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彼は私の姿を見下ろすと、ほんの一瞬だけ目を見開いた。そんな気がする、という程度の、もしかしたら見間違いだったかもしれない、些細な変化。眼鏡の上の柳眉が僅かに動いたからか、それとも、繰り返される瞬きが驚きのように映っただけか。けれど、それでもなんとなく、彼は私を見て驚いたのだろう、という気がした。理由は分からないけれど。
でも、“驚いた”というのなら、それは私もまた同じことだった。二日前に色々とありはしたけれど、全てが終わった今、まさか彼がここを訪ねてくるなんて思ってもいなかったから。
「おはようざいます。とても気持ちの良い朝ですね」
爽やかな声音で紡がれた挨拶に、私は緊張のほぐれた笑みを浮かべながら挨拶を返す。そうしながら、やわらかで丁寧な彼の物腰に、この人は随分とやさしく穏やかな人なのだな、と改めて思う。夜道を並んで歩みながら交わした幾つもの会話から、既に感じていたことではあるけれど。あの緊迫した状況の中でさえ、彼は荒げた声を出すことも、憎しみに満ちた目を向けることもなかった。これまで出会ってきた多くの人たち――怒声を浴びせ、蔑むような視線を投げてきた人々――とは違って。
思えば、誰かと挨拶を交わしたのは、いつぶりのことだろう。王都を離れてからずっと独りきりで、人と関わろうものなら“魔女”と罵られ、時には危険な目にも遭った。話が出来る相手なんてどこにも、ひとりもいなかったし、だからこうして向かい合い、目と目を合わせながらまともに言葉を交わすのは、随分と久しい。嘗ては“当たり前”だったものが、あの審判の日を堺に“当たり前”ではなくなり、そして今や、その“当たり前でない日々”が私にとっての“普通”になっていた。
「実は、あれから何度か訪ねてみたんですけど、いつも反応がなくて……少し心配していたんです」
扉に鍵がかかっていたので、中を確かめることも出来なくて。
落ち着いた声音でそう付け加えながら、ロアンさんは私の肩越しに堂の奥を一瞥する。綺麗に磨かれた眼鏡の奥で動く青緑色の瞳は、まるで硝子玉のように澄んでいて美しい。無垢、というのだろうか。彼の双眸を見ていると、生まれたての子どもの、あの純真そのもののような瞳を思い出させるのは、どうしてだろう。いくら若いとはいえ、彼は医者であり、それなりに歳も重ねている。決して“きれいなもの”ばかりを見てきたわけではないはずなのに。それでも彼の青緑色は、不思議と濁りがない。
「すみません。実は、その……」
躊躇いつつも、まる二日眠ってしまっていたという――私自身ですら未だ信じられない――事実を打ち明けると、今度こそ彼は驚愕を隠しきれず、はっきりと目を見開いた。くっきりとした二重の大きな目を、更に大きく。
彼の顔立ちがどこか幼く見えるのは、この丸みのある大きな目のせいなのかもしれない、と、私は困惑気味に笑みながら頭の片隅で思う。ルシエル様やベル様のように人間離れした冷ややかな美しさとはまるで違う、どこか親しみやすく安心感のある、愛嬌のあるあたたかなかんばせ。
「それはそれは……。でも、あれほどの奇跡の後なら、それだけ疲れるのも無理はありませんね」
そう言ってロアンさんは、どこか気遣うように小さく笑った。その苦笑に、私はなんとも言えない複雑な心境で、曖昧に目を細める。
奇跡――。その一言に、身体のあちこちがむずむずして、落ち着かない。実際に現場を目の当たりにし、自身の身に起こったことでありながら、未だにどうしても、それらの全てに現実感がないのだ。どこか他人事のように――例えば物語の中の出来事のように――思えてしまう。ベル様は、あれは私の“聖女”としての力だと断言していたけれど。ルシエル様の力だったと言われた方が、きっともっとずっと素直に受け入れられただろうと思う。私自身が彼に救われたことがあるから、尚の事。
