普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第6章 誰ガ為ニ

135 友達故に

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 冷たい空気を切り裂くように雷が撒き散らされる。
 その小柄な体躯の倍以上ある翼を押し広げ、威圧的に放電する千鳥ちゃん。

 感情がぐちゃぐちゃになってる。
 自分でもどうすればいいか、もうわからないんだ。
 そのはち切れんばかりの感情を、どう向けたらいいのか。

 なら、私が全部受け止めよう。
 私への殺意も親愛も、全部。
 全部全部受け止めて、私も正面からぶつけよう。

 ここまできたら、それが一番の方法だ。

 怒声を上げながら涙を流し続ける千鳥ちゃん。
 バチバチと打ち鳴らす電撃の激しさが、彼女の荒れ狂う気持ちを表しているようでなんだか切ない。
 その全てを取り払ってあげる為に、私は力強く『真理のつるぎ』の剣を握った。

 千鳥ちゃんの奥でロード・ケインが不敵な笑みを浮かべているのが、少し気になる。
 徹底的に私たちの裏をかいて、私たちの気持ちを翻弄したロード・ケイン。
 ここまで彼の思惑通りだったとして、じゃあこの先、どこまでを見据えているんだろう。

 案外後はなるようになれと思っている気もするし、最後まで順序が立っているようにも思える。
 それが不安で怖いけれど、でも今はそんなことを気にしている場合じゃない。

「アリス! 手加減なんかしないから、アンタも私を殺す気でかかってきなさい!」
「私も手加減なんてしない! 殺す気で千鳥ちゃんをこっちに連れ戻す!」
「言ってろ!!!」

 千鳥ちゃんが吠えた瞬間、彼女から撒き散らされスパークしていた電撃が一斉に私へと向いた。
 無数の電撃の線が私に覆いかぶさるように空中を駆けてくる。

 轟音は遅く、チカチカする閃光が瞬きの間に迫ってくる。
 猶予は刹那。私は即座に『真理のつるぎ』に魔力を込めて振り回した。
 白い煌きの斬撃が雷全てを打ち払い消し飛ばす。

「だろうと思ったわ!」

 その直後、白い輝きの残滓を振り払って千鳥ちゃんが猛スピードで飛び込んできた。
 攻撃を払ったことで少し気を抜いていた私は、その間髪入れぬ突撃に一瞬怯んでしまう。

 超低空飛行で翼を羽ばたかせて突き進んで来た千鳥ちゃんは、風を切りながら私へと突き進み、そのまま両手で私の肩を掴んだ。

「ッ────!」

 突進の負荷が全て両肩の関節に集中して、外れそうな程の痛みに呻く声が漏れる。
 けれど、事態はそれどころではなかった。

 千鳥ちゃんは私の肩をガッチリと掴むと、そのまま急上昇して私の身体を宙へと持ち上げた。
 冷たい風を切り、ぐんぐんと高度が上がっていくのがわかる。

 突然、千鳥ちゃんは急に私を放した。
 そしてくるりと身を翻すと、勢いそのままの蹴りを私の腹に打ち込んできた。
 その蹴りそのものは咄嗟に剣で防いだけれど、私の体は一人宙へと浮いた。

 さっきは千鳥ちゃんと共に飛び回った空で、私は突如一人にされた。

「口程にもないわね、アリス!」

 周囲が全てチカチカと点滅した。
 昼の空を夜に変えた暗雲がゴロゴロと唸りを上げている。
 私の眼下で千鳥ちゃんもバチバチと電気を弾けさせている。

 次の瞬間、千鳥ちゃんから猛烈な電撃が迸った。
 逆雷のように上へと登る電撃が私に向けて打ち上がる。
 そしてそれに呼応したかのように、暗雲から落雷がいくつも飛来した。

 乾いた冬の空気を切り裂いて、バチバチと弾けさせながら閃光の如き雷が四方八方から降り注ぐ。
『真理のつるぎ』を振り回したところで、これは捌き切れないし防ぎきれない。

「そんなこと、ないよ!」

 けれど、私にあるのは『真理のつるぎ』だけじゃない。
 私は迫りくる全ての雷に意識を向け、それらに自分の魔力を向けた。

 すると私を串刺しにしようと降り注いだ全ての電撃たちがその矛先を変え、私の周囲でぐるぐる渦巻いた。
 あらゆる雷は一つにまとまり、強大な電撃の塊となって私を包む。

 私は制御下に落ちた電撃たちを一本の柱にして、下にいる千鳥ちゃん目掛けて叩き落とした。

「なっ…………!?」

 予想だにしていなかったであろう私の反撃に、千鳥ちゃんは反応しきれず雷の柱をもろに受けた。
 聴覚を埋め尽くすほどの轟音を響かせながら降り注いだ雷の塊。
 それを一身に受けた千鳥ちゃんは、ビクビクと体を痙攣させつつも、必死で翼を広げて落下を堪え滞空していた。

