推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

98 番外編《皇宮でのお茶会 1》

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皇帝陛下から手紙だと言うから何かと思えばお茶会に来ないか?というもの。テオ様もつれて来いって。あのパーティの後に送ってくるってことはテオと皇子たちとの仲も深めたいってところだろう。
2つ下の第2皇子も聡明な人だ。あまり気を抜かない様にしないと。
テオ様は緊張しまくるだろうから気が抜けるような話をしてあげたいな。ルディとも相当仲良くなってるから2人がかりでフォローしてあげないと。




陛下が準備してくれた馬車に乗り込むテオ様は本当にかっこいい。目が痛いくらいの煌めきを持った馬車に真っ黒なテオ様。めちゃくちゃ好み。写真撮りたい。でもそんな機械はないから目に焼きつける。いつか絶対に写真機作るんだ。それでテオ様を撮りまくる。
テオ様部屋作ろうかなぁ。ありだよね。ストーカーみたいになるから絶対にテオ様を入れてあげられないけど。

僕とテオ様は相変わらず色違い。
似たような色ばっかりだけど少しずつ柄だけが違うのが沢山ある。家の色と僕らの髪色は一緒だからいつも黒基調。それに目の色を合わせてるだけ。薄い黒とのチェックとかストライプとか。そういうオシャレしかできない。
だから義母様は黒が嫌いなんだよね。あの真っ赤な赤に見劣りしないのは黒だと思うんだけどなぁ。
実際に黒基調で宝石やスカーフ、刺繍を赤にしているテオ様は似合いすぎて目が潰れそう。ゲームで見てたものが実際に自分の目で見られるなんて嬉しすぎる。

差し出されたアルフレートの手を掴んで馬車に乗り込む。
テオ様と二人っきり~。幸せ。

テオは相変わらず緊張してるみたいでカチコチ。僕らしかいないのに皇族の馬車ってだけでも緊張するのかな。

危ないけれど馬車の中でテオ様の隣に腰掛ける。こんな広いのにこんな近いってちょっとドキドキしちゃう。

「緊張をほぐす魔法使ってあげようか?」

「そんなものあるんですか?」

ないけど、気の持ちようって言うしね。言いくるめたら大丈夫でしょ。

「僕がテオだけに使える魔法だよ。手を出して。」

素直に手を出してくるのは本当に可愛い。どれだけ僕を信頼してるんだろ。可愛いね。

ただの魔力をテオ様に送り込む。少し暖かく感じるくらいでなんの影響もない。よく平民の中では親が子を落ち着かせるためにやるらしい。剣術の先生に雑談の中で教えられた。

「落ち着いた?」

「少しだけ。」

かわいい。でも本当に落ち着いたらしく肩の張りもなくなってる。なんかパットでも入れてるんじゃないかと思うくらい肩が上がってたからね。

街並みも変わってきた。そろそろ着く頃かな。

「テオ、なにも心配することはないよ。」

「ち、チョコレートケーキ渡します。」

ダメだな。またカチコチになった。チョコレートケーキは確かにテオ様から渡してねと言ったけどね。この調子じゃ落としちゃいそうだな。

「それはそうだけどね。渡すのは皇宮のメイドだよ。今回の目的を言ってみて。」

「チョコレートケーキの宣伝と皇族の方々との顔合わせです。」

「そう。それだけでいいの。着いたらメイドにチョコレートケーキを渡していつもしていることをいつも通りにすればいい。」

「か、会話…不快にさせたら…。」

「大丈夫。僕が会話は回すから。」

「あにうえ、大丈夫です。大丈夫。」

僕は大丈夫だよ。いつも好き勝手してるし。1回死んだら怖いことって減るんだなって実感してるところだよ。
逆にテオ様は全然大丈夫そうに見えないけど。

チョコレートケーキ本当に落としそうだな。

馬車も止まっちゃった時にはテオ様まで止まった。こればかりは慣れだよね。無理やりにでも定期的に陛下立ちに合わせる機会を作ろうか。

「テオ、行くよ。」

「は、はい!」

開かれた扉は相変わらずキラキラしてて目に悪い。僕のことをよく知ってる陛下付きの執事が手を差し出してきた。大きくなりたいものだよね。ほんと。魔法使って降りてもいいけど皇宮でそんなことしたら何言われるかわかんないし。あーあ。

