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20話『スキルと雷と停電ごはん』
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午後三時すぎ、ぽつぽつと降ってきた雨が、突然バケツをひっくり返したような土砂降りに変わった。
「うわっ、洗濯物!」
慌ててベランダへ飛び出すと、風と雨でシャツが一枚、物干し竿から旅立とうとしていた。私は反射的に手を伸ばし、ギリギリのところでキャッチ。
「ナイス反射神経、私!」
……なんて自画自賛していたその時、空が光った。直後、ものすごい音。
「きゃーーーっ!」
叫んだのは私だけじゃない。子ども部屋から、悠翔とひなのの叫び声も重なった。
雷、超苦手なのよね……。
リビングに戻ると、ひなのがソファの上でクッションに顔をうずめていた。悠翔はテレビのリモコンを握ったまま、固まっている。
「ま、まま……テレビ……消えた……」
「……あ、停電だね」
雨と雷の勢いは収まらない。部屋の中は急に静かになって、なんだか世界の音が全部消えたみたい。
---
停電。
それは現代人にとって、ちょっとした「サバイバルイベント」だ。
もちろんすぐ復旧することも多いけど、今回はなかなか戻らない。
「おやつまだぁー?」
ひなのの声が、静寂を突き破る。
おやつ……冷蔵庫のプリンはいいとして、電子レンジは使えない。
「ちょっと待ってね、懐中電灯……」
とキッチンの引き出しを探る私の手元に、ふわりと文字が浮かぶ。
---
【スキル:ひらめき家事Lv2】
《環境に合わせた最適な家事方法がひらめきます》
---
「……スキル発動してるぅ!」
しかもなんか、雷に乗じてレベル上がってない?
浮かんだイメージは、ガスコンロ、フライパン、ホットケーキミックス、そして……小さなキャンドル?
「よし、キャンプ気分でやってみるか」
---
冷蔵庫の中の牛乳と卵を取り出し、ホットケーキミックスと混ぜる。
キャンドルは食卓に並べ、ガスコンロでミニパンケーキを焼く作戦。
「ママ何してるのー?」
「パンケーキ。今日は“おうちキャンプ”ってことで、特別おやつだよ」
目を輝かせる二人。
「ほんとに? ぼく焼くー!」と悠翔がエプロンを取りに走る。
ひなのも「まぜまぜするー」と張り切ってボウルを抱える。
私は苦笑しながら、ふたりの手を借りてミニパンケーキ作りを開始。
部屋はまだ停電中だけど、子どもたちの笑い声でいっぱいだ。
---
焼きたてパンケーキに、冷蔵庫から救出したバターと少しのはちみつをかけて、簡単おやつタイム。
停電中の特別感が効いたのか、いつものホットケーキより盛り上がる。
「なんか、こういうの楽しいね」
「うん! ひなの、まいにちパンケーキがいい!」
さすがにそれはちょっと無理だけど、その笑顔を見ると、頑張っちゃいたくなるなあ。
---
夜になっても電気は復旧せず、ロウソクを灯したまま、家族で早めの夕食。
「ママ、電気ないとスマホもゲームもできないね」 「うん、でもこういう夜も悪くないかもよ。ほら、ロウソクの火、なんか冒険みたいじゃない?」
雄一も帰宅していて、家族全員で鍋を囲む。
コンビニで買ったおでんと、冷蔵庫の整理ついでの野菜炒め。どちらも地味だけど、みんなで食べるとおいしい。
---
食後、子どもたちと布団を敷いて、リビングに大の字。
ロウソクの灯りがゆらゆら揺れて、影が天井に踊る。
「おはなししてー」とひなの。
「こわくないおはなしがいい」と悠翔。
私はちょっと考えて、ファンタジー小説風の“パンケーキ村の冒険物語”を即興で始めた。
その時ふと、またあのメッセージが浮かんだ。
---
【新スキル取得条件達成】
《“家族で過ごす非日常”を楽しみながら乗り越えました》
→ 新スキル候補:「家庭防災術Lv1」/「癒やしの語り部Lv1」
---
「えっ……選べるの?」
もはやツッコミ慣れてきた自分にちょっと笑う。
「……じゃあ、『癒やしの語り部』で」
心の中で選択した瞬間、ロウソクの炎がふわっと揺れたような気がした。
---
次の日、朝。
電気は復旧していて、日常が戻ってきていた。
でも子どもたちは「またパンケーキキャンプしたい!」と口を揃える。
「スキルもいいけど、家族で笑えるのがいちばんだね」
私はそう呟いて、コーヒーを一口。
ほんの少し、日常がキラリと光った気がした。
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「うわっ、洗濯物!」
慌ててベランダへ飛び出すと、風と雨でシャツが一枚、物干し竿から旅立とうとしていた。私は反射的に手を伸ばし、ギリギリのところでキャッチ。
「ナイス反射神経、私!」
……なんて自画自賛していたその時、空が光った。直後、ものすごい音。
「きゃーーーっ!」
叫んだのは私だけじゃない。子ども部屋から、悠翔とひなのの叫び声も重なった。