「アレク君は、もうあれから大丈夫なのですか?」
「ええ。二度ほど往診しましたが、特に異常は見当たりませんでした。すっかり元気になって、友達と遊び回っていますよ」
奇跡だとか聖女の力だとか、そんなものは一旦頭の隅へと追い遣り、アレク君が無事であるという事実にだけ意識を集中させ、ほっと胸を撫で下ろす。ノクシールへの拒絶反応を示し、吐血した時には、絶望と恐怖で眼の前が真っ暗になってしまったけれど。あんなにも衰弱していた彼が、友達と遊べるほど回復したことが、ただただ嬉しくてたまらない。一時は本当にどうなることかと不安でいっぱいだったから。
「元気そうで良かったです。安心しました」
そこでふと、私は疑問に思う。アレク君はもうすっかり治っていて、ルクス熱に罹る前の平穏だった日常を取り戻している。だから何もかも、もう“終わった”はずなのに。どうして彼は、今ここにいるのだろう。しかも、私が姿を現すまで何度も足を運んでまで。
「あの……そういえば、何か私にご用でしょうか」
折角訪れてくれた人に、「何で来たんですか」と訊くのは、なんとなく気が憚られたけれど。それでも理由が思いつかなくて、おずおずと問いかけると、彼はまるですっかり忘れていたというふうに、大きな目を大きな動作でぱちりと瞬かせて、それからふわりと、やさしく表情を綻ばせた。
「実は、ヴィオラさんからお誘いがありまして。お礼にご馳走を振る舞わせてほしい、と。貴女にも是非来てほしいとのことだったので、それを伝えに来たんです」
思いがけない申し出に、今度は私が目を瞬かせる。
「お礼だなんて、そんな……私は何も」
戸惑いがちに否定すると、ロアンさんはゆっくり首を振った。
「アレク君の命を救ったのは、紛れもなく貴女です。……寧ろ、何も出来なかったのは、僕の方ですよ」
自嘲気味に笑いながら、医者なのに、と、彼は独り言のようにぽつりと呟く。その声に、どこか寂しさや痛みのようなものが滲んでいるように感じられて、胸がきゅっと締め付けられる。やっぱり彼は――。青緑色の澄んだ瞳を、薄い硝子越しに見つめながら思う。やっぱり彼は、決して“きれいなもの”ばかりを見てきたわけではないのだ、と。
「何も出来なかっただなんて、そんなこと仰らないで下さい。先生は、私を庇って下さってではありませんか」
今でもはっきりと憶えている。私を非難するマルセルさんを、必死にとめようとしてくれた彼の姿を。ルクス熱が流行っているのも、それが“神の怒り”を買ったせいだということも。マルセルさんの言葉を、ロアンさんは強く絞り出した声で、きっぱりと否定してくれた。ルクス熱は歴とした“病”で、魔女の“呪い”でも神の“怒り”でもないのだ、と。
王都を追われてからこれまで出会ってきた人たちの中で、謂れのないものを真正面から否定してくれた人など、ひとりもいなかった。原因の分からないことが起きれば、どんな小さな出来事もすべて“魔女”である私のせいにされ、誰もがそれに頷く。助けるどころか、疑念を呈する人さえいなかったのだ。――彼と出会う前は、ただのひとりも。
「それは……」
言いかけた言葉を濁し、ロアンさんは自嘲を滲ませながら、開かれた扉の奥へと目を向ける。恐らくは身廊の先で、朝日に照らされながら静かに佇む主神像へと。
「庇ったというより……僕はただ、“科学的に証明されていること”しか信じないようにしているだけです」
低く穏やかな声でそう告げながら、ロアンさんはすっと目を細めた。しかしそのかんばせに、どこか仄暗い影が差しているように見えて、心の奥が微かに波立つ。
この人は、あの澄んだ青緑の瞳で、これまでどんなものを見てきたのだろう――。彼の視線を辿って肩越しに振り返り、朝の光に淡く輝くルシエル様の像を見つめながら、私はそっとスカートの端を握り締める。“科学的に証明されていること”しか信じない。そう強く思うようになったのは、何故なのだろう。信仰が深く根づいたこの国で、まるでその正反対をゆくような信念に至ったのは――。
