普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第0章 Dormire

60 嫌な予感

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 以前この町にやって来たのは、もう七年半前のこと。
 しかしそれでも、林と半分混じったようなこの自然に溢れた町に、大きな変化は見られない。
 国外れにある田舎町。貧しく、人もそう多くないけれど、それでも活気のある町。

 そういった雰囲気は、以前からさして変わっていない。
 けれど何故だかとても妙な気配を感じて、私の心をざわざわと騒がせた。
 こののどかな田舎町の光景の中に、私は一体何を感じているのだろう。

 暖かな日差しが注ぎ、林の木々の緑が光り、優しく流れる風は柔らかい。
 陽気な昼下がりの町並みは雰囲気だけならば穏やかで、とても居心地が良さそうだ。
 活気に溢れた人々の声や、無邪気に遊びまわる子供たちの声が聞こえてもおかしくない。

 けれど、そんな声が聞こえてくるどころか、誰一人として姿が見えなかった。
 少なくとも、町外れの辺りには人っ子ひとり。

「あれ、どうしたんだろう……?」

 よそ者の私が気付いたのだから、住人の二人が気付かないわけがない。
 町の中に足を踏み入れてすぐ、ホーリーは足を止めて首を傾げた。

「何で誰もいないんだろう。今日何か集まりごとあったっけ?」
「いや、覚えがないな。でも妙だなぁ。静かすぎる」

 キョロキョロと辺りを見回すホーリーと、顔をしかめるイヴ。
 いくら田舎の貧しい町とはいえ、昼間からこうも閑散としてるのはおかしいと、流石の私でもわかる。
 以前ここに訪れた時は、都会のように人が密集していなくとも、視界の中に人がいないことはそうなかった。

 なんとなく、本当になんとなく、嫌な予感がした。
 この静けさが、昼間なのに夜中のような無の音が、妙に心を揺さぶる。

「まぁ、ここで突っ立ってても仕方ないか。奥に行ってみよう」

 少し訝しげにしながらも、イヴがそう口を開いた。
 ホーリーは直感的に不安そんな表情を浮かべたけれど、そう促すイヴの手を握って頷く。
 私はいい知れない予感を感じつつ、しかし確証はないから口にはできず、やはりイヴに倣うしかなかった。

 でも、単なる思い過ごしという可能性は大いにある。
 昼間だからといって必ずしも賑わっていなければならないわけではないし、それこそ突発的な集合があったのかもしれない。
 ただ周囲に人の姿が見受けられなかったから、というだけで不安がるのは些か早計かもしれない。
 そう思いたいのだけれど、私の心が、あるいはそこに宿る神秘の力が、何か特殊な感覚を捉えている気がして……。

 私たちは少しばかりの不安を胸に、町の奥へと向かうことにした。
 二人は少し前までの町の賑わいを知っているのだろうから、突然の変容ぶりには私より戸惑っているはず。
 けれど、ただでさえ不安を抱えている私を気遣ってか、彼女たちは笑顔を作って私の手を引いた。

 しかしそれからいくらも進まない間に、町の奥の方からワァッと大勢の人の声が上がるのが聞こえた。
 今さっきまで何も聞こえなかったのが嘘のように、沢山の人の声が急に飛び交い出した。
 それは歓声のようで、でもどこか張り詰めたような色を孕んでいるような気もする。

「やっぱり集まってたんだ! なんかおめでたいことでもあったのかな!?」

 訝しむ私を他所に、ホーリーは声を聞いて安堵の笑みを浮かべた。
 不穏な緊張から安心に引っ張られて、気持ちが楽観な方向に転んでいる。

 いやもしかしたら、この不安は私だからこそ感じられるものなのかもしれない。
 だって、この声が聞こえるようになった瞬間から、何か嫌な予感、感覚が一層強くなったように思えたから。

「もしかしたら旅芸人でも来てるのかもね。みんな集まっているのなら調度良いし、機嫌が良ければ尚更良い」

 やはりイヴも、私のような危機感を覚えてはいないようだった。
 先ほどまでの緊張感はなく、いつも通りの緩んだ面持ちに笑みを浮かべている。

 そんな二人を見ていると、私が感じていることが間違っているのかと思ってしまうけれど。
 でもこの心と肌で感じているこの感覚は、はっきりと私に何かよくないものを伝えている。
 それがあるから、聞こえてくる人々の声は、とても明るいものには聞こえてこない。

 私だけ一人、嫌な予感が全身を駆け抜ける。
 その正体が説明できないのがもどかしく、でも心と体が拒絶感を示す。
 そうこうしている間に、二人は顔色を戻して向かう足を早めた。

「ま、待って、二人とも……なんだか……」
「大丈夫だよドルミーレ。私たちがついてるから。みんなの前で私たちが、ちゃんとあなたが良い子だってこと、証明するから!」

 私の手を引くホーリーは、私の上げた声ににこやかにそう答えた。
 私が戸惑いは、人間の前に出ることに対してだと思っているのだろう。
 意気揚々と進んでいく彼女には、私が今感じているこの町に対する嫌な予感が伝わらない。

「そうではなくて……言葉にはできないのだけれど、とても嫌な感じが……」
「昔みたいな酷いことは、絶対言わせやしないさ。私たちの大切な友達を、もう誰にも否定なんかさせないから安心して」

 私自身がこの予感を理解しきれていなから、うまく言葉にできず、全く伝えることができない。
 私を気遣ってくれるイヴの言葉が、寧ろ苦しく思えてしまった。

 町の奥、声がする方には行ってはいけない気がする。
 そこにあるものと対面してはいけない気がする。
 けれどその感覚には全く根拠がなくて、二人を止める力にはなり得ない。

 私はポツリポツリと中途半端な言葉を並べながら、二人の先導に従うことしかできなかった。
 進んでいくにつれて嫌な予感が増し、肌にピリピリと刺すような感覚を覚える。
 心に鳥肌が立つような、そんな寒々しい気配が染み渡ってくる。
 けれど私は、私のことを想ってくれている二人を止めることができず、ついていくことしかできなかった。
 真に二人のことを思えば、何が何でも止めるべきだったのかもしれないけれど。

 私たちが、巨木のある町の中心地に迫った時、人々の声は明らかに悲鳴になっていた。
 その元に訪れた私たちが見たのは、町に住む人間たちが、何か黒くておぞましいものに襲われているところだった。
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