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「そう、ですか……」
分かっていたことではあるけれど。胸の内で密かに自嘲をこぼしながら、私はそっと目を伏せる。彼は私に興味など全くない。恐らくは、“人間”という生き物そのものに。
私にとってルシエル様は、誰よりも特別で、大切で、憧れにも似た敬意を抱く存在だけれど、彼にとって私は、そうでない。私は所詮、この世に数多存在する“人間”のひとりに過ぎないのだ。関心を示す必要も、唆られることもない、無価値な人間。
でも、それはある意味、“平等”と言えるのかもしれない、と思う。平民であれ、貴族であれ、王族であれ。或いは、“本物の聖女”だろうが、昔気まぐれに命を助けた人間だろうが関係なく、誰に対しても変わらぬ等しさで向けられるもの。
それでも、やっぱり――。まるで針が間断なく刺さるみたいに、ちくちくと痛む心を服の上からぎゅっと握り締めながら、私は自分の中に渦巻く感情を誤魔化すように、小さく息を吐く。分かっていたこととはいえ、その公平な“無関心”さを改めて突きつけられると、やっぱりどうしても胸が疼いてしまう。胸というより、多分そこに大事にしまわれた、かけがえのない記憶や想いが、ずきずきと。少しずつ罅が入ってゆくみたいに。
そんなことをもしルシエル様に言ったら、彼はきっと顔を顰めるだろう。思い上がるな、と。身の程を弁えろ、と。“本物の聖女”だからといって、無条件に溺愛されるわけではないのだと、彼は言っていたから。もちろん、溺愛されたいと望んでいるわけでも、それが当たり前だとも思っていない。思っていないけれど――。
「……ひとつ、お訊きしたいのですが」
深く息を吸い込み、私はゆっくりと瞼を上げた。ルシエル様の肩にとまっていた小鳥が、軽やかにひょいと小枝へ飛び移り、赤い果実を小さくも鋭い嘴で器用に啄んでいる。吹き抜ける風が運ぶ、土のふくよかな匂いと果物の甘酸っぱい香り。それらの入り混じった空気を、もう一度肺いっぱいに吸い込んで、私は少しの逡巡の後、そっと唇を開いた。
「アレク君を救ってくださったのは、ルシエル様なのだと思っていました。けれど、あれは私の“聖女の力”なのだと、ベル様は仰っていて……。それは、本当なのでしょうか」
果実をせっせと喰んでいた小鳥がぴたりと動きをとめたかと思うと、次の瞬間、鮮やかな青い翼を羽ばたかせ、優雅に宙へと舞い上がった。入り組む枝々の合間を縫うようにして、一面に広がる突き抜けるような蒼穹を目指して。ルシエル様はその姿を目で追いもせず、かといって問いかけた私を見るでもなく、ただじっと、たわわに実った赤い果実を見つめたまま静かに佇んでいる。爽やかな風に、時折三つ編みの先をふわりと揺らめかせながら。
「……聖紋は」
長い沈黙の後、ルシエル様はぽつりと静かに言葉を落とした。相も変わらず私へ目を向けることなく、まるで独り言のように。
「能力の開花と同時に、深い紫色へ変じる。……本来の色は、それだ」
淡々とした口調で告げられたその言葉に、私は思わず目を瞠る。
聖紋の色――。そんなものを、今まで気にしたことなど一度もなかった。私の手の甲に刻まれたそれは、薄っすらと浮かび始めた時からずっと、淡い金色をしていたから。だからそれが“普通”なのだと思っていたし、大主教もまた、本物の聖女がもつ聖紋は金色なのだと言ってもいた。
それに――。私は息を呑みながら、あの日大聖堂で見た麗しい横顔を、淡く光を帯びたペールピンクの髪の毛を、胸元に飾られた純白の薔薇を、そして彼女の右手に浮かんだ紋を、脳裏に思い浮かべる。まるで昨日見たばかりのような鮮明さで。はっきりと。――“本物の聖女”として、殿下の口づけを受けていたアリス嬢の白い手の甲に浮かんだ聖紋もまた、嘗ての私と同じ金色をしていた。本物の聖女の証である、金の色を。