 何とか堪えた千鳥ちゃんは、戸惑いと焦りを持って私を睨んでくる。
 こんな反撃をされるなんて、千鳥ちゃんは思っても見なかった筈だ。

 『幻想の掌握』。他人の魔法を私の幻想で包み込み、その制御を奪い去るという、私の力の一端。
 けれど今の私では使える場合は限定されていて、何でもかんでもは奪えない。

 私が掌握できるのは、私に力を貸してくれる魔女の得意とする魔法に類するものだけ。
 自分自身では魔法が使えない私は、友達の魔女からの『奉仕』によって貸される魔法を起点にしないと掌握できない。

 でも、今の私の相手は千鳥ちゃんだ。
 私の友達の千鳥ちゃんだ。

 千鳥ちゃんが放つ電撃は、千鳥ちゃんが貸してくれる力を持って全て掌握できる。
 もし私たちの心が完全に断絶していたら、こうはいかなかったかもしれないけれど。
 私を殺すと言いながら、私から心を離さないでいてくれる千鳥ちゃん相手なら、この戦い方ができる。

「千鳥ちゃん! 千鳥ちゃんは今でも私の友達だよ! これがその証! 千鳥ちゃんが私の友達でいてくれる限り、その雷は私には届かない!」
「ふざけた、ことを……!」

 自由落下する私目掛けて、千鳥ちゃんは突撃してきた。
 ぐっと歯を食いしばって、忌々しげに私を睨みながら。

 空中で自由に身動きの取れない私に、千鳥ちゃんはすぐにその距離を詰めてきた。
 両手に電撃を溜め、それを私に直接叩き込もうと腕を振るってくる。

 それに対して私は『真理のつるぎ』を盾にした。
 弾けるスパークは白い刀身に触れた瞬間パンと弾けて消えて無くなる。

 舌打ちして顔を歪める千鳥ちゃん。
 私はそんな千鳥ちゃん手首を透かさず握りしめた。

「このままだと落ちちゃうから、下までよろしく」
「ふざけんな! 落ちて死ね!」

 自由に飛び回ることのできない私は、強引に千鳥ちゃんに縋って笑いかけた。
 そんな私に癇癪をあげて、腕をブンブンと振りながら放電する千鳥ちゃん。
 けれどその放電は全て私が掌握して外へと逃してしまうから、私を打ち落とすことはできなかった。

「ふてぶてしい奴! そんなに下に降りたきゃ、一人で降りなさい!」

 手首をガッチリと掴んで放さずにいる私に、千鳥ちゃんは苛立ちを隠さず怒鳴り声を上げた。
 そして力任せに私をぐるんと振り回して、そのまま勢いよく私を下へと振り抜いた。

 遠心力と力任せな振り回しに、私は思わず手を放してしまった。
 それでもその落下の方向はビルの屋上へと向いていたから、私は持てる魔力を落下の減速に使って、何とか無事に着地することができた。

 そんな私に透かさず雷の雨が降り注ぐ。
 次々と落ちてくる雷に、すぐさま『真理のつるぎ』を振り回して打ち払う。

 けれど着地間もない所への攻撃に体勢はあまりよくなく、光速で降り注ぐ雷たち全てを捌いていくうちに、段々と姿勢が崩れていく。

 いくつかの雷を打ち払った時、私の体勢がぐらりと傾いてしまった。
 その隙を突くかのように、透かさず特大の爆雷が極光を放って落ちてきた。

「…………!」

 崩れた体勢で何とか爆雷に意識を向ける。
 膨大な魔力が込められたそれは、今までよりも若干掌握しにくいように思えた。
 けれどそれでも私の思い描く通りに包み込まれた爆雷は、その太い柱をいくつかに散らして身を翻し、千鳥ちゃんの元へ登っていった。

「ホントめちゃくちゃねアンタは!」

 舌打ちをしながら千鳥ちゃんはそれをかわし、急速に降下して屋上へと降り立つ。
 激しい飛翔と弾ける電撃で、その煌びやかな金髪は乱れつつぶわっと広がっていた。

 まるで野鳥のように荒々しい姿で、千鳥ちゃんは私に向かい合う。
 苛立ちと戸惑いを浮かべながらも、私への敵意はまだ失っていなかった。

「千鳥ちゃん、あなたもわかるでしょ? 私たちは友達なんだよ。口でなんて言ったって、私たちの心はまだ繋がってる!」
「うるさい! 知ったこっちゃないわ! だったら、だったら何だっていうのよ!」
「こんなの間違ってるってことだよ! こんなやり方は最善でも確実でも何でもない! ただ、千鳥ちゃんが苦しいだけだ!」

 力の限りに訴えかけると、千鳥ちゃんは唇を噛み締めて私のことを力強く睨んだ。
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