『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

文字の大きさ
108 / 138

105話『はるとの自由研究と、謎の観察記録』

しおりを挟む
「ねえ、自由研究ってなにすればいいの?」

夏休みに入ったばかりのある日、小学四年生の悠翔(はると)は、テーブルに突っ伏しながらうなっていた。

「毎年、“星の観察”とか“貯金箱づくり”とか同じようなのやってるじゃん。もう飽きたんだよね~」

「わかるけどさ……じゃあ、自分が面白そうだなって思うことやってみたら?」

と、隣で麦茶を飲んでいた麻衣が軽く返す。

「うーん……じゃあ、人間観察!」

「へ?」

「お母さんさ、“人の気持ちが色で見える”って言ってたでしょ? それ、本当かどうか、俺が確かめる!」

「……え、なにそれ、すごくやばそうな研究……!」

麻衣は内心ヒヤリとした。
まさかスキルの存在に、悠翔がこんな形で興味を持つとは。

「ま、まあ……自由研究っていうのは、考える力を育てるのが目的だから……うん。人の気持ちの観察も、アリなのかも?」

「よし!じゃあまず、家族の気持ちからチェックだ!」

「うぇ!?」

 

その日から、悠翔の“観察記録ノート”がスタートした。


---

観察記録:父・雄一(ゆういち)

朝、スーツのズボンにケチャップをつけたらしい。
「……もうこのネクタイ、死んだ……」とつぶやいていた。
⇒ 状態:悲しみ(だが無言でプリンを持って出勤)


---

観察記録:母・麻衣

おやつのグミを隠したつもりが、ひなのに見つかってバレた。
そのあと「ま、まぁ一緒に食べよっか!」と言って笑ってた。
⇒ 状態:あわて→開き直り→やさしさ


---

観察記録:妹・ひなの

朝からテレビの“魔法少女プリリン”を3回見ていた。
気持ちはずっと“キラキラ”。途中で床で回転し始めた。
⇒ 状態:無敵のテンション


---

「はると、それ……どこに出すつもりなの?」

「学校の理科の自由研究!」

「せめて、“家族観察記録”って名前にしようか……?」

麻衣は苦笑いしながらも、どこかほっとしていた。
スキルをそのまま話さなくても、こうして“気持ち”に目を向けてくれるのは、悪いことじゃない。

 

そして夏休み後半――

悠翔のノートは、家族だけでなく、友達や商店街のおじさん、おばさんの観察まで増えていた。

 

中でも最後のページに書かれていた言葉が、麻衣の心に残った。


---

まとめ

気持ちは見えないけど、言葉とか、顔とか、声でなんとなくわかることがある。
だけど、見てるつもりでも、気づかないことも多い。
たぶん、お母さんはそういう“ちょっとしたこと”が、ちゃんと見えてるんだと思う。
ぼくも、そんなふうになりたい。


---

麻衣はその夜、そっと悠翔のノートを見ながら微笑んだ。

「……なんか、すごい研究になっちゃったね」

「え? 見たでしょー!」

「うん、ごめん。でも、素敵だったよ」

 

どこかで“気持ち”がつながっていること。
それが家族の中でも、少しずつ広がっていくのが、麻衣にとっては何よりうれしい変化だった。

 

そして、そのノートをこっそり読んでいた雄一は――

「なにこの“ケチャップで死んだネクタイ”って……俺、観察されてたのか……!」

頭を抱えながらも、こっそり笑っていた。


---
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...