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種村芽衣3
しおりを挟む「何者、という表現は正しくありません。俺は人間じゃないので」
「どこからどう見ても人間なんですけど!?」
足元だけを除けば。
しかし、彼は真剣な表情だ。
「見た目は人間かもしれませんが、俺は植物です。人型植物、ご存知なかったですか?」
「知らないわよー。初耳よー。どうしたらいいのよ、こんなの咲いちゃって……」
「こんなの……」
イケオジが、一瞬だけしょんぼりした顔になった。
「あ、あー、ごめん。まさか、人が咲くとは思ってなかったから、どうしたらいいのかわからなくて」
「俺は植物ですので、いつも通り水をいただければ。あと、時々土を入れ替えたり、栄養剤をいただければ長持ちします」
…………本当に、植物なのね。
「あ、あと大切なことがひとつ…………っ!」
その時、イケオジが言葉を詰まらせ顔を顰めた。
「ど、どうしたの?」
「すみません、時間が来たようです」
「時間?」
「俺は…………」
イケオジは言いかけたが、次の瞬間────
再び周りが光に包まれた。
光がおさまると、イケオジはいなくなっていた。
呆然としていた私の前には、萎んだ花が残されていた。
これが夜になるとイケオジになっていた、ということなのだろうか?
それに、彼が現れるには時間制限があるってこと?
わからないことだらけだ。
でも、今までも夢の中でしか見たことがなかったし、本当に短時間しか現れないのかも。
そう考えているうちに、カーテンの向こうは明るくなり──
夜が、明けようとしていた。
それから数日間、イケオジは夢の中にも現れなかった。
言われた通り土を入れ替えたり、栄養剤を与えてみたが、一向に現れる気配がなく……。
でも、基本的には私が寝ている間に現れていたのよね。
だとすると、夜にしか現れないってことかしら?
ううーん。
でも、ここ数日全然現れないし、もしかして他に何か条件があるとか?
そういえば、夜にしか咲かない花があると聞いたことがある。
早速パソコンを開き、検索してみた。
マウスをスクロールしていくと、白い花びらのそれらしき植物を見つけた。
……あった、これだ!
もしイケオジがこれと同じような植物なら、なんらかのヒントがあるはず。
画面をスクロールしながら、そこにあった情報を読んでいく。
「えっ!?」
私は、そこに書いてあった文章に落胆した。
『年に2~3回、夜に花を咲かせる』
に、2、3回!?!?
じゃあ、今年はもう現れないってこと!?!?
そ、そんな……! 他に方法は……!?
私はキーボードを叩き、さらに検索をかける。
そこには、イケオジに言われたように、
『土を入れ替える、栄養剤をあげるなどすると長生きし、翌年も花を咲かせることがある』
とあった。
わかったわ……。
これは試練……私は試されているのね。
「やってやろうじゃないの! 来年も見事にイケオジを咲かせてみせるわよ!!」
仕事に比べたら、なんてことない。
社畜魂に火がついた。
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