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それは突然の事だった。
姉の乗った馬車が事故に合い、姉は帰らぬ人となってしまったのだ。
元気に出掛けて行った姉を見送ったのは1時間前の事。
私達家族は呆然とし、その事実を暫く受け入れる事が出来なかった。
そして、それはもう1人…姉の婚約者だったライバート様も…。
ライバート様は約束の時間になっても訪ねて来ない姉を心配し、我が家まで訪ねて来て訃報を知ったのだ。
姉とライバート様は、卒業後に結婚する予定だった。
マイルス侯爵家には私と姉の姉妹しか生まれなかった。
その為、コイランド侯爵家の三男であるライバート様が婿養子として入る事が決まっていた。
父とコイランド侯爵とは学友で今でも親交があり、物心付いた時から知っていた姉とライバート様は貴族としては珍しい恋愛結婚になる筈だった。
姉の葬儀が終わり、父はライバート様の事を心配した。
姉と結婚し、マイルス侯爵家当主となる為に執務を覚えてきたライバート様。
侯爵家とはいえ爵位を継がない三男が、この歳で貴族令嬢の婚約者を探すのは難しい。
いくら不慮の事故で婚約者を亡くしたとしても、1度は婚約していた身。
父は、ライバート様に、それなりの金額を払うとコイランド侯爵に申し出た。
しかしコイランド侯爵は「娘を亡くしたマイルスから金は受け取る事は出来ない。
落ち着いたらクリスティーナとライバートを婚約させるのはどうだろうか?」と言ったのだ。
父は、少し躊躇ったがライバートを次期当主として教えてきた。性格も申し分ない事から、ライバートが了承すれば…とライバート様に答えを託した。
彼は黙って俯いていた。
「少し考えさせて下さい。カトリーナの部屋をお借りしても良いですか?」
父が了承するとライバート様は姉の部屋へと向かった。
コイランド侯爵夫妻は帰って行き、父は執務室に、母と私は自室へと戻り、姉を想い泣いた。
1時間ほど経った頃、目を赤くしたライバート様が姉の部屋から出て来たと使用人が告げに来た。
私は涙を拭き、応接室へと向かう。
応接室に居る者皆、目を赤くし泣き腫らした顔をしていた。
「マイルス侯爵、私はクリスティーナ嬢との婚約を受け入れます。不束者ですが、これからもご指導宜しくお願い致します」
「ライバート、本当に良いのか?マイルス侯爵家にはカトリーヌとの思い出が多すぎるだろう?」
ライバート様は「大丈夫です」と言って笑ったけれど大丈夫な訳がない。
そんなに簡単に姉への想いを切り替えられる筈がないのだ。
それでも私と婚約するのは、これからの自分が置かれる身を考えてなのか?
まかり間違っても私に気持ちがあるとは思えない。
父はライバート様の返事を受け入れた。
こうして私とライバート様は1ヶ月後に婚約した。
ライバート様は執務の合間に休憩を取ると必ず姉の部屋に行っていた。
きっと姉を想い、心の中で会話をしているのだろう。
その行動を誰も止める事はしなかった。
父は、私達の結婚は私が学園を卒業したからと決めた。
私は来年、入学するので後3年半は結婚する事はない。
それまでに姉への想いから私へと向いてくれる様にと願っているのだ。
もし3年半たってもライバート様の気持ちが姉へのままだったら…父はどうするつもりなのかは聞けない。
私も姉への気持ちがある人と結婚して幸せになれるとは思えない。
マイルス侯爵家としても良い方向にいくとは思えない。
姉が亡くなり半年が過ぎた。
突如父は、姉の部屋を片付けると私達に告げた。
勿論、全てを捨てる訳ではない。
思い出として少し残し、売れる物は売って孤児院に寄付する。
「部屋をこのまま片付けなければ、前に進めない者がいる。皆の為にも片付けないといけない。それはきっとカトリーヌも望んでいる」と父は言った。
その言葉にライバート様は激怒した。
「なぜカトリーヌを追い出す様な事をするのですか!?彼女は、カトリーヌはこの屋敷で、部屋で笑っているのですよ!なぜ彼女を泣かせるのです!侯爵は、カトリーヌが嫌いなのですか!?」
余りの剣幕に私達は驚いたが、きっとライバート様には今も姉の思い出の姿が見えているのだろう。
姉の部屋にいるライバート様は、誰かと会話する様に楽しそうに話して笑っていた。
しかし、その姿を偶然見た父は驚き部屋を片付けると決めたのだ。
私達が思っていた以上にライバート様の心は壊れていたのだ。
父はライバート様に内緒でコイランド侯爵を呼んだ。
それは姉の部屋に居るライバート様を見せる為に…。
コイランド侯爵は、マイルス侯爵家から暴れるライバート様を無理矢理連れて帰ると直ぐに医師に診察させた。
ライバート様の心は姉の死を受け入れる事が出来なかった。
もう少し早く誰かが気が付いていれば…。
私が、ライバート様と寄り添っていれば…。
……いえ、同じだっただろう。
ライバート様の心は姉の死から壊れ始めていたのだ。
私とライバート様の婚約は白紙に戻り、ライバート様は領地で療養する事になった。
領地で暮らすライバート様は今でも姉と楽しそうに会話し笑っているという…。
END
