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第6章女神の真意と、“料理の奇跡”
第2話 二つの都に四つの鍋
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謁見の間を出ると、廊下は朝の光を吸い込んで薄く金色に揺れていた。
私たちは歩きながら、同時に息を吐く。十拍、ちょうど。
「……緊張した」
私が漏らすと、隣でセイル王子が小さく笑った。
「君、緊張している顔じゃなかったよ」
「心は、鍋みたいにぐらぐらでした」
「鍋はぐつぐつでいい。焦げさえしなければね」
グラド副長が前を歩きながら、肩越しに低く言う。
騎士の足音が、石床に均等なリズムを打った。
「それで、二つの都に四つの鍋、配置はどうする?」
王子が問う。私は《段取り最適化》を開き、頭の中に四つの丸鍋を置いた。
「魔都は、市中に二か所——大市広場の東端と、港門の市場。城内は謁見前の広間に一か所。
王都は、常設鍋を広場に残し、城下の学び舎の前に新設。……人と話し合いが自然に生まれる“角”に置きたいです」
「学び舎に鍋か」
「湯気の高さを覚えるのに、子どもは最適です。大人は、子どもと同じ高さに顔を下げるから」
「理にかなっている」
王子が頷くと、ルークが小走りで前に出た。
「ぼく、旗の高さ、覚え係やる!」
「頼んだよ。結び目は君の目の高さね」
「うん!」
曲がり角を抜けると、魔都城の内庭がひらけた。低い噴水と薬草の畝。風向きを測る薄旗が控えめに揺れている。
ラウモンドが両手に紙束を抱えて待っていた。後ろには、昨夜名前を告げた記録官カーディンの姿。
「配置図と在庫の鼻、持ってきた」
「助かります」
「旧棚の目録、まずは“柑根油”“黒角砂”“羊骨だし”から洗う。匂いの混線、起きやすい」
「調香庫は明朝に約束しました。——耳の鍋も用意します」
カーディンがわずかに目を伏せ、頷いた。
「もう逃げない。鍋で話す」
「よし」
グラドが短く笑う。
ラウモンドが紙束を捲りながら、視線を私に投げた。
「魔王の“王の椀”、朝の一滴。あれは手順書にする価値がある」
「三行で書けます」
「三行?」
「一、旗は低く。
二、湯気は胸。
三、甘は二口。——以上」
「いい。本に入る」
そう言ってラウモンドは口角をわずかに上げた。
私は胸の内で小さくガッツポーズを作る。地球で書いた“家庭の味”に、こっちの世界の三行が並ぶ。夢みたいだ。
---
魔都・大市広場の東端。
石畳に白線を引いて鍋の陣をつくり、火力石を三つ、風よけ布を二重に結ぶ。
旗は低く、湯気は胸。ルークの結び目は一回でぴたりと決まった。
「主は“骨付き柔煮”。副は“香葉の蒸し団子”。そして“橋の雑穀粥”——王都と同じ編成でいい?」
セイル王子が確認する。
「はい。初日は『同じ香りが来た』と覚えてもらいたい。違いは“耳の鍋”」
「耳の鍋?」
「噂が熱くなりすぎたら、蓋を少しずらして静かにする、聞くための鍋です。——薄めの“和薬湯”を常に低火で」
「なるほど」
準備が整うころ、広場の空気がざわりと動いた。
魔族の行商、旅の楽師、黒印を肩から外した屋台夫、そして子どもたち。
昨夜の大市で顔を合わせた人たちが、警戒と好奇心を半分ずつ抱えて寄ってくる。
「始まりの椀、どうぞ」
私は最初の粥をよそい、甘を一匙だけ送り込む。
角持ちの少女が両手で器を抱え、恐る恐る一口。
「……あったかい」
「名前、教えてくれる?」