テオ様も僕の真似して降りてきた。大丈夫かな。

「こちら、陛下に持ってきたのですが……よろし…ければ……。」

黙っちゃった。執事もテオ様の言葉を待ってるせいで何も喋らない。どこもかしこもアルフレートみたいに無礼な奴らばっかりじゃないからね。これが普通だ。

それにしても全部吹っ飛んだ感じかな。どうせ執事なんだし適当に渡せばいいのに気を使うからだよ。

「良かったら食べて。新しく義弟に任せる店で出すものなんだ。」

「これは…ありがとうございます。後ほどお茶会にお持ち致します。」

「お、お気ずかいなく!」

テオ様本当にカチカチだな。ちょっと顔覗き込んで大丈夫か聞いたけど大丈夫としか返出てこない。大丈夫じゃないよね。それ。

手を繋いで少しだけ魔力を流す。

「大丈夫だよ。残りはあと一つだ。僕がいる。大丈夫だよ。」

「はい。兄上。」

ギュッと僕の手を握りしめてくる。僕からしたら一生このままでいいけどさ…テオ様的にはいいのかな。また後で恥ずかしくなりそうだね。

「シルヴェスター公子様方。こちらでお待ちを。」

通されたのは皇宮には珍しい落ち着いた色合いの庭。
皇后宮なら華やかな鼻が咲き乱れて目に悪いけどここは悪くないな。僕にとっても好ましい色合いだ。あと匂いも爽やかでいい。柑橘類なのかな。今の時期は咲かないし、ここも暖かいから魔法で管理されてるのかも。

「相変わらずすごいね。火魔法なのかな。」

「火魔法はここまでできるんですか?」

「魔法なんてイメージの世界だからね。風魔法と火魔法の組み合わせとか。色々できるよ。水と風と火で雷を呼び出すこともできるしね。」

「凄いですね。」

まぁね。基本的に化学の代わりに魔法が発展したような世界だからね。中世を元にしてる癖に妙に現代的なこともある。それを無理やり繋げることはだいたい魔法と言えば解決される世界。
ある意味すごいと思う。今思えばがばがば設定なんだよね。

「ひとりじゃ出来ないのが難点だけどね。」

「全くだな。もっと楽にできれば色々と活用できるのだがな。」

きたなら来たと執事でも通してくれればいいのに人が悪い。
テオと一緒に立ち上がって一礼を陛下に向ける。

「「皇帝陛下にご挨拶申し上げます。」」

「あぁ。今日はよく来てくれた。クラウスの義弟とも話がしたかったのだがああも騒がしくては話にならん。」

「どこで聞き耳を立てる輩がいるか分かりませんから。ご英断だと思います。」

まぁ座れと元から座っていた椅子を指してくれたからテオと一緒に座る。ちょっとは緊張がマシになったのかな。唐突だったから緊張する暇がなかったのかもしれない。

「クラウスは相変わらず元気そうだな。クラウスの義弟よ。テオと呼んでもいいか?」

「は、はい!」

うん。まぁいいんじゃないのかな。
馬車の時よりのカチコチ具合からしたらだいぶマシだ。緊張してるテオ様も僕からしたら天使のように可愛けどあんまり緊張してたらテオ様が可哀想だからね。

「はっや。父上、お久しぶりです。」

ルディか。
最後は第2皇子か皇后陛下か。どうせ第2皇子と一緒に来るんだろうけど。

「「第1皇子殿下にご挨拶申し上げます。」」

「おぉー。ご苦労だったな。」

ルディが当たり前のように僕の隣に来ようとしたから僕も当たり前のように椅子を引いてあげる。
いつもお茶会の時はルディは陛下と僕に挟まれてるもん。

なのに陛下は僕の手を制して椅子を戻すように指示を出してきた。

「ルディ、お前はテオの隣に座れ。またクラウスと喧嘩するだろう。」

「まぁテオの方が相性いいからな。」

「それ誤解だよ。テオに気を使われてるだけ。」

僕が席に戻って逆に執事がテオ様の隣の椅子を引いた。陛下の向かい側。今回はどっちが上座かなんて決まってないような位置だから見ようによってはルディが上か。皇后陛下と第2皇子は荒れるだろうな。