聖紋の本来の色が何であるかを私が知らなかったのと同じように、アリス嬢や殿下もそれを知らなかったのだろうか。仮に彼らがそうだったのだとしても、私よりも遥かに長く神に仕えてきた大主教が、その事実を知らなかったとは思えない。知っていながら、敢えて隠していたのか。それとも彼もまた、私たちと同じように知らなかっただけなのか。
あそこで――大聖堂で見聞きし、あるいは学び、信じてきた数々の教えや知識は全て、果たして本当に“真実”だったのだろうか。
言葉を失い、ただ突っ立っていることしか出来ない私をよそに、ルシエル様は赤い果実から目を逸らし、悠然と背を向ける。ゆるく編み込まれた三つ編み先が微かに揺れ、白い耳朶につけられた青いピアスが、葉漏れ日を浴びてきらりと輝く。羽音を響かせて舞い戻ってきた青い小鳥が、ルシエル様の肩にそっととまった。そうして私を、意味ありげな視線で一瞥する。丸くてくりくりとした、小さな黒い瞳。
「あまり力は使うな。……また気を失うぞ」
茂みの奥へと足を踏み出しながら、ルシエル様はぬくもりのない声でそう言い置いた。その一言に、頭が理解するよりも早く、心臓がとくんと小さく跳ねる。感情のまるで読み取れない、いっそ冷たく響くほどの平坦な声音。それでも、その声で紡がれた言葉を頭の中で――殆ど無意識に――繰り返せば繰り返すほど、胸の奥がじんわりと熱を帯びてゆくのを感じた。私の思い込みに過ぎないと、分かっている。そうだったらいいな、という願望でしかないことも。けれど、分かっていてもなお、抑えきれない淡い期待が心を強く揺さぶる。それはやがて、唇までも震わせた。
「……心配してくださっているのですか」
恐る恐る問いかけた瞬間、ルシエル様の足がぴたりと止まる。そんな彼の肩の上で、青い小鳥がぴちぴちと、可愛らしい鳴き声をこぼす。まるでこの状況を愉しみ、笑ってでもいるみたいに。
一拍の沈黙の後、ゆっくりと振り返ったルシエル様の眉間には、案の定、深い皺が刻まれていた。
「戯言を抜かすな」
露骨なまでに忌々しく返されて、胸がきゅっと縮こまる。そんな私からは早々に視線を背け、ルシエル様は茂みの奥へと消えてゆく。青い小さな鳥とともに。私だけを、ひとりこの場に残して。
その背中を見送りながら、なんて単純なんだろう、と思う。自分でも呆れてしまうくらい、私はなんて単純なんだろう、と。愚問だったと、頭では分かっている。分かっているけれど、それでも胸に残るあの一言に、どうしようもなく心が揺れ動いてしまうのだから。ただ冷たく突き放されただけなのに。その冷たさの向こうに、微かなぬくもりを見出してしまった気がして、私はつい苦笑を漏らしてしまう。
きっと私は、大馬鹿者だ。そう思いながら、凛とした背中が茂みの向こうへ消えていくのを、私はただ静かに見つめていた。
***
「――なんだ、彼女は知らないのか」
小さな羽音を立てて肩から飛び立った小鳥が、川の畔へふわりと降り立つ。そうしながら、鮮やかな青と白の羽毛に覆われていた小さな身体が淡い光を帯びて、ゆっくりと静かに、女の姿へと変じてゆく。その様を、ルシエルは見るともなく見ながら、シロツメクサの咲き誇る川縁で足を止めた。小魚が跳ねたのか、澄んだ水面に細やかな飛沫が弾け、光の粒がきらりと宙を舞う。
「私らにとっては僅かな時でも、人間にとってはそうではない。真実が悠久の流れに埋もれてしまうのも、だから致し方ないのだろうな」
野草の上に足を下ろした女は、風に揺れる長い髪をそっと耳にかけ、ゆるやかに振り返る。涼やかな目元に、どこか含みを湛えた微笑を浮かべながら。
