23 / 40
土屋美雨5
しおりを挟むサイがうちの家族に加わってから、数日が過ぎた。
私は学校、母は仕事なので、念のためサイの傍らに水の入ったジョウロを置いておく事にした。それともうひとつ、暇そうだったので、音楽とラジオが聴けるポータブルプレイヤーを貸してあげた。私がサイに貸せるのは、これくらいしかない。もちろん、防水仕様だ。
これで、共通の話題ができるといいなと思う。
今日は、梅雨の間の晴れだったので、サイが残念そうにしていた。私が家を出ても、雨が降らない事はたまにある。
学校から帰ってくると、サイに呼ばれた。
「美雨さん、おかえりなさい。こっち、こっちに来てください!」
「ええ、なーに? 水がほしいの?」
私が窓から出た瞬間、ぽつぽつと雨が降り出した。
「うーん、最高♪」
なるほど。サイは私の体質を利用して、雨を降らせたかったわけね。この体質が喜ばれるのはいいんだけど、なんだかちょっと複雑……。
サイは、日が沈むと共に寝るので、夜が早い。こちらとしても、夜は窓を閉めたいので都合がよかった。
「うーん……」
仕事から帰ってきた母が、食事をしながら唸った。
「お母さん、どうしたの?」
「いや、サイ君なんだけどさ。あの子、どこかで見た事があるような、ないような……」
「どっちなのよ?」
「知り合いの子……? いや、違うなー。どこで見たんだったかなー?」
母は、サイの正体が気になるようだったが、深く詮索はしないようだった。
そう言われると、私もだんだん気になり出した。私はサイとは初対面のはず。でも母が知っているかもしれないという事は、私が物心つく前……もしくは母の独身時代。もしかしたら、アルバムに載っているかも!
後日、私と母の昔のアルバムを引っ張り出してきた。しかし、サイらしき人物はどこにも写っていなかった。
「……もしかして、お父さんの知り合いとか?」
父の知り合いなら、母が昔会ってる可能性がある。私は、父が置いて行った昔のアルバムをめくってみた。今とは違う、色褪せたレトロな感じの写真。
その中に、サイはいた。
「……えっ!? こ、これ……サイ!? なんで、お父さんのアルバムに!? ……というか、これって…………高校時代のお父さん!?」
うそでしょ!? なんで、サイがお父さんなの!?
いや、お父さんがサイなの!?
これは、先にお母さんに訊いてみるべき?
それとも、サイに確認してみるべき……?
母が帰ってくるのは夜。サイは夜には寝てしまう。
よし、先にサイに確認してみよう!
私は、アルバムを持って窓を開けた。
「ねえ、サイ────」
サイが生えてるプランター。
そこには、サイではなく長身の成人男性が立っていた。
「お、お、お父さんっっ!?!?」
30
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる