パンパカパーン! で始まった私の異世界ライフ

拓海のり

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24 旦那様のところに戻りました

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 一方、後に取り残された二人はといえば、呆然としながらも嫁の帰りを待っていた。龍王が残した従者が懇切丁寧に龍の番について説明したのだ。

「俺、お前がいてよかったよ。俺ひとりじゃあどうなっていたか。メイにだって、ろくに話しかけもできず、話しても嫌われるばかりになりそうだったし」
「私もお前がいてよかった。私のところに来てもらっても兄嫁や母上に虐められるだけだし、王都に置いておけば浮気で好色な王族連中に何をされるか」
「あいつらどうしようもないな」
「龍王に目を付けられたのはいいことかもしれんな、誰にも手出しできなくなる」
「それもそうだな……」
「それにしても長いな一週間」
 そして二人は顔を見合わせて溜め息を吐いた。

 二人の旦那様がそんな風にして待っていてくれたことを、私は後で聞いたのだった。


  ◇◇

 そして待望の一週間が過ぎた。
 龍王様は布のかごに大人しく収まっている土人形を見る。
「この者たちの名は何と申す?」
「はい、こちらからぼんちゃん、ぬいちゃん、ふわちゃん、ぶいちゃんでございます」
「そうか。では余からそなたたちに使命を与える。ぼん、ぬい、ふわ、ぶい、我が番を守れ、危機が迫ればすぐに余に伝えよ」
『ぽぎ』『ぺょ』『ぷい』『ぴっ!』
 四人の土人形たちは畏まって拝命した。

 この龍王様に攫われる以上の危機があるのだろうか。私は二人の夫に嫌われて、捨てられるのではないか。戻れる場所があるのだろうかと、戦々恐々として辺境に帰ったのだ。

 ごうごうと風を纏って龍王様が夫の待つ屋敷に飛ぶ。私を連れて二人の夫の前に現れた龍王様はにこやかに言った。
「綺麗に修復してさらに感度を良くしてやったぞ」
 龍の発情期は終わった。
「また来る」龍王様は満足して帰って行った。


 エドモンとジョゼフはちゃんと待っていてくれた。私に愛想を尽かして追い出されるかと思ったのだけれど、屋敷に帰って連れて行かれたのは三人の寝室だった。

「何でここなのですか? 私はてっきり離縁されるものかと……」
 悲壮な覚悟で帰って来たので、肩透かしを食らった気分だ。
「まあまあ、俺たち辛かったんだぞ」
 そう言いながら龍王様から頂いた天女の羽衣風の衣服を脱がすエドモンとジョゼフ。
「さあ龍に愛された体を味わって、いや、慰めてやろう」
 二人がかりで組み敷いて、あちこち確かめるように触りまくる。
「人間にとって龍とは神のようなものだ」
「その龍に愛され祝福された身体を、夫である我々はたっぷり味わう権利がある」
 コイツら……。

 嫌われなくて、追い出されなくて良かったのだけれど。
「お前はその後ろ向きな考えを直した方がいい」と、また言われてしまう。
 でも慎重に各方面のことを考えた方がいいと思うのだけど、そうすると一歩が出ないわけで、よくこの世界に来ようと思ったな、私。

「いやーこのむっちむちのすべすべの抱き心地」
「お尻も胸も最高。そしてここ」
 こことは何ぞや。どこかで聞いたようなセリフを吐く二人。私の身体は具合の良い身体だったらしい。いやらしい身体だったらしい。抱き心地が良いらしい。その上、龍ちゃんが綺麗に修復してさらに感度を何とかって言ってなかったかしら。

 私はごく普通の人間だったはずだ。何でもかんでも中庸で飛びぬけたところのない人間。だが人間思いもかけないところに思いもかけない機能が備わっていたらしい。


  ◇◇

 改めて心配をかけた辺境伯家に、二人の夫と共にお詫びかたがた挨拶に出向いた。結婚式の時に集まった辺境伯領を守る領の重鎮方もまだ屋敷に残って顛末を見守っていた。

「やれ、無事に帰ってきて良かったわい」
「まさか聖女様が龍王様の番にまでなるとは」
「これで我らが辺境の地ネシェル・ラムラはこれから先、幾年にも渡って龍の加護を得て安泰を約束されるというものじゃ」
「器の広い聖女というものはよいのう」
「エドモンとジョゼフは嫁を大切にするんじゃぞ」

 何だかよく分からないが宴席を設けられ、二人の夫と共に祭り上げられ祝福を受けた。
「そう言えば王都の聖女様はどうなったのでしょう」
 そろっと聞くと、
「王太子殿下が王都に帰ったので、後を追いかけて帰ったようじゃ」
 何だか不憫で気の毒な答えが帰ってきた。


 その日は辺境伯家の城館に泊まった。翌日、旦那様方は辺境伯や領の重鎮たちとの会議に出た。
 アガット教官は結婚したヴァランタンと新婚旅行に出かけていて、私はエドモンの妹のアニエス様が来て、土人形と一緒にのんびりお茶をした。

「わたくし、オーギュスト殿下との婚約が破談になりまして、どういう訳か今たくさん縁談が来ておりますの」
「まあ、破談になりましたの?」
「ええ、それはもうどうでもいいの。縁談がもう降るように来ておりまして、より取り見取りで──。それよりどう思います? 隣国のわたくしより一個下の王太子殿下からも縁談が来ておりますの」「まあ、凄いですわね。どんな方なのでしょう」
「それがね──」
 アニエス様のお話によると、どうも昔からのお知り合いのようで満更でもないご様子だ。

 この国のオーギュスト王太子とアニエス様はあまりうまくいっていなかったみたいだし、新たな縁談に向けて前向きになるのはいいことだと思う。
 私は旦那様たちに嫌われたらどうしようと心配していたし、とても前向きにはなれない。きっといつまでもぐずぐず思い悩むんだわ。

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