「――まあ、“埋もれた”のか“埋めた”のかは、分からんがな」
分かっていたことではあるけれど。胸の内で密かに自嘲をこぼしながら、私はそっと目を伏せる。彼は私に興味など全くない。恐らくは、“人間”という生き物そのものに。
私にとってルシエル様は、誰よりも特別で、大切で、憧れにも似た敬意を抱く存在だけれど、彼にとって私は、そうでない。私は所詮、この世に数多存在する“人間”のひとりに過ぎないのだ。関心を示す必要も、唆られることもない、無価値な人間。
でも、それはある意味、“平等”と言えるのかもしれない、と思う。平民であれ、貴族であれ、王族であれ。或いは、“本物の聖女”だろうが、昔気まぐれに命を助けた人間だろうが関係なく、誰に対しても変わらぬ等しさで向けられるもの。
それでも、やっぱり――。まるで針が間断なく刺さるみたいに、ちくちくと痛む心を服の上からぎゅっと握り締めながら、私は自分の中に渦巻く感情を誤魔化すように、小さく息を吐く。分かっていたこととはいえ、その公平な“無関心”さを改めて突きつけられると、やっぱりどうしても胸が疼いてしまう。胸というより、多分そこに大事にしまわれた、かけがえのない記憶や想いが、ずきずきと。少しずつ罅が入ってゆくみたいに。
そんなことをもしルシエル様に言ったら、彼はきっと顔を顰めるだろう。思い上がるな、と。身の程を弁えろ、と。“本物の聖女”だからといって、無条件に溺愛されるわけではないのだと、彼は言っていたから。もちろん、溺愛されたいと望んでいるわけでも、それが当たり前だとも思っていない。思っていないけれど――。
「……ひとつ、お訊きしたいのですが」
深く息を吸い込み、私はゆっくりと瞼を上げた。ルシエル様の肩にとまっていた小鳥が、軽やかにひょいと小枝へ飛び移り、赤い果実を小さくも鋭い嘴で器用に啄んでいる。吹き抜ける風が運ぶ、土のふくよかな匂いと果物の甘酸っぱい香り。それらの入り混じった空気を、もう一度肺いっぱいに吸い込んで、私は少しの逡巡の後、そっと唇を開いた。
「アレク君を救ってくださったのは、ルシエル様なのだと思っていました。けれど、あれは私の“聖女の力”なのだと、ベル様は仰っていて……。それは、本当なのでしょうか」
果実をせっせと喰んでいた小鳥がぴたりと動きをとめたかと思うと、次の瞬間、鮮やかな青い翼を羽ばたかせ、優雅に宙へと舞い上がった。入り組む枝々の合間を縫うようにして、一面に広がる突き抜けるような蒼穹を目指して。ルシエル様はその姿を目で追いもせず、かといって問いかけた私を見るでもなく、ただじっと、たわわに実った赤い果実を見つめたまま静かに佇んでいる。爽やかな風に、時折三つ編みの先をふわりと揺らめかせながら。
「……聖紋は」
長い沈黙の後、ルシエル様はぽつりと静かに言葉を落とした。相も変わらず私へ目を向けることなく、まるで独り言のように。
「能力の開花と同時に、深い紫色へ変じる。……本来の色は、それだ」
淡々とした口調で告げられたその言葉に、私は思わず目を瞠る。
聖紋の色――。そんなものを、今まで気にしたことなど一度もなかった。私の手の甲に刻まれたそれは、薄っすらと浮かび始めた時からずっと、淡い金色をしていたから。だからそれが“普通”なのだと思っていたし、大主教もまた、本物の聖女がもつ聖紋は金色なのだと言ってもいた。
それに――。私は息を呑みながら、あの日大聖堂で見た麗しい横顔を、淡く光を帯びたペールピンクの髪の毛を、胸元に飾られた純白の薔薇を、そして彼女の右手に浮かんだ紋を、脳裏に思い浮かべる。まるで昨日見たばかりのような鮮明さで。はっきりと。――“本物の聖女”として、殿下の口づけを受けていたアリス嬢の白い手の甲に浮かんだ聖紋もまた、嘗ての私と同じ金色をしていた。本物の聖女の証である、金の色を。