*****
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
姉の乗った馬車が事故に合い、姉は帰らぬ人となってしまったのだ。
元気に出掛けて行った姉を見送ったのは1時間前の事。
私達家族は呆然とし、その事実を暫く受け入れる事が出来なかった。
そして、それはもう1人…姉の婚約者だったライバート様も…。
ライバート様は約束の時間になっても訪ねて来ない姉を心配し、我が家まで訪ねて来て訃報を知ったのだ。
姉とライバート様は、卒業後に結婚する予定だった。
マイルス侯爵家には私と姉の姉妹しか生まれなかった。
その為、コイランド侯爵家の三男であるライバート様が婿養子として入る事が決まっていた。
父とコイランド侯爵とは学友で今でも親交があり、物心付いた時から知っていた姉とライバート様は貴族としては珍しい恋愛結婚になる筈だった。
姉の葬儀が終わり、父はライバート様の事を心配した。
姉と結婚し、マイルス侯爵家当主となる為に執務を覚えてきたライバート様。
侯爵家とはいえ爵位を継がない三男が、この歳で貴族令嬢の婚約者を探すのは難しい。
いくら不慮の事故で婚約者を亡くしたとしても、1度は婚約していた身。
父は、ライバート様に、それなりの金額を払うとコイランド侯爵に申し出た。
しかしコイランド侯爵は「娘を亡くしたマイルスから金は受け取る事は出来ない。
落ち着いたらクリスティーナとライバートを婚約させるのはどうだろうか?」と言ったのだ。
父は、少し躊躇ったがライバートを次期当主として教えてきた。性格も申し分ない事から、ライバートが了承すれば…とライバート様に答えを託した。
彼は黙って俯いていた。
「少し考えさせて下さい。カトリーナの部屋をお借りしても良いですか?」
父が了承するとライバート様は姉の部屋へと向かった。
コイランド侯爵夫妻は帰って行き、父は執務室に、母と私は自室へと戻り、姉を想い泣いた。
1時間ほど経った頃、目を赤くしたライバート様が姉の部屋から出て来たと使用人が告げに来た。
私は涙を拭き、応接室へと向かう。
応接室に居る者皆、目を赤くし泣き腫らした顔をしていた。
「マイルス侯爵、私はクリスティーナ嬢との婚約を受け入れます。不束者ですが、これからもご指導宜しくお願い致します」
「ライバート、本当に良いのか?マイルス侯爵家にはカトリーヌとの思い出が多すぎるだろう?」
ライバート様は「大丈夫です」と言って笑ったけれど大丈夫な訳がない。
そんなに簡単に姉への想いを切り替えられる筈がないのだ。
それでも私と婚約するのは、これからの自分が置かれる身を考えてなのか?
まかり間違っても私に気持ちがあるとは思えない。
父はライバート様の返事を受け入れた。
こうして私とライバート様は1ヶ月後に婚約した。
ライバート様は執務の合間に休憩を取ると必ず姉の部屋に行っていた。
きっと姉を想い、心の中で会話をしているのだろう。
その行動を誰も止める事はしなかった。
父は、私達の結婚は私が学園を卒業したからと決めた。
私は来年、入学するので後3年半は結婚する事はない。
それまでに姉への想いから私へと向いてくれる様にと願っているのだ。
もし3年半たってもライバート様の気持ちが姉へのままだったら…父はどうするつもりなのかは聞けない。
私も姉への気持ちがある人と結婚して幸せになれるとは思えない。
マイルス侯爵家としても良い方向にいくとは思えない。
姉が亡くなり半年が過ぎた。
突如父は、姉の部屋を片付けると私達に告げた。
勿論、全てを捨てる訳ではない。
思い出として少し残し、売れる物は売って孤児院に寄付する。
「部屋をこのまま片付けなければ、前に進めない者がいる。皆の為にも片付けないといけない。それはきっとカトリーヌも望んでいる」と父は言った。
その言葉にライバート様は激怒した。
「なぜカトリーヌを追い出す様な事をするのですか!?彼女は、カトリーヌはこの屋敷で、部屋で笑っているのですよ!なぜ彼女を泣かせるのです!侯爵は、カトリーヌが嫌いなのですか!?」
余りの剣幕に私達は驚いたが、きっとライバート様には今も姉の思い出の姿が見えているのだろう。
姉の部屋にいるライバート様は、誰かと会話する様に楽しそうに話して笑っていた。
しかし、その姿を偶然見た父は驚き部屋を片付けると決めたのだ。
私達が思っていた以上にライバート様の心は壊れていたのだ。
父はライバート様に内緒でコイランド侯爵を呼んだ。
それは姉の部屋に居るライバート様を見せる為に…。
コイランド侯爵は、マイルス侯爵家から暴れるライバート様を無理矢理連れて帰ると直ぐに医師に診察させた。
ライバート様の心は姉の死を受け入れる事が出来なかった。
もう少し早く誰かが気が付いていれば…。
私が、ライバート様と寄り添っていれば…。
……いえ、同じだっただろう。
ライバート様の心は姉の死から壊れ始めていたのだ。
私とライバート様の婚約は白紙に戻り、ライバート様は領地で療養する事になった。
領地で暮らすライバート様は今でも姉と楽しそうに会話し笑っているという…。
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