「兄上、ルディ様も陛下の前ですよ?」

「2人が仲をそうやって確かめているのは分かるが程々にしてくれ。宮廷を何度も壊されては敵わん。」

この2人実は何も考えてなかったりして。落ち着きすぎでしょ。テオ様はともかく陛下は奥さんのことなんだから助けてよね。

「陛下、ご挨拶申し上げます。みんな早かったんですね。」

ほらやっぱりふたりで来た。仲良しだよね。ルディなんて睨むような目で悲しそうに口歪ませてる。起こるか悲しむかどっちかにすればいいのに。

陛下がまぁ座れと2人に言ったから僕とテオも2人にご挨拶。

「皇后陛下、第2皇子殿下にご挨拶申し上げます。」

「えぇ、ごきげんよう。」
「元気そうだな。シルヴェスター公子。」

テオ個人に挨拶はなしか。まぁいいや。腹立つけど。

「堅苦しいことはなしとしよう。我らとシルヴェスターの仲だ。テオ、お前も我ら一族の一員だ。これからもよろしく頼む。」

「は、はい!お力になることがあるのならなんなりと。」

「陛下、ちゃんと僕を通してくださいね。こんな可愛い弟に危険なことはさせられません。」


入れてくれたお茶に口をつけたところでチョコレートケーキをもって来てくれた。
タイミングを見てたのかな。あれ冷やしてないと溶けるから水魔法の使い手でも使ったのかもしれない。

相変わらず美味しい紅茶だこと。なんの茶葉だろ。僕のところのじゃないから輸入ものじゃないな。ってことは自国産?こんな味のあったっけ。それとも他国の貢物?そらなら下手したら巻き込まれるやつじゃん。

「この茶葉美味しいですね。貢物ですか?」

「相変わらずよく気づくな。友好の証だと送ってくれたものだ。」

ふぅん。どこか知らないけど飲んでいいのかな。茶葉でも悪いものもあるしあまり変なものをテオ様に飲ませたくない。

「少し個人的に調べたいのですがこの茶葉少量頂いてもよろしいでしょうか?」

「なんだ。貿易の話か?国同士でやることになるからシルヴェスターは噛ませられんぞ。」

「そうではなく成分を調べたく思います。とても美味しいものですので害がないか確認したいのです。」

「国同士の問題になるが…責任は取れるのか?」

それは僕への牽制?僕別にこの貿易に関わりたいなんて言ってない。宮廷に関わって仕事増えるのも嫌だからしないよ。まだね。

「あくまで個人的に陛下から頂いた茶葉を個人的に僕が調べるんです。国は関係ありませんよ。」

「…良かろう。帰りに持たせる。」

「ありがとうございます。」

いやそ~。

「毒探知に引っかからない時点でありえないだろう。」

そうじゃないよ。毒に引っ掛からない毒だってある。いい例がアルコール。この国でも許可されてるけど飲む度に毒探知の魔法具が警告ならしたらウザイじゃんね。

「違ぇだろ。お前、酒に毒探知かけてみろよ。かからねぇぞ。正直あれが何に対して反応してるのか分かんねぇ時点で信じるなよ。」

「兄上、お酒は毒ではありません。」

分かってないな。わざわざ喧嘩するつもりは無いから意見だけ言っとこ。僕も結論としては毒探知の魔法具を信用するなの方よりだもん。

「飲みすぎたら死にますよ。お酒が抜ける暇なくずっと飲み続ければ狂います。それはどうやっても毒ですよ。殿下。」

「極論だ。」

「でも事実だろ。」

なんでルディは誰に対してもこうも喧嘩腰なんだろ。第2皇子も喧嘩腰だけどさぁ。このふたり相性が壊滅的に悪いんだよね。僕とルディは馴れ合い。ルディとテオは高め合い。ルディと第2皇子はただの兄弟喧嘩。いくら皇帝の座を争ってるって言っても仲良くすればいいのに。

紅茶を啜って様子見。両陛下も同じような感じだしテオはちょっと萎縮してる。気にすることないのにね。

「兄上、飲んで大丈夫なんですか?」

「大丈夫だと思うよ。毒だったとしても蓄積して発現するものだろうし。それなら定期的に同じ量の毒を摂取する必要があるからね。1杯くらいは問題ないさ。」

「毒と決めつけるのは如何なものなの。」

「確かにそうですね。あ、新しく作った茶葉を持ってきたんです。よろしければ味見してみませんか?」

「お前これが狙いかよ。」

人聞きが悪い。好きなものをいつでも飲めるようにして何が悪いの?それにこれなら成分まで完璧に把握してるからテオ様にも飲ませたられる。
僕が使える風と闇、光魔法には探知魔法がないから錬金術具で詳細な成分まで分かるようにしたんだ。まだ土とか地形とか食べ物以外には使えないけどそれでも大きな進歩。土魔法の使い手に頼まなくてもこれ後できるなら大幅なコスト削減だもん。すごいことだよ。
まだ誰にも教えてないけどね。取られちゃかなわない。

「偶然だよ。テオがケーキを持ってきたからそれに合う茶葉を持ってきたの。僕がブレンドしたこだわりの茶葉だよ。」

「それは楽しみね。クラウスの紅茶の目利きは母親並みですもの。」

「母様と仲の良かった皇后陛下にそう言われると嬉しいですね。」







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