「だから否定したに過ぎません。こんな場所で、しかも貴女に言うのもどうかとは思いますが……神も、魔女も、僕は信じていませんから」
でも、“驚いた”というのなら、それは私もまた同じことだった。二日前に色々とありはしたけれど、全てが終わった今、まさか彼がここを訪ねてくるなんて思ってもいなかったから。
「おはようざいます。とても気持ちの良い朝ですね」
爽やかな声音で紡がれた挨拶に、私は緊張のほぐれた笑みを浮かべながら挨拶を返す。そうしながら、やわらかで丁寧な彼の物腰に、この人は随分とやさしく穏やかな人なのだな、と改めて思う。夜道を並んで歩みながら交わした幾つもの会話から、既に感じていたことではあるけれど。あの緊迫した状況の中でさえ、彼は荒げた声を出すことも、憎しみに満ちた目を向けることもなかった。これまで出会ってきた多くの人たち――怒声を浴びせ、蔑むような視線を投げてきた人々――とは違って。
思えば、誰かと挨拶を交わしたのは、いつぶりのことだろう。王都を離れてからずっと独りきりで、人と関わろうものなら“魔女”と罵られ、時には危険な目にも遭った。話が出来る相手なんてどこにも、ひとりもいなかったし、だからこうして向かい合い、目と目を合わせながらまともに言葉を交わすのは、随分と久しい。嘗ては“当たり前”だったものが、あの審判の日を堺に“当たり前”ではなくなり、そして今や、その“当たり前でない日々”が私にとっての“普通”になっていた。
「実は、あれから何度か訪ねてみたんですけど、いつも反応がなくて……少し心配していたんです」
扉に鍵がかかっていたので、中を確かめることも出来なくて。
落ち着いた声音でそう付け加えながら、ロアンさんは私の肩越しに堂の奥を一瞥する。綺麗に磨かれた眼鏡の奥で動く青緑色の瞳は、まるで硝子玉のように澄んでいて美しい。無垢、というのだろうか。彼の双眸を見ていると、生まれたての子どもの、あの純真そのもののような瞳を思い出させるのは、どうしてだろう。いくら若いとはいえ、彼は医者であり、それなりに歳も重ねている。決して“きれいなもの”ばかりを見てきたわけではないはずなのに。それでも彼の青緑色は、不思議と濁りがない。
「すみません。実は、その……」
躊躇いつつも、まる二日眠ってしまっていたという――私自身ですら未だ信じられない――事実を打ち明けると、今度こそ彼は驚愕を隠しきれず、はっきりと目を見開いた。くっきりとした二重の大きな目を、更に大きく。
彼の顔立ちがどこか幼く見えるのは、この丸みのある大きな目のせいなのかもしれない、と、私は困惑気味に笑みながら頭の片隅で思う。ルシエル様やベル様のように人間離れした冷ややかな美しさとはまるで違う、どこか親しみやすく安心感のある、愛嬌のあるあたたかなかんばせ。
「それはそれは……。でも、あれほどの奇跡の後なら、それだけ疲れるのも無理はありませんね」
そう言ってロアンさんは、どこか気遣うように小さく笑った。その苦笑に、私はなんとも言えない複雑な心境で、曖昧に目を細める。
奇跡――。その一言に、身体のあちこちがむずむずして、落ち着かない。実際に現場を目の当たりにし、自身の身に起こったことでありながら、未だにどうしても、それらの全てに現実感がないのだ。どこか他人事のように――例えば物語の中の出来事のように――思えてしまう。ベル様は、あれは私の“聖女”としての力だと断言していたけれど。ルシエル様の力だったと言われた方が、きっともっとずっと素直に受け入れられただろうと思う。私自身が彼に救われたことがあるから、尚の事。
「アレク君は、もうあれから大丈夫なのですか?」
「ええ。二度ほど往診しましたが、特に異常は見当たりませんでした。すっかり元気になって、友達と遊び回っていますよ」
