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105話『はるとの自由研究と、謎の観察記録』
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「ねえ、自由研究ってなにすればいいの?」
夏休みに入ったばかりのある日、小学四年生の悠翔(はると)は、テーブルに突っ伏しながらうなっていた。
「毎年、“星の観察”とか“貯金箱づくり”とか同じようなのやってるじゃん。もう飽きたんだよね~」
「わかるけどさ……じゃあ、自分が面白そうだなって思うことやってみたら?」
と、隣で麦茶を飲んでいた麻衣が軽く返す。
「うーん……じゃあ、人間観察!」
「へ?」
「お母さんさ、“人の気持ちが色で見える”って言ってたでしょ? それ、本当かどうか、俺が確かめる!」
「……え、なにそれ、すごくやばそうな研究……!」
麻衣は内心ヒヤリとした。
まさかスキルの存在に、悠翔がこんな形で興味を持つとは。
「ま、まあ……自由研究っていうのは、考える力を育てるのが目的だから……うん。人の気持ちの観察も、アリなのかも?」
「よし!じゃあまず、家族の気持ちからチェックだ!」
「うぇ!?」
その日から、悠翔の“観察記録ノート”がスタートした。
---
観察記録:父・雄一(ゆういち)
朝、スーツのズボンにケチャップをつけたらしい。
「……もうこのネクタイ、死んだ……」とつぶやいていた。
⇒ 状態:悲しみ(だが無言でプリンを持って出勤)
---
観察記録:母・麻衣
おやつのグミを隠したつもりが、ひなのに見つかってバレた。
そのあと「ま、まぁ一緒に食べよっか!」と言って笑ってた。
⇒ 状態:あわて→開き直り→やさしさ
---
観察記録:妹・ひなの
朝からテレビの“魔法少女プリリン”を3回見ていた。
気持ちはずっと“キラキラ”。途中で床で回転し始めた。
⇒ 状態:無敵のテンション
---
「はると、それ……どこに出すつもりなの?」
「学校の理科の自由研究!」
「せめて、“家族観察記録”って名前にしようか……?」
麻衣は苦笑いしながらも、どこかほっとしていた。
スキルをそのまま話さなくても、こうして“気持ち”に目を向けてくれるのは、悪いことじゃない。
そして夏休み後半――
悠翔のノートは、家族だけでなく、友達や商店街のおじさん、おばさんの観察まで増えていた。
中でも最後のページに書かれていた言葉が、麻衣の心に残った。
---
まとめ
気持ちは見えないけど、言葉とか、顔とか、声でなんとなくわかることがある。
だけど、見てるつもりでも、気づかないことも多い。
たぶん、お母さんはそういう“ちょっとしたこと”が、ちゃんと見えてるんだと思う。
ぼくも、そんなふうになりたい。
---
麻衣はその夜、そっと悠翔のノートを見ながら微笑んだ。
「……なんか、すごい研究になっちゃったね」
「え? 見たでしょー!」
「うん、ごめん。でも、素敵だったよ」
どこかで“気持ち”がつながっていること。
それが家族の中でも、少しずつ広がっていくのが、麻衣にとっては何よりうれしい変化だった。
そして、そのノートをこっそり読んでいた雄一は――
「なにこの“ケチャップで死んだネクタイ”って……俺、観察されてたのか……!」
頭を抱えながらも、こっそり笑っていた。
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夏休みに入ったばかりのある日、小学四年生の悠翔(はると)は、テーブルに突っ伏しながらうなっていた。
「毎年、“星の観察”とか“貯金箱づくり”とか同じようなのやってるじゃん。もう飽きたんだよね~」
「わかるけどさ……じゃあ、自分が面白そうだなって思うことやってみたら?」
と、隣で麦茶を飲んでいた麻衣が軽く返す。
「うーん……じゃあ、人間観察!」
「へ?」
「お母さんさ、“人の気持ちが色で見える”って言ってたでしょ? それ、本当かどうか、俺が確かめる!」
「……え、なにそれ、すごくやばそうな研究……!」
麻衣は内心ヒヤリとした。
まさかスキルの存在に、悠翔がこんな形で興味を持つとは。
「ま、まあ……自由研究っていうのは、考える力を育てるのが目的だから……うん。人の気持ちの観察も、アリなのかも?」
「よし!じゃあまず、家族の気持ちからチェックだ!」
「うぇ!?」
その日から、悠翔の“観察記録ノート”がスタートした。
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観察記録:父・雄一(ゆういち)
朝、スーツのズボンにケチャップをつけたらしい。
「……もうこのネクタイ、死んだ……」とつぶやいていた。
⇒ 状態:悲しみ(だが無言でプリンを持って出勤)
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観察記録:母・麻衣
おやつのグミを隠したつもりが、ひなのに見つかってバレた。
そのあと「ま、まぁ一緒に食べよっか!」と言って笑ってた。
⇒ 状態:あわて→開き直り→やさしさ
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観察記録:妹・ひなの
朝からテレビの“魔法少女プリリン”を3回見ていた。
気持ちはずっと“キラキラ”。途中で床で回転し始めた。
⇒ 状態:無敵のテンション
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「はると、それ……どこに出すつもりなの?」
「学校の理科の自由研究!」
「せめて、“家族観察記録”って名前にしようか……?」
麻衣は苦笑いしながらも、どこかほっとしていた。
スキルをそのまま話さなくても、こうして“気持ち”に目を向けてくれるのは、悪いことじゃない。
そして夏休み後半――
悠翔のノートは、家族だけでなく、友達や商店街のおじさん、おばさんの観察まで増えていた。
中でも最後のページに書かれていた言葉が、麻衣の心に残った。
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まとめ
気持ちは見えないけど、言葉とか、顔とか、声でなんとなくわかることがある。
だけど、見てるつもりでも、気づかないことも多い。
たぶん、お母さんはそういう“ちょっとしたこと”が、ちゃんと見えてるんだと思う。
ぼくも、そんなふうになりたい。
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麻衣はその夜、そっと悠翔のノートを見ながら微笑んだ。
「……なんか、すごい研究になっちゃったね」
「え? 見たでしょー!」
「うん、ごめん。でも、素敵だったよ」
どこかで“気持ち”がつながっていること。
それが家族の中でも、少しずつ広がっていくのが、麻衣にとっては何よりうれしい変化だった。
そして、そのノートをこっそり読んでいた雄一は――
「なにこの“ケチャップで死んだネクタイ”って……俺、観察されてたのか……!」
頭を抱えながらも、こっそり笑っていた。
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