「ナア。……たぶん、また来る」
「いつでもどうぞ。旗の結び目の高さを、覚えて帰ってね」
「うん」
少女は旗を見上げ、結び目に指を伸ばしてから、走り去った。
湯気に笑い声が混ざり、緊張が一枚、空から剥がれて落ちる。
「カスミアーナ殿、城内の鍋も動き始めた。——副官シュラより伝令」
グラドが耳に手を当て、短く告げる。
「“焦げ無し、湯気胸。甘二口、静寂十分”」
「合図は届いてる」
私の胸の中で、女神の匙がじんと温かい。
四つの鍋が、同じ高さの湯気で繋がっていく。見えないけれど、確かに。
---
昼の手前。
噂が熱を帯びる前に“耳の鍋”の蓋を少しずらす。
薄い和薬湯を配ると、わっとしていた声が一拍で落ち、笑いと会釈に置き換わる。
「議会の書記です。……この甘味、二口という規定、不思議だ」
「舌が言葉を削るんです。甘いと長く喋れない。けれど機嫌はよくなる」
「議場に導入したい」
「冷やす場所、作ってからにしてください」
「むむ……検討します」
書記が去ると、今度は黒印屋台の男が帽子を胸に抱え、列の最後尾に並んだ。
昨日までの尖った空気は、少し鈍い。けれど目は逃げない。
「一椀、ください」
「橋の粥でよろしいですか」
「はい」
彼は一口すすり、深く息を吐いた。
「……腹が、帰るって言葉。あれ、好きです」
「私もです」
言葉はそれだけ。器が返る手は、わずかに震えていた。
噂は熱い。けれど、腹は静かだ。それでいい。
---
日が傾き始めたころ。
私たちはいったん鍋を落ち火にし、城内の鍋の様子を見に戻る。
通路の角で、カーディンが帳面を抱え、待っていた。
「調香庫、旧在庫の洗い出し、仮の順番を作った。——鼻でなく、手で並べ替えた。最後に、君の鼻で確かめてほしい」
「今からいきましょう」
調香庫は、香りの層でできた洞窟みたいだった。
柑根、黒角砂、羊骨、古麦、香葉。
空気を、横に押すように歩く。
「ここに“古い冬”の匂いが残っています。——昔の配合、誰かが守ってましたね」
「……母だ」
不意にカーディンの声がかすれた。
彼は棚の小さな印を指さす。角砂の箱の底、幼い字で、母の名。
「外注に手を出したのは、書類のためだった。……母の手が消えるのが怖かったのに、早さを優先した。
だから、今日は並べる。母の順番で」
「いい並びになります。焦がさず、熱だけ渡せる棚に」
私は角砂の箱をひとつ取り、蓋を開けた。
甘い。けれど、ふくらみが上に逃げない甘さだ。二口で足りる。
ああ、これは。——静けさの甘味。
「“議場のぷりん”に使いましょう」
「ぷりん?」
「沈黙の間の、王都版。二口で喧嘩を止めます」
カーディンがやっと笑った。
涙を、笑いで蓋する大人のやり方で。
---
城の広間に戻ると、セイル王子が配膳台の前で腕を組んでいた。
グラドは出入り口に、ラウモンドは伝令の傍。
私は合図の香をふっと焚く。
「本日の“締めの椀”を、四つの鍋、同時に配ります」
「同時?」
「はい。魔都二つ、城内一つ、王都一つ。——湯気の高さを合わせます」
王子が目を細めた。
「遠い鍋の湯気を、どうやって合わせる?」
「香り文で」
私は香袋を取り出し、糸で結んだ。
“甘二口”“塩半月”“出汁一滴”を細い紙に染み込ませ、合図の順に三枚。
ラウモンドが身を乗り出す。
「それは……手紙になる」
「はい。風に読ませます」
私は窓を少し開け、旗の結び目と同じ高さに香り文をかざした。
風がひとひら、紙を撫でていく。
女神の匙が、ふっと熱を帯びる。
「——今です」
合図の旗が左右の調理台で同時に下がり、湯気が胸の高さでそろった。
