『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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23話『チーズハンバーグは最強らしい』

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「……ってことで、今日はチーズハンバーグの気分かなって思って」

夕方、子どもたちが騒ぎながらテレビの前で踊っている横で、麻衣はキッチンに立ちながら、スマホをチラ見する。

雄一からの返信は、絵文字付きの「それ最高」のスタンプひとつ。

(ふふ、やっぱりね)

朝、雄一の顔が少し疲れてたのが気になって、いつもよりマイルドな香りの豆を選んだ。
出がけの玄関で、ひなのがにこにこしながら「おみやげー!」と手裏剣を押しつけていたのも、たぶん効いてる。

(……うち、地味に“癒しスキル持ち”なのでは?)

思わず自分の手のひらを見つめる。

《【ほっと一息】:一定確率で対象の心身をゆるめます》

みたいな、ゲームのスキルっぽく脳内に表示される。
そんな妄想をして、ニヤつきながら玉ねぎを炒める自分がちょっと好きだった。

「ママ~!ひなの、チーズハンバーグのチーズだけ食べてもいい~?」

「だめー!ちゃんと全部食べるの!」

「ぶー!」

後ろでは長男・悠翔が、

「ひなの、それやったらチーズハンバーグじゃなくて“ただのチーズ”だぞ」

と冷静にツッコミを入れていて、麻衣はフフッと笑う。

そこに、インターホンが鳴った。

「はーい」

出てみると、そこには高梨さん。

「ごめんね~!ちょっとこれ、実家から送られてきたの。冷蔵庫入りきらなくて」

差し出されたのは、大量の野菜と……お菓子。なぜか大袋。

「助かる~!あ、うちも今日チーズハンバーグだから、よかったらおすそ分けするよ?」

「え、ほんと?まゆ、ハンバーグ大好きだから、ちょっとだけもらおうかな」

高梨さんの娘・まゆちゃんは、ひなのと同じ年で、いつもふたりで“プリンセスごっこ”している。

「じゃ、代わりにこのお菓子で交換ってことで!」

「物々交換システム、発動だね」

そんなやり取りをしていたら、ふと、さっきの雄一のメッセージがよぎる。

(……地味だけど、こういう毎日が、誰かを助けたりしてるのかもなあ)

“たいしたことしてない”って思ってたけど、
ほんの少しの気遣いと、ちょっとのごはんと、ゆるいおしゃべりが、
明日を頑張る理由になるのかもしれない。

「ママー!今日のハンバーグ、なんか、いつもよりふわふわしてる!」

「ひなの、チーズのところしか食べてないじゃん」

「ふわチーズハンバーグだもん!」

「そんな名前、聞いたことないよ……」

夕暮れ時のリビングに、にぎやかな声が響く。

麻衣はふと、窓の外に目をやりながら思った。

(……明日も、みんながんばれー)

さりげなく、心の中で小さく応援の“スキル”を発動させる。


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