわよ」

「……ネーミングがそのまんまだな。でもありがたいです、ぜひお願いします!」



 こうして、ナナちゃんは小型荷車に乗って、はるとの牧場へ移動されることになった。
 途中、村人たちから「おっ、ついに家畜か!」「ナナちゃん、いい子だぞ~!」と声をかけられる。

「ナナちゃん、人気なんだなぁ」

「うん、この村で生まれた子だから、みんなの“顔見知り”なんだよね」

 リンネがそう教えてくれた。
 ゲームのNPCとは違う、“人と動物の関係性”が、この世界には生きている。



 牧場に戻ったはるとは、以前整備した柵の中にナナちゃんを迎え入れた。
 ナナちゃんは特に警戒もせず、のんびりと草を食み始める。

「うん、馴染んでるな……よし、じゃあ……!」

 はるとはウィンドウを開き、「家畜管理」タブを選択。

【ナナ(牛・♀)】
・年齢:0歳(子牛)
・健康度:100%
・親愛度:30/100
・乳生産:まだ不可
・特性:おっとり、人懐っこい

「おぉ……管理機能もしっかりあるんだ」

「ナナちゃん、ちゃんと名前つけてくれて嬉しそうだよ!」

 リンネが隣で頷く。ふと、はるとは小さく息をついた。

「……こうして、命を預かるのって、責任があるな。でも──悪くない」

「はるとって、さ。前よりずっと、いい顔になったよ?」

「え?」

「最初に会ったときより、ずっと柔らかい顔してる。たぶん、それが“本当の顔”なんだと思う」

 まっすぐに向けられるその言葉に、はるとは少し照れくさそうに目を逸らした。

「……なんだよ、急に」

「ふふふっ。なんでもなーい」



 日が傾くころ、出荷箱にはエマさんからの小包が置かれていた。

《ナナちゃんのこと、よろしくね。あの子は甘えん坊だから、よく話しかけてあげてね。エマより》

 その包みには、小さな木製ブラシと、手作りのリボンが入っていた。

「……こういうの、すごくいいな」

 誰かが誰かを思って、何かを贈る。そんな関係の中で、自分も少しずつ“ここでの生き方”を学んでいく。

「ナナちゃん、明日もよろしくな」

 そう声をかけながら、はるとは牛舎の戸を優しく閉めた。



 一方、現実世界。
 天城ひなのは、兄の使っていたゲームソフトを何度も起動しようとするが、やはり反応はない。
 だがそのとき、画面の隅に一瞬だけ“接続中”という謎の文字が浮かんだ。

「……? いま、なにか動いた?」

 ひなのは小さく首をかしげた。
 彼女がこの世界と繋がる日は、もうそう遠くない。


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