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第5章 フローズン・ファンタズム
80 二人なら
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私たちが構え、戦う姿勢を見せた事でロード・スクルドの威圧感が増した。
彼もまた臨戦態勢に入ったのか、冷たく重々しい魔力が渦巻くのを感じる。
「…………!」
唐突に、周囲の温度がガクンと下がったのを感じた。
元々北国かと思うほどに冷え切っていた一帯が、更に熱を失うのを肌で直感的に察知した。
咄嗟の判断で『真理の剣』を大きく振り回すと、私たちの周りで氷がパリンと弾ける音がした。
私たちを囲む一帯ごと凍らされようとしていた。
周囲の空気が凍りつき、私たちに伸びる一歩手前、ギリギリだった。
このまま固まっていたら、一緒に凍らされておしまいかもしれない。
「私が、前に出る……!」
氷室さんの手を放して私は一人で踏み込んだ。
強く剣を握り込んで、ロード・スクルドに向けて飛び込まんと足を踏み出す。
しかし私が動き出した瞬間、ロード・スクルドは次の魔法を使っていた。
一陣の風が吹いたかと思うと、何か冷たいものが迫るのを感じた。
咄嗟に剣を盾のように前に構えると、冷たい風と共に重い衝撃が剣に打ち付けられた。
何が何だかわからないまま、吹き寄せる風と衝撃に堪える。
剣に打ち付けられるのが大量の氷であることはわかった。
氷でできた何かが次々と風を切ってこちらに降りかってきて、『真理の剣』にあたる事で打ち砕けている。
重い衝撃はしばらく続き、やっとそれが止んだところで、私はその正体を目にした。
ロード・スクルドの周囲に大量の氷の剣が飛んでいた。
数える気にもならない大量の剣。それらは連なって、ロード・スクルドを取り囲むようにいくつかの円を描いていた。
ロード・スクルドを中心に回る氷の剣たちは、ヒュンと音を立てながら冷たい風を巻き起こしていた。
円を作るあの氷の剣たちが、続けざまに振り下ろされていたんだ。
『真理の剣』の剣に触れて砕け散っても、すぐさま次の剣が振り下ろされる連撃がさっきの攻撃の正体だ。
「姫殿下。あなたを傷付けるのは心苦しくはありますが、お命までは取るつもりはありません。ですのでどうか、下手を打ちませんよう」
ロード・スクルドはそう淡々と言ってから、剣を差し向けてきた。
彼を中心に交差するように回転していた円が二つ。まるで電動ノコギリのように回転しながら風を切って迫る。
ロード・スクルドから解放された剣の円は独自に回転しながら私たちにそれぞれ迫ってきた。
その全てを『真理の剣』で打ち消すことは到底できそうにない。
「私に任せて!」
私は一歩前に乗り出して、氷室さんの前に庇うように立った。
打ち消せらないなら飲み込むしかない。
私の幻想で相手の魔法を掌握する。
迫り来る氷の剣の連撃を、私の勝手で思い描く。
その魔法が私の手に、私の思うままに飛び回る様を。
すると私たちに迫っていた二つの剣の円は、勢いはそのままに、しかし剣一本いっぽんがばらけて飛び立った。
そして各々くるくると飛び回ってから、私たちを守るように周囲に集結した。
「なに……!?」
「ロード・スクルド、返します!」
集結した氷の剣を、まるでマシンガンのように一斉掃射させた。
鋒を全て彼へと向け、それぞれが弾丸のように飛んでいく。
予想だにしていなかったであろう不測の事態にロード・スクルドは僅かに顔を歪め、しかしすぐさま残りの剣を振り回した。
ロード・スクルドの周囲で円を描いていた氷の剣を高速で回転させ、私が飛ばした氷の剣を打ち払う。
元が同じ氷の剣たちはぶつかり合うごとに相殺され、パラパラと氷の粉となって暗い空に舞った。
「……あなたは、力を封じられているはずでは?」
作り出した氷の剣が悉く粉砕し、ロード・スクルドは顔をしかめながら私を見た。
その碧い瞳は酷く冷たく、心の底まで凍て付かされそうだった。
「そうです。私は昔の記憶も、力もありません。でも、友達を守りたいという気持ちが、ほんの少しだけ力を引き出してくれるんです」
