オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

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種村芽衣4

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 そして翌年、ある日の夜────

「ううーん…………。イケオジ…………」

 私は、再びイケオジの夢を見た。

 いい香りが辺りを包み、ふわふわとする感覚。
 今なら、今ならイケオジに会える……!!

 さあ、起きるのよ私!! 起きて!!
 これは夢よ、起きて現実のイケオジに会うのよ!!



 チュンチュンチュン────

 小鳥の囀りが聞こえる。
 気づいたら朝になっていた。

「ああーーーーっ!! 起きられなかったーーーー!!」

 心身ともにリフレッシュできてるけど!!

 まだよ。
 また数日後に、今度は起きていればいいわ。




 数日後の夜────
 なんとなく、鉢植えの香りが強くなった気がする。
 そういえば、前回もイケオジが現れる前は、香りが強かったわね。

 今日こそ……会える!
 私は推しに会うが如く身を清め、正装し、ベッドの上で正座で待機していた。

 そして去年のあの日と同じように、まばゆい光が辺りを包んだ後──。

 イケオジが、咲いた。
 あの時と同じように、白い髪、緑のスーツ姿だ。
 やっと会えた感動に目頭が熱くなる。

「イケオジ…………」

 彼は目を開けると、優しく微笑んだ。

「芽衣さん……? 今日は、起きていたんですね」
「イケオジーーーー! 会いたかったよーーーー!」

 まるで、気分は推しの出演するライブで生身を見た時のようだった。
 目を潤ませ、思わず抱きついてしまう。
 

「えっ、えっ? どうされたんですか?」

 イケオジは驚きながらも、私の背中に手を回してくれた。

「私、私、年に2、3回しか会えないの知らなくて、調べて、やっと会えたよーーーー!!」

「す、すみません、芽衣さん……。前回、言いそびれてしまって、そのまま消えてしまって……」

「2、3回ってことは、今年は今日で最後の可能性もあるんでしょ? だから、今日はパジャマじゃなくて、ちゃんとした格好で出迎えようと……」

 私は彼から一旦離れ、友人の結婚式の時に買ったドレスを見せるように、くるりと翻った。

「素敵です、芽衣さん」

 嫌な顔ひとつせずに見つめてくれるイケオジに、思わず胸がときめいてしまう。

「いつも元気をくれてありがとう、イケオジ…………」

 その時、ふと思いついて、彼の顔をジッと見た。

「どうしました、芽衣さん?」

「考えてみたら、“イケオジ”って、名前じゃないわよね」

「そうなんですか?」

 イケオジはきょとんと目を丸くした。
 こういう俗世間的な言葉は、知らないのかもしれない。

「そうよ、カッコいいおじさまのことをイケオジっていうの。名前……、あなただけの名前を考えるわ」

「それは嬉しいです。よろしくお願いします」

 ふわりと微笑まれ、頑張って名付けをしようとするが……。

「うーーーーん。花……。夜……。植物……。イケオジ……」

 なかなか、いい名前が思い浮かばない。
 私って、ネーミングセンスなかったんだ……。

「あ、あのー、芽衣さん」

「ちょっと待ってね。今、カッコいい名前を考えてるから」

「それはありがたいのですが、もうすぐ夜明けです」

「えっ!?」

 気づけば、すでに数時間が過ぎ、窓の向こうが白んできた。

「ご、ごめん! 時間がないのに!」

 わたわたしていると、イケオジが私の手を引っ張った。
 ふわりと、イケオジの腕が私を包む。

 あ……この感じ……
 いつも、夢で感じている感覚だった。

「名前は、次に会った時でいいです。それよりも芽衣さんと、もっとお話しをしたいです」

「うん…………そうね、いっぱい話をしよう!」

 そう言って、イケオジから一旦離れようとするが……。

 …………あれ?
 イケオジの腕の中から、出られない。

「イケオジ? お話しするんじゃないの?」

「……できれば、このままで」

 ええええええええええ。
 み、耳元に吐息があああぁ~。

 きっと私は今、慣れない状態に赤面している。

「時間もないので、このまま元気を与えながらお話ししましょう」

「は、はい~~」

 私たちは夜明けまで話をしたが、正直言って、緊張して何を話したかあまり覚えていないのであった。

 ──後日、彼の名前は「夜に咲く」ということで「ヨサク」と名付けた。
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