遠く王都の広場でも、きっと同じ高さの湯気が立っている。
見えないけれど、わかる。胸の火が、静かに答えた。
「いただきます!」
四つの場所で同じ声が重なった気がした。
私は思わず、空へ小さく手を振った。
---
夜。
鍋を洗い、旗を畳み、台所の戸を閉める。
今日の振り返りを三行で手帳に記す。
——鍋は約束。
——湯気は橋。
——甘味は静寂。
その下に、もう三行、書き足す。
——耳に鍋。
——母の順番。
——香り文は風の手紙。
「カスミ」
戸口にセイル王子が立っていた。
“王の椀”のときと同じ、静かな目。
「ありがとう。……二つの都が、同じ高さで息をした」
「こちらこそ。王子が旗を低くしてくれるから、湯気が迷いません」
「明日は、学び舎の鍋だな」
「はい。子どもたちに、結び目の高さを伝えます」
「子どもに伝われば、大人もわかる」
「そう信じています」
王子は少し考え、それから言った。
「いつか——地球の学び舎にも、鍋を置ける日が来るだろうか」
胸の奥で、女神の匙がやさしく熱を返した。
まだ遠い。でも、道は香りで描ける。
「そのときは、“家庭の味”から始めましょう。ぷりんと味噌汁と、白いごはん」
「いいね」
王子が笑う。
私は《ステータス》を開いた。
《場制御 11(維持)/段取り最適化 9→10/嗅覚強化 9(維持)》
《称号:鍋の約束/追加特記:香り文作成(風伝達)》
少しだけ、火が強くなる。
でも焦がさない。焦がさず、熱だけ。
「おやすみなさい、王子。——明日は子どもと同じ目線で」
「おやすみ、家族印の匙」
扉を閉めると、台所は静かになった。
私は窓を少し開け、夜風に一枚だけ香り文を流す。
“甘二口。——よく眠れますように。”
風がそれを連れていく。
遠くで鐘が一つ鳴り、世界が同じ高さで、息をした。
私たちは歩きながら、同時に息を吐く。十拍、ちょうど。
「……緊張した」
私が漏らすと、隣でセイル王子が小さく笑った。
「君、緊張している顔じゃなかったよ」
「心は、鍋みたいにぐらぐらでした」
「鍋はぐつぐつでいい。焦げさえしなければね」
グラド副長が前を歩きながら、肩越しに低く言う。
騎士の足音が、石床に均等なリズムを打った。
「それで、二つの都に四つの鍋、配置はどうする?」
王子が問う。私は《段取り最適化》を開き、頭の中に四つの丸鍋を置いた。
「魔都は、市中に二か所——大市広場の東端と、港門の市場。城内は謁見前の広間に一か所。
王都は、常設鍋を広場に残し、城下の学び舎の前に新設。……人と話し合いが自然に生まれる“角”に置きたいです」
「学び舎に鍋か」
「湯気の高さを覚えるのに、子どもは最適です。大人は、子どもと同じ高さに顔を下げるから」
「理にかなっている」
王子が頷くと、ルークが小走りで前に出た。
「ぼく、旗の高さ、覚え係やる!」
「頼んだよ。結び目は君の目の高さね」
「うん!」
曲がり角を抜けると、魔都城の内庭がひらけた。低い噴水と薬草の畝。風向きを測る薄旗が控えめに揺れている。
ラウモンドが両手に紙束を抱えて待っていた。後ろには、昨夜名前を告げた記録官カーディンの姿。
「配置図と在庫の鼻、持ってきた」
「助かります」
「旧棚の目録、まずは“柑根油”“黒角砂”“羊骨だし”から洗う。匂いの混線、起きやすい」
「調香庫は明朝に約束しました。——耳の鍋も用意します」
カーディンがわずかに目を伏せ、頷いた。
「もう逃げない。鍋で話す」
「よし」
グラドが短く笑う。
