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ハリスは、グレートから渡されたリーシャからの最後の手紙を手に取り見詰めた。
グレートは、読む読まないはお前に任せると言った。
マリアナは、そんな手紙は直ぐに捨てるべきだと激怒していた。
だが私は、どうしてもその手紙を…リーシャの最後の言葉が書いてある手紙を捨てる事は出来なかった。
1人執務室に籠り、手紙を見詰める。
ハリスへと書かれたリーシャの文字。
何が書いてあるのか…私を罵る言葉か?
怖くて手が震え封が切れない。
リーシャは、元は私の兄の婚約者だった。
兄が事故で儚くなり、私が婚約者になったのだ。
バンス子爵に跡継ぎとして養子に入ったグレートと私は学園時代に親友と呼べるほどに仲良くしていた。
グレートには、同い年に義姉のリーシャが居た。
その関係からリーシャとも話すようになり、私はリーシャに好意を持った。
しかし、その後、リーシャと兄の婚約が決まり、私は恋心を告げる事なく失恋したのだ。
婚約するとリーシャは、よく我が家に遊びに来ていた。
両親もリーシャを気に入り家族になるのを楽しみにしていた。
私だけが素直に喜ぶ事が出来なかった。
結婚式を3ヶ月後に控えたある日、兄の乗った馬車が横転し、兄は帰らぬ人となってしまった。
泣いているリーシャを見て、私は美しいと思った。
どうしても彼女が欲しくて、私は父上に頼み、リーシャの婚約者になった。
結婚式は、兄とリーシャが予定していた日に挙げた。
彼女のウエディングドレスは、とても美しく、彼女が自分の物になったのだと歓喜した。
父上が私に当主を譲り、隠居すると言った辺りから、私は罪悪感に襲われた。
私が兄を殺したわけではない。それは分かっている。
けれど、本当なら、ここに居るのは私でなく兄だったのだ。
兄が事故で儚くなり、自分の欲だけでリーシャの気持ちも考えずに手に入れた。
彼女は、本当は嫌だったのではないか?
私が無理矢理、手に入れてしまったのではないか?
兄を心で想いながら、私に抱かれたのではないのか?
そんな時に、リーシャが懐妊した。
「子供が出来たの。」
そう言って喜ぶリーシャ。
本当に嬉しいのか?
兄の子でなく、私との子だぞ?
私は、リーシャに笑顔で接する事が出来なくなっていた。
エリミヤが産まれる頃には、リーシャと接する事が怖くなり、酒に溺れた。
そこで知り合ったマリアナに迫られ、気が付けばベッドを共にしていた。
屋敷に帰るのが怖かった私は、マリアナに溺れた。
それでも心の中には、リーシャがいつも居た。
リーシャが危篤だと知らされた時は、目の前が真っ暗になった。
急ぎ屋敷に戻ると苦しむリーシャ。
なんで兄は、まだ迎えに来てやらないんだ。
リーシャが苦しんでいるんだ。早く迎えに来てやれよっ!愛するリーシャが苦しんでいるんだぞっ!!
最後にリーシャが何を言ったのか分からない。
この手紙を読めば少しは分かるのか?
私は気持ちを落ち着かせリーシャからの手紙の封を切った。
◈◈◈
ハリスへ
この手紙を読んでいるという事は、貴方はエリミヤをグレートに任せたのですね。
いつから貴方と私はすれ違ってしまったのでしょう。
貴方は、アルト様が突然の事故で儚くなり、婚約者を失くした私を不本意ながらも引き受けてくれました。
あの時、私が貴方に甘える事なく了承しなければ、貴方の人生を狂わせる事などなかったのでしょうね。ごめんなさい。
私の我が儘で貴方を縛り付けてしまって、貴方の人生を不幸にしてしまって本当にごめんなさい。
私は、貴方に結婚して欲しいと言われて嬉しかったのです。
グレートの友達として紹介された時からお慕いしておりました。
ハリス、私は貴方を愛していました。
貴方の気持ちよりも、自分の気持ちを優先してしまった自分の愚かさを今では恥じております。
エリミヤの事はグレートに任せて、貴方は自分の人生を歩んで下さい。
どうか愛する人と幸せになって下さいね。
今まで ありがとう。さようなら。
リーシャ
リーシャは、私を愛していたのか?
リーシャは、兄ではなく私を愛してくれていたのか!?
なんて事だ。
私達は、愛し合っていたのだ。
私が、素直になれなかったばかりに、リーシャを苦しめ、エリミヤを愛せずに苦しめ手離
してしまった。
私が、私が愚かだったばかりに。
リーシャ。愛するリーシャ。
謝らなければならないのは私の方だ。
君を傷付けて、エミリヤを傷付けて本当に済まなかった。
ああ、なぜ気が付かなかったのだろう。
私の幸せは君とエリミヤと居る事だったのに…。
リーシャ。許して欲しい。
君を心から愛していたんだ。
ハリスは嗚咽を堪える事なく泣き崩れた…。
グレートは、読む読まないはお前に任せると言った。
マリアナは、そんな手紙は直ぐに捨てるべきだと激怒していた。
だが私は、どうしてもその手紙を…リーシャの最後の言葉が書いてある手紙を捨てる事は出来なかった。
1人執務室に籠り、手紙を見詰める。
ハリスへと書かれたリーシャの文字。
何が書いてあるのか…私を罵る言葉か?
