『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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80話『共鳴者たちの集いと、不思議な検査』

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 週明けの午後、麻衣と雄一は、こっそりと都内のカフェ「フィロソフィア」へと向かっていた。
 普段は聞き慣れない店名のカフェだが、Googleマップにはちゃんと存在していて、内装の写真には「落ち着いた空間」「スピリチュアルな雰囲気」といったレビューがちらほら。

 「……ほんとに、ここ?」

 「うん、たぶん。ちょっと緊張するね」

 白い外壁に木の扉、そして入口横には、小さな掲示板にこう書かれていた。

 《本日:貸切イベントあり》

 

 中に入ると、空間はまるで異世界のようだった。
 穏やかな音楽とアロマの香り、天井からぶら下がるドライフラワーの装飾。そして――

 「ようこそ、“共鳴者交流会”へ」

 受付にいたのは、まさかのスミレさんだった。

 「えっ、主催側!?」

 「正確には、“案内役の一人”ってところかしら。こっちへどうぞ」

 

 奥の席へ案内されると、既に数人が座っていた。
 年齢も性別もバラバラ。だけど、どこか共通の“気配”を感じさせる人たち。

 「彼は音に反応するスキルの持ち主。こっちの女性は、植物の元気を感じ取るスキルを使って、ガーデニングで成功してるの」

 スミレさんの説明に、麻衣も雄一もただただ驚く。

 

 「では――」

 会が始まり、進行役のスタッフが、軽く挨拶をしたあと、参加者たちに一枚ずつのタブレットが手渡された。

 《あなたのスキル共鳴値と特性を判定中です》
 《10秒ほどお待ちください》

 (なんか、ゲームみたい……)

 画面に次々と表示される内容に、麻衣はそっと息をのむ。


---

 共鳴判定:高レベル(B+)
 スキル傾向:感情感知/空間調整型
 新スキル候補:『和みの場(Comfort Field)』


---

 「わ、なんか出た……!」

 スミレさんがうなずきながら言う。

 「“和みの場”は、場にいる人の感情を整えて、優しい雰囲気を保つパッシブスキルよ。あなたにぴったりね」

 「……え、すごい……!」

 

 一方で、隣の雄一の画面にも別の表示が。


---

 共鳴判定:初期段階
 スキル傾向:サポート支援型/無意識フィードバック
 スキル名(仮):『隣にいるだけでなんとかなる』


---

 「……俺のスキル、なんかずるくない?」

 「ふふ、でも合ってるかも。“麻衣の夫”って、そういう感じよね」

 

 その後、簡単なグループセッションや、自己紹介を兼ねた交流会が行われた。
 誰もが、自分のスキルを特別扱いせず、「ちょっと不思議な日常」として受け入れている。
 それが心地よくて、麻衣もつい、話しすぎてしまった。

 

 帰り道。

 夜風に当たりながら、雄一がぽつりとつぶやく。

 「……なんか、ちょっとずつ分かってきたよ。スキルって“何かをする力”じゃなくて、“気づく力”なんだな」

 「うん。私も、そう思うようになってきた」

 手をつなぎながら、ふたりは歩く。

 スキルがあるから特別なんじゃない。
 “ふつう”の中に、少しだけ“ふしぎ”がある。
 それが、麻衣にとっての「いまの人生」だった。

 

 そして夜、スマホには新たな通知が――

 《共鳴者ネットワークに参加しました》
 《あなたのスキル進化が記録されました》

 

 「よし……これからも、ゆっくり、進んでいこう」

 麻衣はそっと画面を閉じ、穏やかな夜に目を細めた。


---
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