『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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12話「お隣さんのSOS!?ご近所スキル、発動します」

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日曜日の朝。
洗濯物を干しながら、隣の家のほうから妙な音が聞こえてきた。

「……バンッ!……ドン!……キーッ!」

(ん?ケンカ? いや、まさか……)

お隣の山田さん家。奥さんは几帳面で優しい人。だけど最近、ちょっと顔を合わせてない気がする。気になっていたそのとき——

ピンポーン♪

「あ、ども。……あの、ちょっと……うちのエアコンの室外機、動かなくなって……業者、来週まで来れないらしくて……よかったら、そっちの冷気……少し分けてもらえませんか……?」

お隣の旦那さんが、超・気まずそうに立っていた。

「え? あ、うちの……え?窓から?」

「いや、いやいや、あの、冗談です。ちょっと妻が、限界で……ごめんなさい、変なこと言って……」

見ると、お隣のベランダには洗濯物もなく、家の中からうっすら聞こえる「うぅ~暑い~ムリ~」という女性の声。

(あー……夏バテだ……完全に)


---

📱《スキル:ご近所さんセンサー Lv1 発動》
▶ 近所の困りごとを察知する力。しかも対応は“角が立たない”やり方推奨。

「……もしよかったら、うちで冷たい麦茶でもいかがですか?奥様も、ご一緒に」

「えっ、あっ……ほんとに? すみません……助かります……」


---

その30分後、山田家の奥様がうちのリビングでぐったりしながら麦茶を一気飲みしていた。

「助かりました……! 今日なんて、冷風機も壊れてて……もう気力も出なくて……」

「そんなときは無理しちゃだめですよ~。うちなんて、ひなのが氷食べ過ぎておなか冷やして倒れたくらいですし」

「それ、笑えないけど……ちょっと笑える……(笑)」

📱《スキル:共感おしゃべり術 Lv1 発動》
▶ 相手に“わかってもらえた”と感じさせる話し方で、ストレスを緩和。


---

「……正直、近所に迷惑かけたらって思ってたんです。でも、麻衣さんに声かけてもらえて、ちょっと救われました……」

「いえいえ~。私も、逆の立場ならたぶん同じだったと思いますよ~」

(実際、私も昔、エアコン壊れたとき凍らせたペットボトル抱えて寝たし)

「……あ、でもスミマセン、今日ってお昼とか……」

「大丈夫です!レトルトカレーが“スキル級”に充実してますから!(ドヤ)」


---

その日のお昼は、3家族合同の“冷房避難パーティー”となった。
子どもたちはゲームをして、夫たちはビール片手にのんびり。
何でもない日曜の午後が、ちょっとだけ賑やかになった。


---

夕方、帰り際。

「……麻衣さんって、すごいですね。なんていうか、力まずに人を助けてくれるというか……」

「えっ!? ぜんぜんそんな……ただのズボラ主婦ですよ~」

📱《スキル:「自覚なしの癒やし系」Lv1 取得》
▶ 自然体で周囲を癒やす存在に。本人にその自覚はない。

(……って、えぇ!? 癒やし系!? 私が!?)


---

夜、リビング。

「今日、スキルまた増えたでしょ?」

「うぅ、なぜわかるんだ雄一ぃ……」

「顔に“今日もやんわり誰か助けました”って書いてある(笑)」

「そんな顔あるぅ!?」

夫婦の笑い声の中、スキル通知がまたひとつピコン、と増えていた。


---
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