怖くて手が震え封が切れない。
リーシャは、元は私の兄の婚約者だった。
兄が事故で儚くなり、私が婚約者になったのだ。
バンス子爵に跡継ぎとして養子に入ったグレートと私は学園時代に親友と呼べるほどに仲良くしていた。
グレートには、同い年に義姉のリーシャが居た。
その関係からリーシャとも話すようになり、私はリーシャに好意を持った。
しかし、その後、リーシャと兄の婚約が決まり、私は恋心を告げる事なく失恋したのだ。
婚約するとリーシャは、よく我が家に遊びに来ていた。
両親もリーシャを気に入り家族になるのを楽しみにしていた。
私だけが素直に喜ぶ事が出来なかった。
結婚式を3ヶ月後に控えたある日、兄の乗った馬車が横転し、兄は帰らぬ人となってしまった。
泣いているリーシャを見て、私は美しいと思った。
どうしても彼女が欲しくて、私は父上に頼み、リーシャの婚約者になった。
結婚式は、兄とリーシャが予定していた日に挙げた。
彼女のウエディングドレスは、とても美しく、彼女が自分の物になったのだと歓喜した。
父上が私に当主を譲り、隠居すると言った辺りから、私は罪悪感に襲われた。
私が兄を殺したわけではない。それは分かっている。
けれど、本当なら、ここに居るのは私でなく兄だったのだ。
兄が事故で儚くなり、自分の欲だけでリーシャの気持ちも考えずに手に入れた。
彼女は、本当は嫌だったのではないか?
私が無理矢理、手に入れてしまったのではないか?
兄を心で想いながら、私に抱かれたのではないのか?
そんな時に、リーシャが懐妊した。
「子供が出来たの。」
そう言って喜ぶリーシャ。
本当に嬉しいのか?
兄の子でなく、私との子だぞ?
私は、リーシャに笑顔で接する事が出来なくなっていた。
エリミヤが産まれる頃には、リーシャと接する事が怖くなり、酒に溺れた。
そこで知り合ったマリアナに迫られ、気が付けばベッドを共にしていた。
屋敷に帰るのが怖かった私は、マリアナに溺れた。
それでも心の中には、リーシャがいつも居た。
リーシャが危篤だと知らされた時は、目の前が真っ暗になった。
急ぎ屋敷に戻ると苦しむリーシャ。
なんで兄は、まだ迎えに来てやらないんだ。
リーシャが苦しんでいるんだ。早く迎えに来てやれよっ!愛するリーシャが苦しんでいるんだぞっ!!
最後にリーシャが何を言ったのか分からない。
この手紙を読めば少しは分かるのか?
私は気持ちを落ち着かせリーシャからの手紙の封を切った。
◈◈◈
ハリスへ
この手紙を読んでいるという事は、貴方はエリミヤをグレートに任せたのですね。
いつから貴方と私はすれ違ってしまったのでしょう。
貴方は、アルト様が突然の事故で儚くなり、婚約者を失くした私を不本意ながらも引き受けてくれました。
あの時、私が貴方に甘える事なく了承しなければ、貴方の人生を狂わせる事などなかったのでしょうね。ごめんなさい。
私の我が儘で貴方を縛り付けてしまって、貴方の人生を不幸にしてしまって本当にごめんなさい。
私は、貴方に結婚して欲しいと言われて嬉しかったのです。
グレートの友達として紹介された時からお慕いしておりました。
ハリス、私は貴方を愛していました。
貴方の気持ちよりも、自分の気持ちを優先してしまった自分の愚かさを今では恥じております。
エリミヤの事はグレートに任せて、貴方は自分の人生を歩んで下さい。
どうか愛する人と幸せになって下さいね。
今まで ありがとう。さようなら。
リーシャ
リーシャは、私を愛していたのか?
リーシャは、兄ではなく私を愛してくれていたのか!?
なんて事だ。
私達は、愛し合っていたのだ。
私が、素直になれなかったばかりに、リーシャを苦しめ、エリミヤを愛せずに苦しめ手離
してしまった。
私が、私が愚かだったばかりに。
リーシャ。愛するリーシャ。
謝らなければならないのは私の方だ。
君を傷付けて、エミリヤを傷付けて本当に済まなかった。
ああ、なぜ気が付かなかったのだろう。
私の幸せは君とエリミヤと居る事だったのに…。
リーシャ。許して欲しい。
君を心から愛していたんだ。
ハリスは嗚咽を堪える事なく泣き崩れた…。
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