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104話『スミレさんと、もうひとつのスキル反応』
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朝のカフェには、いつものように穏やかな空気が流れていた。
麻衣は手際よくカウンターを整え、開店準備を終えると、ふっと一息ついた。
「今日もがんばろ~」
そんなときだった。
郵便受けから、厚みのある封筒が一通、ポトンと落ちた。
「……ん? 手紙?」
差出人の名前はなかったけれど、封のところに、小さな花のシールが貼られていた。
どこか見覚えのある雰囲気に、麻衣は首をかしげながら封を開けた。
中から出てきたのは、手紙と――一枚の写真だった。
手紙の文字は丁寧で、やや癖のある筆跡。
> 「ご無沙汰しています、麻衣さん。
おそらくこれが届く頃、私はまたひとつ“気配”に気づいた頃だと思います。
前にお話しした“共鳴”のこと、覚えていますか?」
スミレさんの名前はなかった。
でも、麻衣にはわかっていた。
この文体、この香り。間違いない、と。
> 「最近、スキルの感覚が変わってきています。
“誰かと繋がる”だけじゃなく、“未来の気配”が混じるようになってきて……。
それが少し怖くもあり、でも、とてもワクワクもしていて。
たぶん、麻衣さんもそろそろ“気づく”頃でしょう?
これは、あなたにしかできないこと。
……そう思って、送ります。」
写真は、少し前のカフェで撮られた一枚。
スミレさん、穂積さん、そして麻衣が笑い合っている。
(……誰が撮ったんだろう?)
麻衣は、写真の隅に目を留めた。
そこには、見慣れない小さな光の粒のようなものが写り込んでいた。
まるで誰かの“気持ち”が、偶然可視化されたかのように。
その瞬間――
麻衣のスマホが、ポンと音を鳴らした。
《共鳴スキャン:新規反応を検知しました》
《対象:未確認/遠距離感知モード》
《スキルクエスト:未達成の因子に接触しています》
「スキル……クエスト?」
初めて見る表示に、麻衣は驚いた。
ちょうどそのとき、店のドアが開いた。
「こんにちはー。……あれ、スミレさん来てるかと思ったのに」
現れたのは、穂積さんだった。
「今日はまだです。……でも、なんだか来そうな気がします」
麻衣がそう返すと、穂積さんは不思議そうに笑った。
「占いでも始めました?」
「ふふっ、そんな感じかもしれません」
そして、カフェの片隅。
いつもの席に、ひとつだけ追加でカップを置いた。
それが、なんとなく“正解”な気がしたからだ。
その日、スミレさんは現れなかった。
でも、手紙の最後の一文が、麻衣の心にずっと残っていた。
> 「世界はきっと、“つながる力”でやさしくなる。
だからあなたは、あなたのままでいてください」
麻衣はそっと、封筒をしまい、深呼吸をした。
(スキルも、つながりも――怖くない。
だって、それが私の日常になってきてるから)
カフェの空気は、今日もやさしくてあたたかい。
誰かの“気持ち”が、ふんわりと混じり合って、少しずつ未来を動かしていく。
---
麻衣は手際よくカウンターを整え、開店準備を終えると、ふっと一息ついた。
「今日もがんばろ~」
そんなときだった。
郵便受けから、厚みのある封筒が一通、ポトンと落ちた。
「……ん? 手紙?」
差出人の名前はなかったけれど、封のところに、小さな花のシールが貼られていた。
どこか見覚えのある雰囲気に、麻衣は首をかしげながら封を開けた。
中から出てきたのは、手紙と――一枚の写真だった。
手紙の文字は丁寧で、やや癖のある筆跡。
> 「ご無沙汰しています、麻衣さん。
おそらくこれが届く頃、私はまたひとつ“気配”に気づいた頃だと思います。
前にお話しした“共鳴”のこと、覚えていますか?」
スミレさんの名前はなかった。
でも、麻衣にはわかっていた。
この文体、この香り。間違いない、と。
> 「最近、スキルの感覚が変わってきています。
“誰かと繋がる”だけじゃなく、“未来の気配”が混じるようになってきて……。
それが少し怖くもあり、でも、とてもワクワクもしていて。
たぶん、麻衣さんもそろそろ“気づく”頃でしょう?
これは、あなたにしかできないこと。
……そう思って、送ります。」
写真は、少し前のカフェで撮られた一枚。
スミレさん、穂積さん、そして麻衣が笑い合っている。
(……誰が撮ったんだろう?)
麻衣は、写真の隅に目を留めた。
そこには、見慣れない小さな光の粒のようなものが写り込んでいた。
まるで誰かの“気持ち”が、偶然可視化されたかのように。
その瞬間――
麻衣のスマホが、ポンと音を鳴らした。
《共鳴スキャン:新規反応を検知しました》
《対象:未確認/遠距離感知モード》
《スキルクエスト:未達成の因子に接触しています》
「スキル……クエスト?」
初めて見る表示に、麻衣は驚いた。
ちょうどそのとき、店のドアが開いた。
「こんにちはー。……あれ、スミレさん来てるかと思ったのに」
現れたのは、穂積さんだった。
「今日はまだです。……でも、なんだか来そうな気がします」
麻衣がそう返すと、穂積さんは不思議そうに笑った。
「占いでも始めました?」
「ふふっ、そんな感じかもしれません」
そして、カフェの片隅。
いつもの席に、ひとつだけ追加でカップを置いた。
それが、なんとなく“正解”な気がしたからだ。
その日、スミレさんは現れなかった。
でも、手紙の最後の一文が、麻衣の心にずっと残っていた。
> 「世界はきっと、“つながる力”でやさしくなる。
だからあなたは、あなたのままでいてください」
麻衣はそっと、封筒をしまい、深呼吸をした。
(スキルも、つながりも――怖くない。
だって、それが私の日常になってきてるから)
カフェの空気は、今日もやさしくてあたたかい。
誰かの“気持ち”が、ふんわりと混じり合って、少しずつ未来を動かしていく。
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