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花岡はるか5
しおりを挟む「な、なによ、あなた!?」
ハナは以前、このご婦人の事を知らないと言っていたけど、本当に知らないようだ。
ご婦人はちらりとハナを見て、私に向き直った。
「ごめんなさいね。この子は失敗作みたいなの。私の方で、回収させてもらうわ」
「失敗作……?」
「たまにあるのよ。人間になりたいとか、自我を持ってしまう子が育ってしまうの。危険だから、私が連れていくわね」
そう言って、ご婦人はハナの腕を掴んだ。
「いやだっ! 離して!」
「だめよ。あなたはあくまでも人間を癒す植物なの。人間に危害を加えてはいけないのよ。それなのに……あなたは過ちを犯した」
「知らない! そんなこと、知らない!」
ハナは、まるで駄々をこねる子供のように、腕を振り解こうとしている。
ご婦人の力は意外と強いのか、ハナが暴れてもびくともしない。
「待って! あなたは、一体何者なの!? ハナは、どうなるの!?」
「……この子がどうなるかは……あなたは知らない方がいいでしょう。そして私は……しがないただの花屋ですよ」
ご婦人は、ずっと優雅に微笑むだけだった。
嘘だ!!
ただの花屋が人型の、知能を持つ植物なんて取り扱ってるわけがないでしょ!!
そうツッコみたかったが、なぜか私の体は動かなかった。
そして、ハナはご婦人に連れられて、
小さく小さくなっていった……。
……………。
……………。
あれ?
私、こんなところで何やってるんだっけ……?
えっ? 部屋着のままじゃない!!
しかも、就業時刻過ぎてる~~!!
私は、急いで会社に連絡して、遅刻することを伝えた。
*
ありふれた朝。
ありふれた日常。
何も変わらない毎日。
充実はしているけれど、何か物足りない。
そして帰路。
会社から、駅へ向かおうとすると……。
「そこのお嬢さん」
見知らぬ着物姿のご婦人に、声をかけられた。
キャンペーン中で、花の種を無料で配っているらしい。
私は、花の種もらって家に帰った。
「今度は、失敗しないように」
どこからか、そう声が聞こえた気がした。
── ハナ編 完 ──
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