『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ

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第1章 異世界で朝ごはん!?料理研究家、転生する

第3話「不思議なスキルと、料理の力」

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 朝、目を覚ますと、藁のベッドがきしきしと音を立てた。

 体を伸ばして大きく深呼吸。少し肌寒いけれど、どこか懐かしい匂いがする。薪の香り、朝露の草の香り、どれも自然そのものだ。

 

「おはよう、今日もいい朝!」

 

 独り言をつぶやきながら、収納ポーチから鍋と調味料を取り出す。時間が止まる収納のおかげで、野菜や肉も昨日のまま新鮮。ほんと、文明の利器って素晴らしい。

 

 まずは、温かいスープで一日を始めよう。昨夜いただいたルルの根と、豆、ベーコン。塩とハーブを少々。コトコト煮込めば、それだけで十分。

 

 かまどに火を入れ、鍋に具材を放り込む。ふつふつと煮える音に耳を傾けていると、トントン、と扉を叩く音がした。

 

「カスミアーナさーん! 朝ごはんの匂いがするー!」

 

 ルークくんだ。

 

 開けると、にこにことした彼の隣には、昨日見かけなかった小さな女の子と、恥ずかしそうに頭をかくお兄さんらしき青年も立っていた。

「村の人たちが、朝食をご一緒したいって!」

 

 そう言われれば断る理由なんてない。

「もちろん、どうぞどうぞ! ちょっと待っててね、もうすぐできるから!」

 

 人数が増えると聞いて、私はさらに鍋を大きなものに替え、具材も少し増やす。大鍋の中で、異世界野菜がとろりと煮えていくのを見るのは、なんだか幸せな時間だ。

 

 ふと、脳裏に昨夜のスキル表示が浮かぶ。

 

《スキル【魔食効果付与】:調理により、対象に一時的な身体変化を与えることができる》

 

 それに加えて、もう一つ。

 

《スキル【食材識別】が発動しました》

 ……えっ、新スキル?

 

 気づかないうちに増えてた!? 

 私は慌てて詳細を確認する。

 

《【食材識別】:未知の食材に対し、味・毒性・栄養価・調理法のヒントを自動で提示》

 

 おおおお……! これ、めっちゃ便利じゃん!

 

 もしかして、昨日使った野菜とかハーブを繰り返し使ったことで、経験値がたまったのかも。

 料理するたびにスキルが増えていくなら、私、この世界でもどこまでも成長できそう。

 

「カスミアーナさん、すごくいい匂いですね!」

 

 声をかけてきたのは、昨日とは違うおばあさん。どうやら朝早くから畑仕事をしていたらしく、手には採れたての小さな果物が握られていた。

「これ、お礼に……今朝、摘みたてなの。ジャメ果っていって、すっぱくて元気が出るのよ」

「わあ、ありがとうございます! おやつに加工してみますね!」

 

 スープが完成すると、村の人たちが自然と集まり、小さな朝食会が始まった。

 皆がにこにこと笑いながら「いただきます」と言ってくれるのを見て、私はこの場所がもっと好きになった。

 

 それだけじゃない。

 

「腰が軽くなったような……?」「なんだか、目がよく見える気が……!」

 

 またしても料理バフが発動していたのだ。

 

 これは本格的に“料理魔法”として研究していく価値があるかもしれない。ちゃんと記録を取って、どの食材がどう作用するのか調べていけば、病気や不調も改善できるようになるかもしれない。

 

「ねえ、カスミアーナさん。ごはんって、なんでこんなに嬉しいの?」

 

 ルークくんの何気ない問いに、私は少しだけ考えて、答えた。

「うーん、きっと……ごはんって、人のことを想って作るから、嬉しいんだと思う」

 

 食べる人のことを想って、味や形や温度まで考えて作る。
 その気持ちがきっと、魔法になる。

 

「わたし、料理が好きになってきた!」

 

 そう笑う女の子の隣で、ルークくんも笑っていた。

 この世界で、私はまた“誰かのために料理を作る喜び”を思い出した。

 

 異世界ごはん、今日も幸せを運んでいます!


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