黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

212話 先延ばし

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スズナからの依頼でトレイとモーガンの2人と仕事をこなした翌朝。
いつも通り宿の部屋で朝の鐘と共に起きる。
今朝はエドガーとはそれぞれのベッドで眠っていた。

昨晩は帰ってきたのが日付が変わった頃で酒場も終わりなため酒をのんでいない。
女王との魅了に耐える訓練だが、俺は昨日もしっかりと耐えきり女王の部屋で数時間を過ごした。
女王も学習したのか俺に男をけしかけて男比べをさせる事はなく、ひたすら女の魅惑全開で誘惑してきたがなんとかしのぎ切った。

また帰ってきたら大変だったのだが、何日も連続で挑戦し続けている甲斐あってぼちぼち魅了の遇らい方や耐え方が身についてきている。

一方、魂への呪い対策については何も進んでいない。
魂と意識を混ぜる方法以外には思いついていない。
スズナにかけてあった姉ちゃんの加護も一体どうなってるのか考えてみたけれどさっぱりわからない。
呪いというのは強い意志の力であり、防御魔法では防げない。
それでも親父や姉ちゃんは魔法で呪いを弾く手段を持っていたのは確かだ。
こんなことになるのならちゃんと教わっとけば良かったと思うのだが当時の俺は魔法なんて一切使えなかった上に魔力量も普人族の平均より少し多い程度、他の俺の家族と比べると雲泥の差があって魔法は期待されていなかった。

やっぱり俺が頼れるのは氣だけだ。
もう俺の中では魂に意識を混ぜる手段をやってみるという事で決まっている。

現状、魂と意識は体の中で別々で存在していて、魂から生み出される魔力の流れによって繋がっていると推測している。
そして魂を守るために魂を氣で覆えば魔力の流れが切断されて意識との繋がりが切れてしまい、文字通り意識を失うのはこの間実験をしてわかった。

魂に氣を混ぜるというのは、氣で何か対象を相当深いレベルまで探っていくと、対象と意識の境界がわからなくなり混ざり合ってしまう現象を魂にたいして行うことだ。

本来なら意識を消失してしまうような現象だが、魂は魔力で意識と繋がっているし、別に混ぜてしまっても良くないかと思う。
上手くいけば、魂を氣で覆っても意識とつながりが切れることがないため、意識を失わずに行動できるのではないかと思う。

もし今のままの状態で聖女に挑み勝てるのならば何も問題ないが、正直厳しいだろう。
聖女自体が呪いの存在らしいので、遠距離からの解呪の魔法を浴びせ続けるという手段も取れるが、俺は水の魔法と家政魔法以外の練度が高くない。
浄化の魔法は得意だし、一応効果はありそうだが、本来の用途と異なるし、遠距離だと精度が下がりまくるから期待できない。
そもそも魔法で削り切れる相手じゃないだろう。
俺でも全然魔力が足らないと思う。

確実に呪いを払おうとするのならば俺が直接聖女に氣をぶつけに行って呪いを散らしていくほかない。
だが接近した事で聖女の呪いを魂に受けてしまえば終わりだ。
俺が教皇のように聖女のために人を害する存在となるだろう。
流石に嫌すぎる。

長くなったが、魂に意識を混ぜる事を試さずに死よりも辛い状況になるぐらいなら死ぬ気で試した方がいいというわけだ。
だけど、俺は行動する決心がつかないでいる。

俺はこの街で新しい暮らし始めたばかりだ。
毎日が充実している。
この街で出会った奴らとまだまだ長く付き合っていたい。
エドガーと一緒に冒険者になりたい。
銭湯も建てたい。
未練がいっぱいだ。
エドガーにはこの前はもう死ぬような事はしないと言っておきながら早速死にかねないような実験をしようとしている。
裏切ることに心苦しさがある。
そう思うと俺の決心が揺らいでしまっていた。

それでも時間は迫ってくる。
せめてギリギリまでは、そう思ってしまっている。
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