『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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19話「謎のシャボン玉とお隣さんのSOS

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「ママ、これ、きょうのえ!」

ひなのが朝、スケッチブックを抱えて持ってきた。ページには、ふわふわと漂うしゃぼん玉がたくさん描かれていて、その下にしょんぼりした顔の大人がひとり。

「わあ、きれいに描けたね!この人は誰かな?」

「……たぶん、となりのひと」

「えっ、高梨さん?」

「うん。きのう、ないてたの。ひな、みたの」

麻衣は少し驚いた。
高梨さんは、ひなのの保育園のママ友でもある。普段は明るく元気で、ひなのとも仲良しの娘・まゆちゃんのお母さんだ。

(泣いてた……?)



その日、お昼過ぎ。
洗濯物を取り込んでいた麻衣の耳に、かすかに聞こえるすすり泣くような声。

(……本当に、泣いてる?)

気づけば足は、お隣のインターホンを押していた。

「はーい……あ、田仲さん」

高梨さんは目元が少し赤い。
けれど、すぐに笑顔をつくって言った。

「どうかしました?」

「えっと……コーヒー淹れたので、よかったら一緒にどうですか?」

「……あ。うん、ちょっとだけなら」



しばらくすると、高梨さんはぽつりぽつりと話し始めた。

「夫が……また単身赴任になって。今回はしばらく戻れないみたいで」

「そうだったんですね……」

「それだけならよかったんだけど、まゆがね、最近よく夜泣くようになって。私も寝不足で、なんかもう、気が張ってたのがぷつっと切れちゃって」



麻衣はうんうんと頷きながら、いつも通りのマイペースさで、

「寝不足、ほんとキツいですよね~。私もこの前、寝ぼけて歯ブラシでシンク磨いてました」

「……え、それめっちゃ面白い……!」

くすっと笑った高梨さんの目に、涙がにじむ。



📱《スキル発動:心の余白》
▶サブ効果:相手の“張りつめた心”をほぐす作用
▶追加:タイミングよく“共感ワード”が口をついて出る



「……ありがとう、麻衣さん。私、ほんとは誰かに聞いてほしかったのかも」

「じゃあ次からは、しゃぼん玉出たら合図ってことで。ひなが予言するかもしれないけど」

「え、しゃぼん玉?」

麻衣はひなのの絵を見せた。

そこには、まさに今の高梨さんの姿が、ふわふわ漂うしゃぼん玉と一緒に描かれていた。

「……なんか、すごいな、この子」

「でしょ?我が家の“予知画伯”なんです」



その日の夕方。

「ママ~、きょうしゃぼんだま、もういらないって!」

「そうなの?」

「うん、もうだいじょうぶーって、おとなのひとがニコニコしてた!」



📱《サポートスキル強化》
▶「家庭内共鳴」Lv3
効果:心の揺れを感じ取り、さりげなく寄り添う言葉が出やすくなる
追加:近所の人間関係にも適用されるようになりました



何気ない日常。
けれど、その中にはちょっとした“心のしこり”や“疲れ”が隠れている。

麻衣のスキルはそれを無理なく、やんわりとほどいていく。



夜、雄一が帰ってきて言った。

「今日、家の前でしゃぼん玉が1個だけ浮いてたんだよな……風もないのに」

「うん、それは“おしまいの合図”だったのかもね」

麻衣はコーヒーを飲みながら、そっと笑った。


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