「友達……やはりあなたが、ヘイルを変えたのですね」
ロード・スクルドは呟くようにそう言うと、小さく溜息をついた。
視線の冷たさは変わらず、しかしどこか探りを入れるような目を私に向ける。
「他者との繋がりに、一体何の意味があると言うのです。他人は足枷にしかならない。心も感情も、最適な答えへと妨げにしかならないでしょう」
「そんなこと、ありません……! 人は一人でなんて生きられない。他人と繋がることで、人は人になれるんです。心を通わせて想い合うからこそ、強くなれるんです」
「それが私にはわからない。他者に縋ることは、私に言わせれば弱さでしかないのです」
静かに首を横に振るロード・スクルド。
確かに、その碧い瞳は全てを遮断するように冷たく、心を分厚い氷の中に押し込めているようだった。
ロードという圧倒的強者だからこそ、彼には他人が必要なかったんだ。
人の力を借りなくても強かった彼は、独りでも強かった彼は、人と触れ合うことを知らずに生きてきたのかもしれない。
「だから私には姫殿下が、そして今のヘイルがわからない。友達を想うと声高々に叫び、他人の心に縋り、それを理由に無謀な行動にでる。その意味が、わからない」
「それが、人と繋がる強さだからです。想い合う気持ちや、交わす心が私たちを強くしてくれる。私のこの力は、氷室さんと繋がっているからこそ、より強くあれるんだから」
「…………まぁ、いいでしょう」
ロード・スクルドはゆっくりと目を瞑り、重い息を吐いた。
きっと、私たちの考えは伝わってはいない。
独りであることに価値を見出している彼と、共にあることを力にする私たちでは、やっぱり相入れない。
それでもロード・スクルドは、私たちに問いかけてきた。
そこには、理解しようという気持ちがあるのではないかと、思ってしまった。
「ヘイル。お前は、姫殿下と二人ならば私に勝てると思っているのか。一人では私に全く歯が立たなかったお前が」
「……思っている。私一人の力は及ばなくても、二人なら乗り越えられると……私は信じている」
「そうか。ならば、見せてみろ……!」
ロード・スクルドの問いかけに、氷室さんは私の手を握って頷いた。
弱々しくも、確かに強い意志のこもった言葉で。
その返答に、ロード・スクルドはほんの僅か笑みを口元に浮かべた。
それは私たちのことを嘲笑っているようにも見えたし、試しているようにも見えた。
「力を封じられた姫君と、矮小で下劣な魔女の二人。魔法使いの頂に立つこの私に敵うと言うのならば、やって見せてもらおうか……!」
ロード・スクルドの背後に冷気が集結し、あらゆる水分が凝結して氷が連結していく。
まるで吹雪が渦巻くように風と冷気が入り乱れ、巨大な何かを形作る。
それは龍だった。氷でできた龍だった。
あらゆる空想に登場する、天翔ける大いなる獣。
氷によって創りだされた龍が二体。
その氷の牙を剥き出しにして、鎌首をもたげていた。
鱗一枚一枚が氷でできた龍は、しなやかに体をくねらせて宙を駆け、二体同時に私たちへと襲いかかってきた。
それと同時にただ膨大な力の冷気が私たちを覆い、包み込むように氷結が迫った。
「…………!」
瞬時に氷室さんが周囲に冷気を放って氷結に対抗する。
それによって押し留めた氷結の冷気を私が掌握し、氷室さんの魔法と合わせて増幅させ、迫り来る龍に向けて放った。
氷の龍の一体を氷結の波が飲み込んだ。長い体全てを上から凍らせることでその場に固定する。
しかしそれを逃れたもう一体が迫っていた。
それに対して氷室さんが手を伸ばして正面から火炎を放った。
迫り来る龍一体を飲み込まんとする業火だったけれど、氷の龍はそれを浴びても溶けはしなかった。
「っ…………!」
炎は龍を押し留めることはできても破壊することはできなかった。
炎と氷という明白な相性であっても、氷の龍は全く勢いを失っていなかった。
そこで私は凍らせたもう一匹の龍を掌握して、炎に対抗する龍を横から襲わせた。
先ほどの氷室さんの魔法も合わさって増幅したこっちの氷の龍は、相手の龍を容易く噛み砕いた。