ラウモンドが紙束を捲りながら、視線を私に投げた。
「魔王の“王の椀”、朝の一滴。あれは手順書にする価値がある」
「三行で書けます」
「三行?」
「一、旗は低く。
二、湯気は胸。
三、甘は二口。——以上」
「いい。本に入る」
そう言ってラウモンドは口角をわずかに上げた。
私は胸の内で小さくガッツポーズを作る。地球で書いた“家庭の味”に、こっちの世界の三行が並ぶ。夢みたいだ。
---
魔都・大市広場の東端。
石畳に白線を引いて鍋の陣をつくり、火力石を三つ、風よけ布を二重に結ぶ。
旗は低く、湯気は胸。ルークの結び目は一回でぴたりと決まった。
「主は“骨付き柔煮”。副は“香葉の蒸し団子”。そして“橋の雑穀粥”——王都と同じ編成でいい?」
セイル王子が確認する。
「はい。初日は『同じ香りが来た』と覚えてもらいたい。違いは“耳の鍋”」
「耳の鍋?」
「噂が熱くなりすぎたら、蓋を少しずらして静かにする、聞くための鍋です。——薄めの“和薬湯”を常に低火で」
「なるほど」
準備が整うころ、広場の空気がざわりと動いた。
魔族の行商、旅の楽師、黒印を肩から外した屋台夫、そして子どもたち。
昨夜の大市で顔を合わせた人たちが、警戒と好奇心を半分ずつ抱えて寄ってくる。
「始まりの椀、どうぞ」
私は最初の粥をよそい、甘を一匙だけ送り込む。
角持ちの少女が両手で器を抱え、恐る恐る一口。
「……あったかい」
「名前、教えてくれる?」
「ナア。……たぶん、また来る」
「いつでもどうぞ。旗の結び目の高さを、覚えて帰ってね」
「うん」
少女は旗を見上げ、結び目に指を伸ばしてから、走り去った。
湯気に笑い声が混ざり、緊張が一枚、空から剥がれて落ちる。
「カスミアーナ殿、城内の鍋も動き始めた。——副官シュラより伝令」
グラドが耳に手を当て、短く告げる。
「“焦げ無し、湯気胸。甘二口、静寂十分”」
「合図は届いてる」
私の胸の中で、女神の匙がじんと温かい。
四つの鍋が、同じ高さの湯気で繋がっていく。見えないけれど、確かに。
---
昼の手前。
噂が熱を帯びる前に“耳の鍋”の蓋を少しずらす。
薄い和薬湯を配ると、わっとしていた声が一拍で落ち、笑いと会釈に置き換わる。
「議会の書記です。……この甘味、二口という規定、不思議だ」
「舌が言葉を削るんです。甘いと長く喋れない。けれど機嫌はよくなる」
「議場に導入したい」
「冷やす場所、作ってからにしてください」
「むむ……検討します」
書記が去ると、今度は黒印屋台の男が帽子を胸に抱え、列の最後尾に並んだ。
昨日までの尖った空気は、少し鈍い。けれど目は逃げない。
「一椀、ください」
「橋の粥でよろしいですか」
「はい」
彼は一口すすり、深く息を吐いた。
「……腹が、帰るって言葉。あれ、好きです」
「私もです」
言葉はそれだけ。器が返る手は、わずかに震えていた。
噂は熱い。けれど、腹は静かだ。それでいい。
---
日が傾き始めたころ。
私たちはいったん鍋を落ち火にし、城内の鍋の様子を見に戻る。
通路の角で、カーディンが帳面を抱え、待っていた。
「調香庫、旧在庫の洗い出し、仮の順番を作った。——鼻でなく、手で並べ替えた。最後に、君の鼻で確かめてほしい」
「今からいきましょう」
調香庫は、香りの層でできた洞窟みたいだった。
柑根、黒角砂、羊骨、古麦、香葉。
空気を、横に押すように歩く。
「ここに“古い冬”の匂いが残っています。——昔の配合、誰かが守ってましたね」
「……母だ」
不意にカーディンの声がかすれた。
