25 / 40
土屋美雨7
しおりを挟む
「嘘でしょ? 本当にサイ君なの?」
落ち着いた母が、改めて成長したサイを見た。
「お母さん、さっき、お父さんのアルバムを見て、サイと話してたの。これ見て」
「あ、あああああーー! これっ、これよ! 私が、サイ君を見た事があるって言ってたの! 竹男さんの若い頃だったのね!」
母は、懐かしさのあまりかアルバムを何ページもめくっていく。
そして、サイに向かってにっこりと微笑みかけた。
「ねえ、サイ君。ちょっと試しに、“お母さん”じゃなくて、“ハルミさん”って言ってみて?」
「ちょっと、お母さん──」
何を考えて……
「ハルミさん」
「きゃーっ! そっくり! 竹男さんそのものだわ!」
母は、まるで推しアイドルを見つけたようにはしゃいだ。
言われてみれば、サイは外見だけでなく声も父に似ている。
なんだかんだ言っても、母はやはり父の事が好きなのだ。
「お母さん、サイで遊ばないで」
「だってぇ。もう8年も竹男さんの声を聴いてないのよ? ちょっとくらい、いいでしょ?」
「僕は構いませんよ」
サイは困ったように笑っている。
「ほら! サイ君は話がわかるわぁ」
「まったくもう……」
「じゃあ、次はこの子! “美雨”って呼んでみて?」
母は私の両肩を掴んで、サイの前に立たせる。
「えーっ、私!?」
「え、呼び捨て……ですか?」
「竹男さんは、そう呼んでいたもの」
「お母さん、無理矢理はよくないよ」
「いえっ、やってみます。 み……美雨……」
ズギャン!!
な、なにこれ~~!?
見た目と声はお父さんなのに、サイが言うと破壊力が……!
「じゃあ、もう一回、私!」
「ハルミさん」
「きゃーっ! もう一回、この子!」
「美雨」
ズギャン!!
母はこれがかなり嬉しかったらしく、このやりとりは数十分続いた……。
サイも嫌な顔ひとつせず、よく付き合ってくれたよ……。
「ハルミさん、美雨……」
「あら、もういいわよ? ありがと」
「えっ? 僕、何も言ってませんよ」
「えっ?」
「ハルミさん……。美雨……」
声のした方を見ると、そこには本物の父が立っていた。
「え、ええええええええええええっっ!?!?」
私は、驚きのあまり叫んでしまった。
「あ、あっ……」
先程、サイに殴りかかろうとしていた勢いはどこへやら。
母は腰を抜かしてへたりこんでしまった。
「大丈夫か?」
父は母に手を差し伸べたが、母は項垂れ、その手を取ろうとしなかった。
「はじめまして、竹男さんですね?」
サイが間に入るように言うと、さすがの父も自分と同じ姿の者に驚いたようだ。
「君は……!?」
「僕は、サイと言います。あなたに似た、人型植物です」
「人型……植物……」
「僕の事は、ひとまず置いておきましょう。竹男さん」
サイは、いつになく真剣な顔になった。
「あなたは何故、8年前黙って出て行ったのですか?」
「そ、それは……」
父は、項垂れている母をちらりと見た。
「言いづらいようでしたら、推測ですが僕がお答えします」
「ま、待ってくれ!」
「お父さん! この期に及んで、まだごまかすつもりなの!? 本当の事を言ってよ!」
「竹男さんは────」
「母さんが、晴れ女だったから……!!」
「…………はい?」
項垂れていた母が、キョトンと、顔を上げた。
私も、呆気に取られて同じくキョトンとした。
落ち着いた母が、改めて成長したサイを見た。
「お母さん、さっき、お父さんのアルバムを見て、サイと話してたの。これ見て」
「あ、あああああーー! これっ、これよ! 私が、サイ君を見た事があるって言ってたの! 竹男さんの若い頃だったのね!」
母は、懐かしさのあまりかアルバムを何ページもめくっていく。
そして、サイに向かってにっこりと微笑みかけた。
「ねえ、サイ君。ちょっと試しに、“お母さん”じゃなくて、“ハルミさん”って言ってみて?」
「ちょっと、お母さん──」
何を考えて……
「ハルミさん」
「きゃーっ! そっくり! 竹男さんそのものだわ!」
母は、まるで推しアイドルを見つけたようにはしゃいだ。
言われてみれば、サイは外見だけでなく声も父に似ている。
なんだかんだ言っても、母はやはり父の事が好きなのだ。
「お母さん、サイで遊ばないで」
「だってぇ。もう8年も竹男さんの声を聴いてないのよ? ちょっとくらい、いいでしょ?」
「僕は構いませんよ」
サイは困ったように笑っている。
「ほら! サイ君は話がわかるわぁ」
「まったくもう……」
「じゃあ、次はこの子! “美雨”って呼んでみて?」
母は私の両肩を掴んで、サイの前に立たせる。
「えーっ、私!?」
「え、呼び捨て……ですか?」
「竹男さんは、そう呼んでいたもの」
「お母さん、無理矢理はよくないよ」
「いえっ、やってみます。 み……美雨……」
ズギャン!!
な、なにこれ~~!?
見た目と声はお父さんなのに、サイが言うと破壊力が……!
「じゃあ、もう一回、私!」
「ハルミさん」
「きゃーっ! もう一回、この子!」
「美雨」
ズギャン!!
母はこれがかなり嬉しかったらしく、このやりとりは数十分続いた……。
サイも嫌な顔ひとつせず、よく付き合ってくれたよ……。
「ハルミさん、美雨……」
「あら、もういいわよ? ありがと」
「えっ? 僕、何も言ってませんよ」
「えっ?」
「ハルミさん……。美雨……」
声のした方を見ると、そこには本物の父が立っていた。
「え、ええええええええええええっっ!?!?」
私は、驚きのあまり叫んでしまった。
「あ、あっ……」
先程、サイに殴りかかろうとしていた勢いはどこへやら。
母は腰を抜かしてへたりこんでしまった。
「大丈夫か?」
父は母に手を差し伸べたが、母は項垂れ、その手を取ろうとしなかった。
「はじめまして、竹男さんですね?」
サイが間に入るように言うと、さすがの父も自分と同じ姿の者に驚いたようだ。
「君は……!?」
「僕は、サイと言います。あなたに似た、人型植物です」
「人型……植物……」
「僕の事は、ひとまず置いておきましょう。竹男さん」
サイは、いつになく真剣な顔になった。
「あなたは何故、8年前黙って出て行ったのですか?」
「そ、それは……」
父は、項垂れている母をちらりと見た。
「言いづらいようでしたら、推測ですが僕がお答えします」
「ま、待ってくれ!」
「お父さん! この期に及んで、まだごまかすつもりなの!? 本当の事を言ってよ!」
「竹男さんは────」
「母さんが、晴れ女だったから……!!」
「…………はい?」
項垂れていた母が、キョトンと、顔を上げた。
私も、呆気に取られて同じくキョトンとした。
20
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる