パンパカパーン! で始まった私の異世界ライフ

拓海のり

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15 領都バーレイド

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 辺境と言っても古くからある山沿いの国境の街だ。辺境伯領に入ると街道は整備され馬を替えたり宿や店のある駅逓がある。辺境伯軍の迎えもあって、何かに襲われることもなく領都バーレイドに着いた。

「辺境には魔物が出ないのでしょうか」
「出るぞ」
「魔の森もあるし」
「そうですか」
 何だか一番安全だったような気がする。お陰でぱぴぷぺぽ戦隊合体ができなかった。もっと練習をしたいところだ。
『ぽぺぷぴー!』
 土人形たちにも異存はないようだ。

 辺境領に入ってから、エドモンとジョゼフは元気に馬車の外に出て騎馬で走り回っているので、私は人形たちを入れる袋を縫い始めた。側で見ていたぬいちゃんが手伝ってくれる。
 チクチクチク。

 マチを作って、底を作って、浅くして、フリルとリボンで可愛くして、持ち手は綿を入れて三つ編みにして、可愛い布製のかごが出来上がった。
「さあ、入ってみて」
 土人形たちが籠の中に並んで座る。
『ぽ、ぺ、ぷ、ぴ』
 可愛い。喋らなければ、動かなければ本物の人形みたいだけれど、喋って遊んで動いていてくれた方がいい。忘れないように魔力の充填をしておかなければ、この世界はいきなりが多いからね。


 領都バーレイドの街は小高い丘の上にあり、その真ん中に頑健な城塞がある。街の周りはぐるりと城壁が取り囲んでおり背後は山で南にマロム川が流れている。中心にある辺境伯の城館の周りもぐるりと城壁が取り囲んでいて、マロム川の支流が城館を囲むように流れ頑丈な橋がいくつか架かっている。


 領都バーレイドは王都と違って質実剛健な気風で華やかさはないけれど、広く賑わっている。
 官舎や家臣団の館が中心にある辺境伯の城館を囲むように建っていて、真ん中に威容を誇る城館が広々と建っている。馬車はそのまま城館の奥の一族が住む立派な屋敷が建ち並ぶ一角の一つに入ってゆく。


「ここが我々の新居だ」
 エドモンが広い敷地に建つ立派な屋敷を指す。何ということだ。もう新居があるとは。まだ返事もしていない筈だけど。

 駄々広い屋敷に大勢の召使が出迎える。
「彼女が俺たちの妻のメイだ。皆よく仕えるよう」
 うわあ、もう妻になっている。
「「「ははーーー‼」」」
 一斉に頭を下げられると、どうしていいか分からない。
「よろしくお願いします」と在り来たりな言葉をかけた。

 応接室に通されてお茶になった。何となく落ち着かないのは赤毛の美女アガット教官がいない所為だ。何か助言が欲しい。
「アガット姉さんの結婚式の時に、一族と引き合わせる」
 アガット教官は迎えに来たエドモンの従兄ヴァランと結婚する。女性だが背が高くて筋肉もあり、とても強そうなアガット教官とお似合いの男性だと思えた。

「私の叔母が先代辺境伯の嫁なので、その時に引き合わせよう」
「エドモンとジョゼフは親戚なの?」
「叔母は後添いなので血は繋がっていないぞ」

 ジョゼフの言葉に納得する。二人とも大柄だが似てはいない。エドモンは鍛え抜かれた筋肉がある。ジョゼフも筋肉はあるけれど細マッチョというか、どことなくシュッとした感じだ。

「先に婚姻の書類手続きをして、準備ができ次第、式と披露宴を行うことになる」
「そういうわけでメイ、ここにサインをして」
 ジョゼフが丸めてある羊皮紙を広げた。見ると婚姻届けで、すでにジョゼフとエドモンのサインがしてある。いや、本当に三人で結婚できるんだな。本妻とか側女とかそういう区別はないし平等で対等だ。

「私と結婚なんかできるんですか? 私は正真正銘一般人ですよ」
「辺境の者はみんな俺たちがメイと結婚することを望んでいるし、俺たちも大事にする」
「ええと二人はお貴族様なんですよね。エドモンは辺境伯の次男でジョゼフは公爵家の三男で――」
「メイは召喚で来た異界人だ。何の問題もない」

 問題ありありのような気がする。後で侍女らに寄ってたかっていびられたり、屋根裏か離れに放り込まれたり、彼らの女性問題が発覚したり、実は私はお飾りの妻として来たのだったり、とかになったりしないのかな。小説の読み過ぎだろうか。

 しかし、私の目の前に羊皮紙を広げて、手にペンを持たされてじっと見守られると圧が凄くて、一般人の私にはもう抵抗も及びもつかないわけで言われるままにサインをした。

 私がサインをするとジョゼフとエドモンが確認して頷く。ジョゼフが書類を丸めて筒状の入れ物に入れ、魔法でどこかに送った。
 私が首を傾げて二人を見ると「「移民局だ」」と二人が答える。
 移民局って……、そういえば王都を出る前の日に来たパンパカパーンの手紙も移民局からだった。あの親切な移民局の事務員さんが言っていたな。

『移民局は独立組織ですのでヤスダ様は移民局に守られています。国に口出しはできません』

 そりゃあ移民局には報告した方がいいだろうけれど、国に報告しなくてもいいのだろうか。そこまで考えて王都を出る前に、王宮にいきなり拉致られて、まるでゴミのように、ポイと捨てられた仕打ちを思い出した。
 アレに比べれば百万倍もマシだ。比べるべくもないけれど。

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