彼は棚の小さな印を指さす。角砂の箱の底、幼い字で、母の名。
「外注に手を出したのは、書類のためだった。……母の手が消えるのが怖かったのに、早さを優先した。
だから、今日は並べる。母の順番で」
「いい並びになります。焦がさず、熱だけ渡せる棚に」
私は角砂の箱をひとつ取り、蓋を開けた。
甘い。けれど、ふくらみが上に逃げない甘さだ。二口で足りる。
ああ、これは。——静けさの甘味。
「“議場のぷりん”に使いましょう」
「ぷりん?」
「沈黙の間の、王都版。二口で喧嘩を止めます」
カーディンがやっと笑った。
涙を、笑いで蓋する大人のやり方で。
---
城の広間に戻ると、セイル王子が配膳台の前で腕を組んでいた。
グラドは出入り口に、ラウモンドは伝令の傍。
私は合図の香をふっと焚く。
「本日の“締めの椀”を、四つの鍋、同時に配ります」
「同時?」
「はい。魔都二つ、城内一つ、王都一つ。——湯気の高さを合わせます」
王子が目を細めた。
「遠い鍋の湯気を、どうやって合わせる?」
「香り文で」
私は香袋を取り出し、糸で結んだ。
“甘二口”“塩半月”“出汁一滴”を細い紙に染み込ませ、合図の順に三枚。
ラウモンドが身を乗り出す。
「それは……手紙になる」
「はい。風に読ませます」
私は窓を少し開け、旗の結び目と同じ高さに香り文をかざした。
風がひとひら、紙を撫でていく。
女神の匙が、ふっと熱を帯びる。
「——今です」
合図の旗が左右の調理台で同時に下がり、湯気が胸の高さでそろった。
遠く王都の広場でも、きっと同じ高さの湯気が立っている。
見えないけれど、わかる。胸の火が、静かに答えた。
「いただきます!」
四つの場所で同じ声が重なった気がした。
私は思わず、空へ小さく手を振った。
---
夜。
鍋を洗い、旗を畳み、台所の戸を閉める。
今日の振り返りを三行で手帳に記す。
——鍋は約束。
——湯気は橋。
——甘味は静寂。
その下に、もう三行、書き足す。
——耳に鍋。
——母の順番。
——香り文は風の手紙。
「カスミ」
戸口にセイル王子が立っていた。
“王の椀”のときと同じ、静かな目。
「ありがとう。……二つの都が、同じ高さで息をした」
「こちらこそ。王子が旗を低くしてくれるから、湯気が迷いません」
「明日は、学び舎の鍋だな」
「はい。子どもたちに、結び目の高さを伝えます」
「子どもに伝われば、大人もわかる」
「そう信じています」
王子は少し考え、それから言った。
「いつか——地球の学び舎にも、鍋を置ける日が来るだろうか」
胸の奥で、女神の匙がやさしく熱を返した。
まだ遠い。でも、道は香りで描ける。
「そのときは、“家庭の味”から始めましょう。ぷりんと味噌汁と、白いごはん」
「いいね」
王子が笑う。
私は《ステータス》を開いた。
《場制御 11(維持)/段取り最適化 9→10/嗅覚強化 9(維持)》
《称号:鍋の約束/追加特記:香り文作成(風伝達)》
少しだけ、火が強くなる。
でも焦がさない。焦がさず、熱だけ。
「おやすみなさい、王子。——明日は子どもと同じ目線で」
「おやすみ、家族印の匙」
扉を閉めると、台所は静かになった。
私は窓を少し開け、夜風に一枚だけ香り文を流す。
“甘二口。——よく眠れますように。”
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遠くで鐘が一つ鳴り、世界が同じ高さで、息をした。
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