氷の龍が砕け散る最中、ロード・スクルドはこちらに飛び込んできていた。
迫り来る彼に急いで龍を差し向けるも、ロード・スクルドが放った氷の槍がいとも簡単に龍の頭を貫いて砕き、龍は一瞬で瓦解した。
「氷室さん……!」
迫るロード・スクルドの手が氷室さんに伸びて、私は慌てて間に割り込んで剣を振るった。
しかしそれも容易くかわされて、剣を振り抜いた私は真横からハンマーのような氷の塊が思いっきり殴られた。
「────────!」
全身の骨が悲鳴をあげ、身体中が震えた。
一瞬何が起きたのか理解できないほどの衝撃が駆け抜け、私はされるがままに吹き飛んだ。
それでもなんとか根気で意識を保って、地面に体を打ち付けられる直前に魔法で大勢を整える。
なんとか着地して、朦朧とする頭で氷室さんの方を見てみれば、二人は氷の剣による打ち合いをしていた。
氷室さんの剣は一度打ち込むたびに砕け、その都度新しく生成しながら対抗していた。
対するロード・スクルドの剣は力強く、何度打ち込まれようとヒビ一つ入っていない。
魔法使いと魔女の根本的な実力差がそこにはあった。
魔法を扱う者としての格差とも言えた。
何度も打ち合う中で、その都度剣を作る氷室さんはついに出遅れ、剣を手放した状態でロード・スクルドの剣が差し迫った。
私は慌てて光をまとって高速で距離を詰めた。『真理の剣』を伸ばして飛び込んで、ロード・スクルドの剣が氷室さんに触れる直前に、その剣を打ち砕いた。
「ありがとう、花園さん」
そうして作った一瞬の間に、氷室さんは反撃に出ていた。
剣を失ってほんの僅かにだけ無防備になったロード・スクルドの懐に腕を伸ばす。
一呼吸の間に周囲の冷え切った空気がその手の平に集まって、そして瞬間的に爆ぜた。
圧縮した空気の炸裂が氷結する冷気と共に放たれ、カウンターを受けたロード・スクルドは身を凍てつかせながら吹き飛んだ。
吹き飛びながらも氷室さんの攻撃による氷結に対抗しようとしているロード・スクルドに、私は氷の魔力を剣に乗せて力の限り振り抜いた。
斬撃に魔力の奔流が混ざり、そして凍てつく波動となって放たれる。
一直線上を氷で埋め尽くす剣の衝撃の波が、ロード・スクルドを飲み込んで凍りつかせた。
彼もまた臨戦態勢に入ったのか、冷たく重々しい魔力が渦巻くのを感じる。
「…………!」
唐突に、周囲の温度がガクンと下がったのを感じた。
元々北国かと思うほどに冷え切っていた一帯が、更に熱を失うのを肌で直感的に察知した。
咄嗟の判断で『真理の剣』を大きく振り回すと、私たちの周りで氷がパリンと弾ける音がした。
私たちを囲む一帯ごと凍らされようとしていた。
周囲の空気が凍りつき、私たちに伸びる一歩手前、ギリギリだった。
このまま固まっていたら、一緒に凍らされておしまいかもしれない。
「私が、前に出る……!」
氷室さんの手を放して私は一人で踏み込んだ。
強く剣を握り込んで、ロード・スクルドに向けて飛び込まんと足を踏み出す。
しかし私が動き出した瞬間、ロード・スクルドは次の魔法を使っていた。
一陣の風が吹いたかと思うと、何か冷たいものが迫るのを感じた。
咄嗟に剣を盾のように前に構えると、冷たい風と共に重い衝撃が剣に打ち付けられた。
何が何だかわからないまま、吹き寄せる風と衝撃に堪える。
剣に打ち付けられるのが大量の氷であることはわかった。
氷でできた何かが次々と風を切ってこちらに降りかってきて、『真理の剣』にあたる事で打ち砕けている。
重い衝撃はしばらく続き、やっとそれが止んだところで、私はその正体を目にした。
ロード・スクルドの周囲に大量の氷の剣が飛んでいた。
数える気にもならない大量の剣。それらは連なって、ロード・スクルドを取り囲むようにいくつかの円を描いていた。
ロード・スクルドを中心に回る氷の剣たちは、ヒュンと音を立てながら冷たい風を巻き起こしていた。
円を作るあの氷の剣たちが、続けざまに振り下ろされていたんだ。
『真理の剣』の剣に触れて砕け散っても、すぐさま次の剣が振り下ろされる連撃がさっきの攻撃の正体だ。
