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第2章
19、「不思議な同級生」
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なにがどうしてそうなったのかもはや浮かれすぎて覚えていない。
とにかく今、雅也は洋子の隣を歩いている。
「あの、半分持ってくれてありがとう上尾くん」
「うん。社会科準備室って遠いよね。一人でも運ぶのは大変だもんね」
(めちゃくちゃ優しいな! )
育ちのいい人特有の品の良さにうっとりしてしまう。地元中学の同級生男子とは全く別の生き物だと心のメモに記した。
「さっき、あの、私の名前…。知っててくれたんだね」
「え? 同じ部活だよね」
「そ、そう! 同じ弓道部」
そして同じクラスです、との突っ込みは入れない。
「吉田さんって小さいから」
「…弓の方が大きいってよく言われる」
「ん~、」
ちょっと困ったように笑う顔が可愛い。
「小さくて、可愛いと思うよ」
「!!!! 」
何事もなくニコニコ笑っている。おそらく雅也なりのフォローに違いない。
だが、そんなことはどうでもいい。お世辞でも嘘でももはやどうでもいいのだ。
(だって、かかかかかっ可愛いって!! 雅也くんが私のこと可愛いって言ったよ!! )
いや、落ち着け。深呼吸だ。
たぶん誰にでも言っている。うん、そう。絶対そう。
(上流階級の人たちの中では普通に言うんだきっと…)
「あの上尾くんは、小柄な女の子のほうが…ごにょごにょ」
「そうだね~」
ぼんやりした答えに隣を振り仰げば雅也は明後日の方向を向いてしまっている。
「あれれ」
聞いてない?
「あの、上尾くん…」
「ん、なに? 」
視線が合った途端、にっこり笑ってくれる。
「はわわっ、な、なんでもないです…(はちゃめちゃに顔がいい)」
これは反則だ。恐らく学園内を探せば雅也より美形な男子もいるだろう。けれど、目を見つめられて、その人好きのする笑顔を向けられたらときめかない女子はいない。
「あああああのっ」
「ついたね」
「え、? 本当…ですね」
いつの間にか社会科準備室の前まで来ていた。
時は残酷だ。
(いいのよ、洋子。ここまでラッキーだったじゃない。)
「ありがとう上尾くん」
いったん床に荷物を下した洋子。
かがんだその頭の上をサッサッと軽く払われた気がした。
「? 」
顔を上げれば雅也は特に何事もなさそうにしている。
(気のせい、かな)
「中に運ぼうか」
「ううん! 大丈夫。あとは富沢先生にやらせるから! 」
「え、ああ…そうなんだ」
目を丸くして驚く顔が少し猫っぽい。
「ありがとう」
できればもう少し一緒にいたいが、「それじゃあ」と割とあっさり去っていく雅也。小さく手を振ってその背を見送る。
(さっきのはなんだったんだろう? )
上尾くんは誰にでも優しくて王子様みたいな同級生だ。
そして、なんとなく不思議。
今日のことは日記にしっかり書いておこうと思う洋子であった。
とにかく今、雅也は洋子の隣を歩いている。
「あの、半分持ってくれてありがとう上尾くん」
「うん。社会科準備室って遠いよね。一人でも運ぶのは大変だもんね」
(めちゃくちゃ優しいな! )
育ちのいい人特有の品の良さにうっとりしてしまう。地元中学の同級生男子とは全く別の生き物だと心のメモに記した。
「さっき、あの、私の名前…。知っててくれたんだね」
「え? 同じ部活だよね」
「そ、そう! 同じ弓道部」
そして同じクラスです、との突っ込みは入れない。
「吉田さんって小さいから」
「…弓の方が大きいってよく言われる」
「ん~、」
ちょっと困ったように笑う顔が可愛い。
「小さくて、可愛いと思うよ」
「!!!! 」
何事もなくニコニコ笑っている。おそらく雅也なりのフォローに違いない。
だが、そんなことはどうでもいい。お世辞でも嘘でももはやどうでもいいのだ。
(だって、かかかかかっ可愛いって!! 雅也くんが私のこと可愛いって言ったよ!! )
いや、落ち着け。深呼吸だ。
たぶん誰にでも言っている。うん、そう。絶対そう。
(上流階級の人たちの中では普通に言うんだきっと…)
「あの上尾くんは、小柄な女の子のほうが…ごにょごにょ」
「そうだね~」
ぼんやりした答えに隣を振り仰げば雅也は明後日の方向を向いてしまっている。
「あれれ」
聞いてない?
「あの、上尾くん…」
「ん、なに? 」
視線が合った途端、にっこり笑ってくれる。
「はわわっ、な、なんでもないです…(はちゃめちゃに顔がいい)」
これは反則だ。恐らく学園内を探せば雅也より美形な男子もいるだろう。けれど、目を見つめられて、その人好きのする笑顔を向けられたらときめかない女子はいない。
「あああああのっ」
「ついたね」
「え、? 本当…ですね」
いつの間にか社会科準備室の前まで来ていた。
時は残酷だ。
(いいのよ、洋子。ここまでラッキーだったじゃない。)
「ありがとう上尾くん」
いったん床に荷物を下した洋子。
かがんだその頭の上をサッサッと軽く払われた気がした。
「? 」
顔を上げれば雅也は特に何事もなさそうにしている。
(気のせい、かな)
「中に運ぼうか」
「ううん! 大丈夫。あとは富沢先生にやらせるから! 」
「え、ああ…そうなんだ」
目を丸くして驚く顔が少し猫っぽい。
「ありがとう」
できればもう少し一緒にいたいが、「それじゃあ」と割とあっさり去っていく雅也。小さく手を振ってその背を見送る。
(さっきのはなんだったんだろう? )
上尾くんは誰にでも優しくて王子様みたいな同級生だ。
そして、なんとなく不思議。
今日のことは日記にしっかり書いておこうと思う洋子であった。
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