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花岡はるか2
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「落ち着いて。話を聞いてよ」
「これが、落ち着いていられますか!」
「……わかったわ。話を聞いてもらえないのなら、
今ここで叫ぶわよ」
「えっ?」
と同時に、人型植物は大きく息を吸い込んだ。
ま、まずい!!
「わかった! わかったから!
話、聞くから! 目立つことやめて!」
ただでさえ低家賃の物件なのに、お隣に聞こえちゃうからやめて!(泣)
「ふーー。やっとお話できるわね。
はじめましてご主人様。私は人型植物よ」
「それはわかったわ……。
でも、どうして私の姿をしているの?」
「それはもちろん、ご主人様が私を育ててくれたからよ」
何気に安直なのね…………。
まあ、いいわ。
「その、ご主人様っていうのはやめにしない? 私は、花岡はるかよ。
……あっ、もしかして名前まで同じだったり?」
「いいえ。私があなたなのは、姿形だけよ。
名前はないわ」
名前がないのは不便だ。
いつまでも「人型植物」とか「花?」とか呼ぶわけにもいくまい。
「じゃあ、あなたの名前は……。
そのまま花……ハナ、でいいかしら? 私のことは、はるかと呼んで」
「いいわ。よろしくね、はるか」
こうして、私とハナの奇妙な同棲? 生活が始まったのだった。
ハナに、種をくれた花屋のご婦人のことを聞いてみたけれど、
種だった頃の記憶はさすがにないそうだ。
花屋のご婦人に、話を聞けないものかと、
毎日帰宅途中で探していたのだけれど、彼女が再び現れることはなかった。
そして、数ヶ月後。
私は仕事のトラブル対応に追われ、忙しい日々を送っていた。
今日はやっと週末。
でも、飲まなきゃやってられない!
ということで、久々にお酒を買い込んだのであった……。
「あーーっ、もう疲れたーー!」
缶ビールをグビっと一口。
ハナの前で醜態を晒すのは、もう慣れっこだった。
「お疲れ様、はるか。やっと週末ね」
ハナは人間と同じように、微笑んで労ってくれる。
植物──と言っても人型だけど──にリラックス効果が
あるというのは、こういう事なのだろうか?
「そうよ、やーーっと週末よ。やーーっと休めるのよ」
そう言ってハナの顔を見上げると、なんだか嬉しそうである。
「休みの日は、はるかと一緒にいられるでしょ?」
と、微笑むハナ。
なんてカワイイことを言ってくれるんだ君は!!
「平日は私、はるかを待ってるだけしかできないから、退屈で死にそうだもの」
「ぐはっっ!!」
ハナの心無い一言に、私はダメージを受けた。
退屈で死にそうとか、私も言ってみたいよ!!(泣)
「あーあ。いいよね、ハナは。仕事しなくてもいいんだもんね」
ビール一口、おつまみ少々。
交互に口へ入れながら、愚痴をこぼした。
ハナは、「あらあら。また始まった」とでも言いたげだ。
文句も言わず、意見も言わず、ただ、話を聞いてくれる。
数ヶ月一緒に暮らしているうちに、
まるで双子の姉妹のように思っていた。
……まあ、ハナはあくまでも植物なんだけど。
以前、足が土に埋まっている部分はどうなっているのかと訊ねたら、
「根っこがある」と教えてくれたし、見せてくれた。
それに、食事は……といっても土にかけるんだけど、
やっぱり水だし、たまに植物用栄養剤をあげる。
足から上の見た目は人間でも、
残念ながらやはりハナは植物なのだ。
「ハナが人間だったらなー……」
ぽつり、と独り言のように言った。
「私が人間だったら?」
「一緒にお出かけしたり、美味しいもの食べて
美味しいねって、言い合えたりするじゃない?」
「本音は?」
「そして、たまにでいいから仕事で入れ替わってほしいいい!!」
「正直に言ったわね……」
「いいのよ、どうせ無理なんだから!
夢見たっていいでしょ?」
だんだん酔いが回ってきて、ゆっくりと机に伏せた。
「そうね……。たしかに、仕事を代わるのは無理ね」
……ん? どういうこと?
「私が、普通の人間のように暮らせる方法が、ないわけではないの」
…………えっ!?
机に伏せていた体を、勢いよく起こした。
今ので、一気に酔いが覚めた!!
