『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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64話『カフェでの再会と、スミレからの招待状』

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 いつものカフェの午後。ほんのりとしたコーヒーの香りと、静かなジャズが流れる中で、麻衣はカウンター越しにカプチーノの泡を丁寧に仕上げていた。

「ふわふわの泡、今日は完璧かも……♪」

 そんなことをつぶやいた瞬間、ふと、扉のベルがチリンと鳴る。

「いらっしゃ――」

 麻衣が顔を上げた瞬間、目が丸くなる。

 そこに立っていたのは、先日偶然公園で再会した“あの人”――
 どこか妖しげでミステリアスな雰囲気をまとった女性、スミレだった。

「こんにちは。……また、会っちゃったわね」

 スミレは相変わらず紫のアクセサリーを身につけ、今日はラベンダー色のワンピース姿だった。どこか、このカフェの雰囲気に妙に馴染んで見える。

 

 カウンター席に座ったスミレに、麻衣は少し緊張しながらコーヒーを差し出す。

「また偶然ですね……って、そうでもない、ですか?」

「ふふ、よく気づいたわね。偶然に見えて、意図的なのが“ゲーム”の面白さよ」

 そう言って、スミレはスマホをちらっと見せてくる。そこには、麻衣のと同じ“例のゲームアプリ”の画面。だが、そのUIはどこか進化していて、麻衣が見たことのないタブが複数あった。

「えっ、それ……アップデートされてる?」

「ふふ、あなたもそのうち開放されるわ。“共鳴度”がもう少し上がれば、ね」

 

 麻衣はスマホを見つつ、スミレに向かって素直に尋ねた。

「スミレさんって……いつからそのスキルを?」

「んー、私はもう半年以上になるかな。最初は、ただの気まぐれで始めたの。スマホゲームなんて、久しぶりだったし」

 そう言いながら、スミレは少しだけ目を伏せる。

「でも、だんだんわかってきたの。“これ”はただのゲームじゃない。“選ばれた人”にしか見えない、現実とつながった《共感の世界》なのよ」

 

 麻衣はコーヒーを飲みながら、心の中で少しだけざわついた。

(やっぱり……このゲームには、もっと何かあるんだ)

 

 するとスミレが、ふっと声のトーンを変えた。

「ねぇ麻衣さん、今度の日曜、少しだけ時間ある?」

「え?」

「この街の隣にある“カミオカ旧公会堂”って場所、知ってる?」

「ああ、なんか古い建物ですよね。前、イベントか何かで使われてたような……」

「そこでね、**“プレイヤーの集い”**があるの。“このゲームを使って何ができるのか”っていう、ちょっとだけ深い話をする会。……あなたもそろそろ、顔を出すべき頃かもしれないわよ?」

 

 麻衣は驚いたまま、スミレの顔を見る。

「私が……参加してもいいんですか?」

「いいえ、“必要なの”。この世界が少しずつ動き始めてるの。気づいてないかもしれないけど、あなたの周りにも、もう“揺らぎ”が出てきてるわ」

 その言葉に、麻衣の背中に小さなぞわっとした感覚が走る。

 

 そのあと、スミレは立ち上がりながら軽やかに言った。

「じゃあ、またね。日曜、来れるといいわ。……“あなたにしかできないこと”が、待ってるかもしれないから」

 

 麻衣は黙ったまま、その後ろ姿を見送った。

 ――カフェの窓から差し込む光が、少しだけ強く感じられた。

 

 (私が……呼ばれてる?)

 スキルを手にしてから、日常が少しずつ変わってきた。
 でも、これから起こるのは――きっと、“今まで以上”のこと。

 そう、麻衣の直感が告げていた。

 

 そして、スマホの画面にふっと浮かんだ通知。

> 《新イベント解放》
イベント名:共鳴の扉(オープニング)
場所:カミオカ旧公会堂
推奨スキル:共鳴・観察・調律



 

 麻衣はゆっくり息を吸い、スケジュールアプリに予定を入力した。

「……よし。行ってみよう」

 

 いつもと変わらないように見える世界が、また一歩、音を立てて動き出していた――。


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