雷、超苦手なのよね……。
リビングに戻ると、ひなのがソファの上でクッションに顔をうずめていた。悠翔はテレビのリモコンを握ったまま、固まっている。
「ま、まま……テレビ……消えた……」
「……あ、停電だね」
雨と雷の勢いは収まらない。部屋の中は急に静かになって、なんだか世界の音が全部消えたみたい。
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停電。
それは現代人にとって、ちょっとした「サバイバルイベント」だ。
もちろんすぐ復旧することも多いけど、今回はなかなか戻らない。
「おやつまだぁー?」
ひなのの声が、静寂を突き破る。
おやつ……冷蔵庫のプリンはいいとして、電子レンジは使えない。
「ちょっと待ってね、懐中電灯……」
とキッチンの引き出しを探る私の手元に、ふわりと文字が浮かぶ。
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【スキル:ひらめき家事Lv2】
《環境に合わせた最適な家事方法がひらめきます》
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「……スキル発動してるぅ!」
しかもなんか、雷に乗じてレベル上がってない?
浮かんだイメージは、ガスコンロ、フライパン、ホットケーキミックス、そして……小さなキャンドル?
「よし、キャンプ気分でやってみるか」
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冷蔵庫の中の牛乳と卵を取り出し、ホットケーキミックスと混ぜる。
キャンドルは食卓に並べ、ガスコンロでミニパンケーキを焼く作戦。
「ママ何してるのー?」
「パンケーキ。今日は“おうちキャンプ”ってことで、特別おやつだよ」
目を輝かせる二人。
「ほんとに? ぼく焼くー!」と悠翔がエプロンを取りに走る。
ひなのも「まぜまぜするー」と張り切ってボウルを抱える。
私は苦笑しながら、ふたりの手を借りてミニパンケーキ作りを開始。
部屋はまだ停電中だけど、子どもたちの笑い声でいっぱいだ。
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焼きたてパンケーキに、冷蔵庫から救出したバターと少しのはちみつをかけて、簡単おやつタイム。
停電中の特別感が効いたのか、いつものホットケーキより盛り上がる。
「なんか、こういうの楽しいね」
「うん! ひなの、まいにちパンケーキがいい!」
さすがにそれはちょっと無理だけど、その笑顔を見ると、頑張っちゃいたくなるなあ。
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夜になっても電気は復旧せず、ロウソクを灯したまま、家族で早めの夕食。
「ママ、電気ないとスマホもゲームもできないね」 「うん、でもこういう夜も悪くないかもよ。ほら、ロウソクの火、なんか冒険みたいじゃない?」
雄一も帰宅していて、家族全員で鍋を囲む。
コンビニで買ったおでんと、冷蔵庫の整理ついでの野菜炒め。どちらも地味だけど、みんなで食べるとおいしい。
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食後、子どもたちと布団を敷いて、リビングに大の字。
ロウソクの灯りがゆらゆら揺れて、影が天井に踊る。
「おはなししてー」とひなの。
「こわくないおはなしがいい」と悠翔。
私はちょっと考えて、ファンタジー小説風の“パンケーキ村の冒険物語”を即興で始めた。
その時ふと、またあのメッセージが浮かんだ。
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【新スキル取得条件達成】
《“家族で過ごす非日常”を楽しみながら乗り越えました》
→ 新スキル候補:「家庭防災術Lv1」/「癒やしの語り部Lv1」
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「えっ……選べるの?」
もはやツッコミ慣れてきた自分にちょっと笑う。
「……じゃあ、『癒やしの語り部』で」
心の中で選択した瞬間、ロウソクの炎がふわっと揺れたような気がした。
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次の日、朝。
電気は復旧していて、日常が戻ってきていた。
でも子どもたちは「またパンケーキキャンプしたい!」と口を揃える。
「スキルもいいけど、家族で笑えるのがいちばんだね」
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ほんの少し、日常がキラリと光った気がした。
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