パンパカパーン! で始まった私の異世界ライフ

拓海のり

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13 異世界は安全ではない

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 やがて辺境伯家の軍団と合流した。
 そこには大勢の兵士を率いたエドモンの従兄という人もいる。オレンジ茶髪だがエドモンより更に大柄だった。
「無事だったか」
「相手の準備不足だな」
「それより、魔物の引きが強いが」
「先程ヒュース・アグリオス・マーグヌスがプルを従えて襲ってきた。一応マジックバッグに収納してある」
 直訳するとヒュース・アグリオス・マーグヌスは大イノシシでプルがうり坊だそう。
「よく無事だったな」
「それも引きが強いのかもしれんな」

 イノシシたちは食料にするとかで、ジョゼフが魔道具のマジックバッグに回収した。身の内の倉庫じゃなくて普通に革の丈夫そうなバッグだ。倉庫一個分くらい入るらしいが、非常に高価なのだという。

 魔獣は食料になるんだな。死んでもそのまま死体が残っていた。最初に出た形が歪で触手の生えた訳の分からないモノは魔物だと聞いた。死んだら黒い靄になって消えて、魔石が残された。

「魔物と魔獣はどう違うんですか?」
 近くに来たアガット教官に聞けば「魔石に魔素や瘴気が付着して何かの意思を持ち動きだしたのが魔物で、生き物に魔素や瘴気が取り憑いて体内に魔石を形成したモノが魔獣だ」と説明してくれた。
「まあ、皆まとめて魔物と云うが」
 アガット教官は肩をすくめて大男たちの所に行く。

 ジョゼフとエドモンと従兄のヴァランタンとアガット教官が話している。背の高いガタイの良い男たちが集まると迫力がある。
「今回かなり伏せて秘密裏に事を運んだからな」
「ただの渡り人にして、一般人の魔力充填係にして」
「さあ、感付かれたからには急ごう」
 さっぱり話が見えない。


  ◇◇

 警備を辺境の兵士たちに任せて、エドモンとジョゼフとアガット教官は馬車に乗り込んできた。すると土人形たちは『ぽか』『ペい』『ぷき』『ぴぎ』と話しながら座席の後ろの荷物置き場に移動する。

「一応メイに知っておいて欲しいのだ」
 アガット教官が先にそう言って私に覚悟を促す。
 ジョゼフとエドモンが二人がかりで説明を始めた。
「実は最近、召喚した異界人が何人か殺されている」
「ちょっとー、そんな話は聞いていません」
 この世界はちっとも安全な所ではないようだ。

 確かに『ハイそれまでヨ』とは聞いたけれど、それは魔獣がたくさんの冒険者みたいな生活をした場合ではないのか。しかし、今現在の私の状況はいつでも『ハイそれまでヨ』になりそうな危険がいっぱいな状態だった。

  ◇◇

「この国ではない。しかし、近隣の国であった」
「殺されたんですか」
「ミスリヤ山脈の向こうの国で召喚されたのは若い十代の女だったそうだ。近隣の国は男だった。少し前の話だ」
「何でですか」
「女の方は保護した教会の言うことを聞かず、王子を誑し込んで、その婚約者である公爵家の令嬢の怒りを買って処刑されて死んだ」
「近隣の男は能力が強過ぎて、魔龍を倒した後は他国が欲しがって謀反を企て、危険人物と指定され、この世界より放逐された」

 つまり、婚約者のいる王子様と仲良くなって、その婚約者の家の怒りを買ったとか、チートで好き勝手して危険視した誰かにこの世界から追放されたとか?
 何となくありそうな話であるが。

「異界人って、あちこちバラバラに住んでいるんじゃないの?」
「そうだ。移民にしても召喚にしても、基本同じ国に住むことはないのだ。それに召喚は人選に手間がかかるし、本人の承諾も要るので更に手続きに時間がかかる」
「今回は久々の召喚になる。移民局も慎重に送り込んできた」
 確かに何回も夢を見たし、承諾のサインもしたけれど。

「今回来るのは女性だと聞いたんで、私ら貴族の跡取り以外で婚約者のいない者が呼ばれた。召喚者を守り定着させる為の相手が必要だからだ。度重なる失敗で、我々はもはや見捨てられてしまう瀬戸際なのだ」

 何かお見合いみただけれど、それらしいことはなかった。いきなり目の前にいてガキとか坊主とか言われたけれど。
 私の顔が納得のいかない顔になっていたのか、エドモンが私の頭をポンポンと宥めるように撫でる。
「お互いに気に入らなければ他の者に話が行くし、軽く接触するだけなんだ」

 よく分からないが鍛錬の時かなりの男性がいたけど接触してきたのはこいつ等だけだったように思う。
「そりゃあエドモンとジョゼフに勝てる奴はいないだろう」とアガット教官が暴露した。

「私は気に入ったんで立候補した」
「俺も気に入ったんで立候補したら、こいつもいたんだ」
「無理に諦めさせるより、両方と引き合わせて成り行きに任せるのがこの国のやり方なんだ」
 アガット教官がすました顔で無責任なことを言う。まるで犬猫みたいだな。
「まあ上手くいったからいいのだ」
 とてもいい加減なやり方のようだ。
「三人でどうするんですか?」
「普通に三人で結婚している奴もいるぞ」
 もっといい加減だった。

「道中の戦闘で確信したが、魔法の威力が上がっている」
「反応も早いし呪文も短い」
「よかったよかった」
 何が良かったんだろう。何度も危険な目に遭っているし、結婚する前から未亡人とか嫌なんだが。

「お前、その後ろ向きな考え方は直した方がいい」とエドモンに言われてしまった。ジョゼフも大きく頷いている。後ろ向きなのだろうか、慎重だと言って欲しいが。突っ走る人がいたら、引き留める人がいてもいいんじゃないか。この二人だと止められなくて引きずられそうだけど。

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