奇跡だとか聖女の力だとか、そんなものは一旦頭の隅へと追い遣り、アレク君が無事であるという事実にだけ意識を集中させ、ほっと胸を撫で下ろす。ノクシールへの拒絶反応を示し、吐血した時には、絶望と恐怖で眼の前が真っ暗になってしまったけれど。あんなにも衰弱していた彼が、友達と遊べるほど回復したことが、ただただ嬉しくてたまらない。一時は本当にどうなることかと不安でいっぱいだったから。
「元気そうで良かったです。安心しました」
そこでふと、私は疑問に思う。アレク君はもうすっかり治っていて、ルクス熱に罹る前の平穏だった日常を取り戻している。だから何もかも、もう“終わった”はずなのに。どうして彼は、今ここにいるのだろう。しかも、私が姿を現すまで何度も足を運んでまで。
「あの……そういえば、何か私にご用でしょうか」
折角訪れてくれた人に、「何で来たんですか」と訊くのは、なんとなく気が憚られたけれど。それでも理由が思いつかなくて、おずおずと問いかけると、彼はまるですっかり忘れていたというふうに、大きな目を大きな動作でぱちりと瞬かせて、それからふわりと、やさしく表情を綻ばせた。
「実は、ヴィオラさんからお誘いがありまして。お礼にご馳走を振る舞わせてほしい、と。貴女にも是非来てほしいとのことだったので、それを伝えに来たんです」
思いがけない申し出に、今度は私が目を瞬かせる。
「お礼だなんて、そんな……私は何も」
戸惑いがちに否定すると、ロアンさんはゆっくり首を振った。
「アレク君の命を救ったのは、紛れもなく貴女です。……寧ろ、何も出来なかったのは、僕の方ですよ」
自嘲気味に笑いながら、医者なのに、と、彼は独り言のようにぽつりと呟く。その声に、どこか寂しさや痛みのようなものが滲んでいるように感じられて、胸がきゅっと締め付けられる。やっぱり彼は――。青緑色の澄んだ瞳を、薄い硝子越しに見つめながら思う。やっぱり彼は、決して“きれいなもの”ばかりを見てきたわけではないのだ、と。
「何も出来なかっただなんて、そんなこと仰らないで下さい。先生は、私を庇って下さってではありませんか」
今でもはっきりと憶えている。私を非難するマルセルさんを、必死にとめようとしてくれた彼の姿を。ルクス熱が流行っているのも、それが“神の怒り”を買ったせいだということも。マルセルさんの言葉を、ロアンさんは強く絞り出した声で、きっぱりと否定してくれた。ルクス熱は歴とした“病”で、魔女の“呪い”でも神の“怒り”でもないのだ、と。
王都を追われてからこれまで出会ってきた人たちの中で、謂れのないものを真正面から否定してくれた人など、ひとりもいなかった。原因の分からないことが起きれば、どんな小さな出来事もすべて“魔女”である私のせいにされ、誰もがそれに頷く。助けるどころか、疑念を呈する人さえいなかったのだ。――彼と出会う前は、ただのひとりも。
「それは……」
言いかけた言葉を濁し、ロアンさんは自嘲を滲ませながら、開かれた扉の奥へと目を向ける。恐らくは身廊の先で、朝日に照らされながら静かに佇む主神像へと。
「庇ったというより……僕はただ、“科学的に証明されていること”しか信じないようにしているだけです」
低く穏やかな声でそう告げながら、ロアンさんはすっと目を細めた。しかしそのかんばせに、どこか仄暗い影が差しているように見えて、心の奥が微かに波立つ。
この人は、あの澄んだ青緑の瞳で、これまでどんなものを見てきたのだろう――。彼の視線を辿って肩越しに振り返り、朝の光に淡く輝くルシエル様の像を見つめながら、私はそっとスカートの端を握り締める。“科学的に証明されていること”しか信じない。そう強く思うようになったのは、何故なのだろう。信仰が深く根づいたこの国で、まるでその正反対をゆくような信念に至ったのは――。
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