オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

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土屋美雨7

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「嘘でしょ? 本当にサイ君なの?」

 落ち着いた母が、改めて成長したサイを見た。

「お母さん、さっき、お父さんのアルバムを見て、サイと話してたの。これ見て」

「あ、あああああーー! これっ、これよ! 私が、サイ君を見た事があるって言ってたの! 竹男さんの若い頃だったのね!」

 母は、懐かしさのあまりかアルバムを何ページもめくっていく。
 そして、サイに向かってにっこりと微笑みかけた。

「ねえ、サイ君。ちょっと試しに、“お母さん”じゃなくて、“ハルミさん”って言ってみて?」

「ちょっと、お母さん──」

 何を考えて……

「ハルミさん」

「きゃーっ! そっくり! 竹男さんそのものだわ!」

 母は、まるで推しアイドルを見つけたようにはしゃいだ。
 言われてみれば、サイは外見だけでなく声も父に似ている。
 なんだかんだ言っても、母はやはり父の事が好きなのだ。

「お母さん、サイで遊ばないで」

「だってぇ。もう8年も竹男さんの声を聴いてないのよ? ちょっとくらい、いいでしょ?」

「僕は構いませんよ」

 サイは困ったように笑っている。

「ほら! サイ君は話がわかるわぁ」

「まったくもう……」

「じゃあ、次はこの子! “美雨”って呼んでみて?」

 母は私の両肩を掴んで、サイの前に立たせる。

「えーっ、私!?」

「え、呼び捨て……ですか?」

「竹男さんは、そう呼んでいたもの」

「お母さん、無理矢理はよくないよ」

「いえっ、やってみます。 み……美雨……」

 ズギャン!!

 な、なにこれ~~!?
 見た目と声はお父さんなのに、サイが言うと破壊力が……!


「じゃあ、もう一回、私!」

「ハルミさん」

「きゃーっ! もう一回、この子!」

「美雨」

 ズギャン!!

 母はこれがかなり嬉しかったらしく、このやりとりは数十分続いた……。
 サイも嫌な顔ひとつせず、よく付き合ってくれたよ……。

「ハルミさん、美雨……」

「あら、もういいわよ? ありがと」

「えっ? 僕、何も言ってませんよ」

「えっ?」

「ハルミさん……。美雨……」

 声のした方を見ると、そこには本物の父が立っていた。

「え、ええええええええええええっっ!?!?」

 私は、驚きのあまり叫んでしまった。

「あ、あっ……」

 先程、サイに殴りかかろうとしていた勢いはどこへやら。
 母は腰を抜かしてへたりこんでしまった。

「大丈夫か?」

 父は母に手を差し伸べたが、母は項垂れ、その手を取ろうとしなかった。

「はじめまして、竹男さんですね?」

 サイが間に入るように言うと、さすがの父も自分と同じ姿の者に驚いたようだ。

「君は……!?」

「僕は、サイと言います。あなたに似た、人型植物です」

「人型……植物……」

「僕の事は、ひとまず置いておきましょう。竹男さん」

 サイは、いつになく真剣な顔になった。

「あなたは何故、8年前黙って出て行ったのですか?」

「そ、それは……」

 父は、項垂れている母をちらりと見た。

「言いづらいようでしたら、推測ですが僕がお答えします」

「ま、待ってくれ!」

「お父さん! この期に及んで、まだごまかすつもりなの!? 本当の事を言ってよ!」

「竹男さんは────」

「母さんが、晴れ女だったから……!!」

「…………はい?」

 項垂れていた母が、キョトンと、顔を上げた。
 私も、呆気に取られて同じくキョトンとした。
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