「姫殿下。あなたを傷付けるのは心苦しくはありますが、お命までは取るつもりはありません。ですのでどうか、下手を打ちませんよう」
ロード・スクルドはそう淡々と言ってから、剣を差し向けてきた。
彼を中心に交差するように回転していた円が二つ。まるで電動ノコギリのように回転しながら風を切って迫る。
ロード・スクルドから解放された剣の円は独自に回転しながら私たちにそれぞれ迫ってきた。
その全てを『真理の剣』で打ち消すことは到底できそうにない。
「私に任せて!」
私は一歩前に乗り出して、氷室さんの前に庇うように立った。
打ち消せらないなら飲み込むしかない。
私の幻想で相手の魔法を掌握する。
迫り来る氷の剣の連撃を、私の勝手で思い描く。
その魔法が私の手に、私の思うままに飛び回る様を。
すると私たちに迫っていた二つの剣の円は、勢いはそのままに、しかし剣一本いっぽんがばらけて飛び立った。
そして各々くるくると飛び回ってから、私たちを守るように周囲に集結した。
「なに……!?」
「ロード・スクルド、返します!」
集結した氷の剣を、まるでマシンガンのように一斉掃射させた。
鋒を全て彼へと向け、それぞれが弾丸のように飛んでいく。
予想だにしていなかったであろう不測の事態にロード・スクルドは僅かに顔を歪め、しかしすぐさま残りの剣を振り回した。
ロード・スクルドの周囲で円を描いていた氷の剣を高速で回転させ、私が飛ばした氷の剣を打ち払う。
元が同じ氷の剣たちはぶつかり合うごとに相殺され、パラパラと氷の粉となって暗い空に舞った。
「……あなたは、力を封じられているはずでは?」
作り出した氷の剣が悉く粉砕し、ロード・スクルドは顔をしかめながら私を見た。
その碧い瞳は酷く冷たく、心の底まで凍て付かされそうだった。
「そうです。私は昔の記憶も、力もありません。でも、友達を守りたいという気持ちが、ほんの少しだけ力を引き出してくれるんです」
「友達……やはりあなたが、ヘイルを変えたのですね」
ロード・スクルドは呟くようにそう言うと、小さく溜息をついた。
視線の冷たさは変わらず、しかしどこか探りを入れるような目を私に向ける。
「他者との繋がりに、一体何の意味があると言うのです。他人は足枷にしかならない。心も感情も、最適な答えへと妨げにしかならないでしょう」
「そんなこと、ありません……! 人は一人でなんて生きられない。他人と繋がることで、人は人になれるんです。心を通わせて想い合うからこそ、強くなれるんです」
「それが私にはわからない。他者に縋ることは、私に言わせれば弱さでしかないのです」
静かに首を横に振るロード・スクルド。
確かに、その碧い瞳は全てを遮断するように冷たく、心を分厚い氷の中に押し込めているようだった。
ロードという圧倒的強者だからこそ、彼には他人が必要なかったんだ。
人の力を借りなくても強かった彼は、独りでも強かった彼は、人と触れ合うことを知らずに生きてきたのかもしれない。
「だから私には姫殿下が、そして今のヘイルがわからない。友達を想うと声高々に叫び、他人の心に縋り、それを理由に無謀な行動にでる。その意味が、わからない」
「それが、人と繋がる強さだからです。想い合う気持ちや、交わす心が私たちを強くしてくれる。私のこの力は、氷室さんと繋がっているからこそ、より強くあれるんだから」
「…………まぁ、いいでしょう」
ロード・スクルドはゆっくりと目を瞑り、重い息を吐いた。
きっと、私たちの考えは伝わってはいない。
独りであることに価値を見出している彼と、共にあることを力にする私たちでは、やっぱり相入れない。
それでもロード・スクルドは、私たちに問いかけてきた。
そこには、理解しようという気持ちがあるのではないかと、思ってしまった。
「ヘイル。お前は、姫殿下と二人ならば私に勝てると思っているのか。一人では私に全く歯が立たなかったお前が」
「……思っている。私一人の力は及ばなくても、二人なら乗り越えられると……私は信じている」
「そうか。ならば、見せてみろ……!」
ロード・スクルドの問いかけに、氷室さんは私の手を握って頷いた。
弱々しくも、確かに強い意志のこもった言葉で。