「これが、落ち着いていられますか!」
「……わかったわ。話を聞いてもらえないのなら、
今ここで叫ぶわよ」
「えっ?」
と同時に、人型植物は大きく息を吸い込んだ。
ま、まずい!!
「わかった! わかったから!
話、聞くから! 目立つことやめて!」
ただでさえ低家賃の物件なのに、お隣に聞こえちゃうからやめて!(泣)
「ふーー。やっとお話できるわね。
はじめましてご主人様。私は人型植物よ」
「それはわかったわ……。
でも、どうして私の姿をしているの?」
「それはもちろん、ご主人様が私を育ててくれたからよ」
何気に安直なのね…………。
まあ、いいわ。
「その、ご主人様っていうのはやめにしない? 私は、花岡はるかよ。
……あっ、もしかして名前まで同じだったり?」
「いいえ。私があなたなのは、姿形だけよ。
名前はないわ」
名前がないのは不便だ。
いつまでも「人型植物」とか「花?」とか呼ぶわけにもいくまい。
「じゃあ、あなたの名前は……。
そのまま花……ハナ、でいいかしら? 私のことは、はるかと呼んで」
「いいわ。よろしくね、はるか」
こうして、私とハナの奇妙な同棲? 生活が始まったのだった。
ハナに、種をくれた花屋のご婦人のことを聞いてみたけれど、
種だった頃の記憶はさすがにないそうだ。
花屋のご婦人に、話を聞けないものかと、
毎日帰宅途中で探していたのだけれど、彼女が再び現れることはなかった。
そして、数ヶ月後。
私は仕事のトラブル対応に追われ、忙しい日々を送っていた。
今日はやっと週末。
でも、飲まなきゃやってられない!
ということで、久々にお酒を買い込んだのであった……。
「あーーっ、もう疲れたーー!」
缶ビールをグビっと一口。
ハナの前で醜態を晒すのは、もう慣れっこだった。
「お疲れ様、はるか。やっと週末ね」
ハナは人間と同じように、微笑んで労ってくれる。
植物──と言っても人型だけど──にリラックス効果が
あるというのは、こういう事なのだろうか?
「そうよ、やーーっと週末よ。やーーっと休めるのよ」
そう言ってハナの顔を見上げると、なんだか嬉しそうである。
「休みの日は、はるかと一緒にいられるでしょ?」
と、微笑むハナ。
なんてカワイイことを言ってくれるんだ君は!!
「平日は私、はるかを待ってるだけしかできないから、退屈で死にそうだもの」
「ぐはっっ!!」
ハナの心無い一言に、私はダメージを受けた。
退屈で死にそうとか、私も言ってみたいよ!!(泣)
「あーあ。いいよね、ハナは。仕事しなくてもいいんだもんね」
ビール一口、おつまみ少々。
交互に口へ入れながら、愚痴をこぼした。
ハナは、「あらあら。また始まった」とでも言いたげだ。
文句も言わず、意見も言わず、ただ、話を聞いてくれる。
数ヶ月一緒に暮らしているうちに、
まるで双子の姉妹のように思っていた。
……まあ、ハナはあくまでも植物なんだけど。
以前、足が土に埋まっている部分はどうなっているのかと訊ねたら、
「根っこがある」と教えてくれたし、見せてくれた。
それに、食事は……といっても土にかけるんだけど、
やっぱり水だし、たまに植物用栄養剤をあげる。
足から上の見た目は人間でも、
残念ながらやはりハナは植物なのだ。
「ハナが人間だったらなー……」
ぽつり、と独り言のように言った。
「私が人間だったら?」
「一緒にお出かけしたり、美味しいもの食べて
美味しいねって、言い合えたりするじゃない?」
「本音は?」
「そして、たまにでいいから仕事で入れ替わってほしいいい!!」
「正直に言ったわね……」
「いいのよ、どうせ無理なんだから!
夢見たっていいでしょ?」
だんだん酔いが回ってきて、ゆっくりと机に伏せた。
「そうね……。たしかに、仕事を代わるのは無理ね」
……ん? どういうこと?
「私が、普通の人間のように暮らせる方法が、ないわけではないの」
…………えっ!?
机に伏せていた体を、勢いよく起こした。
今ので、一気に酔いが覚めた!!
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