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8歳
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しおりを挟む僕もフレーミヒ卿を真似して相手に『よろしくお願いします』と言ってあげる。相手も微笑んで返してくれたけど。さすが宮廷魔法師。物腰柔らか。ふわふわした中にも自信を感じる。
こういうところ見習わないとなぁ。
《はじめ!!!》
相変わらず同じような魔法を繰り返しで使う。防御魔法と空間魔法を組み合わせたものを自分の周りに張って向こうからの一手を防ぐ。
ふわふわしてるから魔法もふわふわしてるのかと思えば一手一手が重い。ルディタイプだ。魔力の量で押し勝とうとしてる。さっきのフレーミヒ卿の方が繊細で僕好みだ。
確かに魔力の重さといい量といい一流だよ。でもね、その分隙はできるんだよ。僕の自論だけどこういう力任せな行為ってね隙を見つけられたら一瞬で終わるんだよ。
あの魔法使うレベルでもなかったな。
期待はずれだ。
無詠唱で風と闇と光魔法の槍を生み出してそこに突破効果を含める魔法を重複でかける。こんだけあれば何本かは魔法を貫いて本人を穿つだろう。
おぉ。全部止められた。突破効果の魔法を込めたのバレた?
まぁいいや。次の魔法も準備しよ。初級魔法を使って次の魔法のための魔力を練り上げる。
おっと、その前に足止めしとかないと。
闇魔法で相手の影を増幅させて闇の中に落とす。片足だけ触れちゃって拘束されてたけど足場を作ると同時にこっちにも魔法を打ってくる。さすがだね。
それはさすがに空間魔法と一緒に発動できないから風魔法でプロテクションを唱える。
よし、できた。
《プルアラル・ライトニング・ライトカッター》
僕を中心に雷が走る。それで逃げ場をなくてしてライトカッターって相手を狩りに行くって言う寸法。
土煙が立ち昇ってお互いを確認できないくらいになった。風魔法の探知魔法で周りを警戒しながら風邪で土煙を吹き飛ばす。
吹き飛ばした瞬間目の前に迫ってた杖。
《アースランス》
あ、ヤバい。使おうと準備してた空間魔法と咄嗟に使おうとした防御魔法が運良く合わさって使い慣れた反撃魔法ができあがる。でも間に合うかも分からない。
僕の探知魔法に引っ掛からなかった隠匿魔法と探知魔法。さすが補助魔法が得意な土魔法はレベルが違う。苦手な風魔法も練習しないとね。
ゆっくりと杖から放たれるように見える土の槍。僕の魔法は間に合ったのかな。間に合ってなかったら大衆の前で無様を晒すことになる。
本当にゆっくりと見える。走馬灯ってやつかも。僕も重心が後ろにあるからこのまま行けば無様に転ぶんだろう。せめて踏ん張りたい。魔法はもう発動してる。次にすることは自分の魔法を信じて転ばないように踏ん張ることだ。右足を後ろに持ってきて踏ん張る体制をとる。
さぁ来てみろ。もう防ぐ手もなにもない。
最後までみとどけてやる。目をかっぴらいてアースランスを目に焼きつける。
向こうも必死なのだろう顔が強ばってる。
僕の風魔法が土煙を吹き飛ばす。それと同じくらいの時間でアースランスが放たれ、僕と相手の間だけ土煙が消え去った。もちろん僕の弱い風魔法も意味をなくす。
僕の鼻先にまで迫った槍は先から消えて相手の後ろに現れ始めた。
やった。
僕の魔法の勝ちだ。
防御魔法を重ねて次の衝撃に備える。相手は気づいてない。やっぱり反射神経は若い子の特権だね。
《ダークスワンプ》
絶対に逃したくない好機。詠唱もして万全を期す。
ガクンと相手が崩れ落ちた真横をアースランスが頬を切りつけながら床に刺さった。
僕も無詠唱で手からダークランスを出して相手の首元に突きつける。向こうは僕の影魔法に囚われてるから避けようがない。僕からもすぐに打てるよっていう意思表示。
「…参りました。」
砂埃だけが舞う空間に響いたその声。すぐさま審判から判決が下った。
『シルヴェスター公子様の勝利!!!』
良かった…。圧倒的に経験では負けてた。あの砂埃の中で僕は合同するって判断が下せなかった。周りに何があるか分からない中で動くなんて生物として恐怖だ。
だけど相手は動いた。経験が本当に違う。反省することが多いな。
「いい経験になりました。ありがとうございます。」
そう告げて背を向ける。余裕がなかったな。魔法塔は宮廷魔法師よりも実力主義だ。
気を張らないと。むしろ盤上にたったらあの魔法を撃とう。そうしないと負ける。実感した。余裕ぶってる暇なんてなかった。僕もまだまだだ。調子に乗ったな。いい経験になった。
「公子様おかえりなさい。」
うるさい。
「ただいま。」
「勝ちましたね。公子様のセンス勝ちですね。」
「今回のは運ですよ。あと少し反応が遅れていたら負けていたのは僕でした。」
「それも含めてセンスです。あの人は踏み込むことを選んだ。魔法の出力か公子様より幾段も遅かったのが敗因でしたから。センスの問題ですよ。」
ならいいけど。僕としては買ったのに負けた気分。確実な勝利が欲しかった。フレーミヒ卿も含めて運だけで勝った気がする。
テオ様を見上げたら顔を蒸気させて煌めいた目で見てくれてた。
あー。落ち込む。勝ったけど思い通りの勝利じゃないんだよなぁ。
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