その返答に、ロード・スクルドはほんの僅か笑みを口元に浮かべた。
それは私たちのことを嘲笑っているようにも見えたし、試しているようにも見えた。
「力を封じられた姫君と、矮小で下劣な魔女の二人。魔法使いの頂に立つこの私に敵うと言うのならば、やって見せてもらおうか……!」
ロード・スクルドの背後に冷気が集結し、あらゆる水分が凝結して氷が連結していく。
まるで吹雪が渦巻くように風と冷気が入り乱れ、巨大な何かを形作る。
それは龍だった。氷でできた龍だった。
あらゆる空想に登場する、天翔ける大いなる獣。
氷によって創りだされた龍が二体。
その氷の牙を剥き出しにして、鎌首をもたげていた。
鱗一枚一枚が氷でできた龍は、しなやかに体をくねらせて宙を駆け、二体同時に私たちへと襲いかかってきた。
それと同時にただ膨大な力の冷気が私たちを覆い、包み込むように氷結が迫った。
「…………!」
瞬時に氷室さんが周囲に冷気を放って氷結に対抗する。
それによって押し留めた氷結の冷気を私が掌握し、氷室さんの魔法と合わせて増幅させ、迫り来る龍に向けて放った。
氷の龍の一体を氷結の波が飲み込んだ。長い体全てを上から凍らせることでその場に固定する。
しかしそれを逃れたもう一体が迫っていた。
それに対して氷室さんが手を伸ばして正面から火炎を放った。
迫り来る龍一体を飲み込まんとする業火だったけれど、氷の龍はそれを浴びても溶けはしなかった。
「っ…………!」
炎は龍を押し留めることはできても破壊することはできなかった。
炎と氷という明白な相性であっても、氷の龍は全く勢いを失っていなかった。
そこで私は凍らせたもう一匹の龍を掌握して、炎に対抗する龍を横から襲わせた。
先ほどの氷室さんの魔法も合わさって増幅したこっちの氷の龍は、相手の龍を容易く噛み砕いた。
氷の龍が砕け散る最中、ロード・スクルドはこちらに飛び込んできていた。
迫り来る彼に急いで龍を差し向けるも、ロード・スクルドが放った氷の槍がいとも簡単に龍の頭を貫いて砕き、龍は一瞬で瓦解した。
「氷室さん……!」
迫るロード・スクルドの手が氷室さんに伸びて、私は慌てて間に割り込んで剣を振るった。
しかしそれも容易くかわされて、剣を振り抜いた私は真横からハンマーのような氷の塊が思いっきり殴られた。
「────────!」
全身の骨が悲鳴をあげ、身体中が震えた。
一瞬何が起きたのか理解できないほどの衝撃が駆け抜け、私はされるがままに吹き飛んだ。
それでもなんとか根気で意識を保って、地面に体を打ち付けられる直前に魔法で大勢を整える。
なんとか着地して、朦朧とする頭で氷室さんの方を見てみれば、二人は氷の剣による打ち合いをしていた。
氷室さんの剣は一度打ち込むたびに砕け、その都度新しく生成しながら対抗していた。
対するロード・スクルドの剣は力強く、何度打ち込まれようとヒビ一つ入っていない。
魔法使いと魔女の根本的な実力差がそこにはあった。
魔法を扱う者としての格差とも言えた。
何度も打ち合う中で、その都度剣を作る氷室さんはついに出遅れ、剣を手放した状態でロード・スクルドの剣が差し迫った。
私は慌てて光をまとって高速で距離を詰めた。『真理の剣』を伸ばして飛び込んで、ロード・スクルドの剣が氷室さんに触れる直前に、その剣を打ち砕いた。
「ありがとう、花園さん」
そうして作った一瞬の間に、氷室さんは反撃に出ていた。
剣を失ってほんの僅かにだけ無防備になったロード・スクルドの懐に腕を伸ばす。
一呼吸の間に周囲の冷え切った空気がその手の平に集まって、そして瞬間的に爆ぜた。
圧縮した空気の炸裂が氷結する冷気と共に放たれ、カウンターを受けたロード・スクルドは身を凍てつかせながら吹き飛んだ。
吹き飛びながらも氷室さんの攻撃による氷結に対抗しようとしているロード・スクルドに、私は氷の魔力を剣に乗せて力の限り振り抜いた。
斬撃に魔力の奔流が混ざり、そして凍てつく波動となって放たれる。
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