聖紋の本来の色が何であるかを私が知らなかったのと同じように、アリス嬢や殿下もそれを知らなかったのだろうか。仮に彼らがそうだったのだとしても、私よりも遥かに長く神に仕えてきた大主教が、その事実を知らなかったとは思えない。知っていながら、敢えて隠していたのか。それとも彼もまた、私たちと同じように知らなかっただけなのか。
あそこで――大聖堂で見聞きし、あるいは学び、信じてきた数々の教えや知識は全て、果たして本当に“真実”だったのだろうか。
言葉を失い、ただ突っ立っていることしか出来ない私をよそに、ルシエル様は赤い果実から目を逸らし、悠然と背を向ける。ゆるく編み込まれた三つ編み先が微かに揺れ、白い耳朶につけられた青いピアスが、葉漏れ日を浴びてきらりと輝く。羽音を響かせて舞い戻ってきた青い小鳥が、ルシエル様の肩にそっととまった。そうして私を、意味ありげな視線で一瞥する。丸くてくりくりとした、小さな黒い瞳。
「あまり力は使うな。……また気を失うぞ」
茂みの奥へと足を踏み出しながら、ルシエル様はぬくもりのない声でそう言い置いた。その一言に、頭が理解するよりも早く、心臓がとくんと小さく跳ねる。感情のまるで読み取れない、いっそ冷たく響くほどの平坦な声音。それでも、その声で紡がれた言葉を頭の中で――殆ど無意識に――繰り返せば繰り返すほど、胸の奥がじんわりと熱を帯びてゆくのを感じた。私の思い込みに過ぎないと、分かっている。そうだったらいいな、という願望でしかないことも。けれど、分かっていてもなお、抑えきれない淡い期待が心を強く揺さぶる。それはやがて、唇までも震わせた。
「……心配してくださっているのですか」
恐る恐る問いかけた瞬間、ルシエル様の足がぴたりと止まる。そんな彼の肩の上で、青い小鳥がぴちぴちと、可愛らしい鳴き声をこぼす。まるでこの状況を愉しみ、笑ってでもいるみたいに。
一拍の沈黙の後、ゆっくりと振り返ったルシエル様の眉間には、案の定、深い皺が刻まれていた。
「戯言を抜かすな」
露骨なまでに忌々しく返されて、胸がきゅっと縮こまる。そんな私からは早々に視線を背け、ルシエル様は茂みの奥へと消えてゆく。青い小さな鳥とともに。私だけを、ひとりこの場に残して。
その背中を見送りながら、なんて単純なんだろう、と思う。自分でも呆れてしまうくらい、私はなんて単純なんだろう、と。愚問だったと、頭では分かっている。分かっているけれど、それでも胸に残るあの一言に、どうしようもなく心が揺れ動いてしまうのだから。ただ冷たく突き放されただけなのに。その冷たさの向こうに、微かなぬくもりを見出してしまった気がして、私はつい苦笑を漏らしてしまう。
きっと私は、大馬鹿者だ。そう思いながら、凛とした背中が茂みの向こうへ消えていくのを、私はただ静かに見つめていた。
***
「――なんだ、彼女は知らないのか」
小さな羽音を立てて肩から飛び立った小鳥が、川の畔へふわりと降り立つ。そうしながら、鮮やかな青と白の羽毛に覆われていた小さな身体が淡い光を帯びて、ゆっくりと静かに、女の姿へと変じてゆく。その様を、ルシエルは見るともなく見ながら、シロツメクサの咲き誇る川縁で足を止めた。小魚が跳ねたのか、澄んだ水面に細やかな飛沫が弾け、光の粒がきらりと宙を舞う。
「私らにとっては僅かな時でも、人間にとってはそうではない。真実が悠久の流れに埋もれてしまうのも、だから致し方ないのだろうな」
野草の上に足を下ろした女は、風に揺れる長い髪をそっと耳にかけ、ゆるやかに振り返る。涼やかな目元に、どこか含みを湛えた微笑を浮かべながら。
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