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小さい頃から身体は丈夫な方ではなかった。
季節の変り目になると体調を崩し寝込んでしまう。
成長するにつれ寝込む事は少なくなったが、相変わらず季節の変り目や気圧が低い日などには体調を崩してしまっていた。
今回も婚約者であるロベルト様と観劇を観に行く約束をしていたのに頭痛がする為に御断りをする羽目になってしまった。
妹のアマンダがそれを聞き付け「私が変わりに行きたいわ!その観劇を観たい思っていたの♪」とロベルト様にお願いしている。
何を言い出すのかと思ったけれど、折角手配してくれたチケットを無駄にするのも悪いと思い、ロベルト様が了承されたのであればと痛む頭に堪えながらも笑顔で送り出した。
弟のウイリアムには「マリアンヌお姉様、本当に2人を行かせて良かったの?僕にはアマンダが本当に観劇を観たいと思ってるとは思えないよ。」と言われたけれど、体調を崩してしまった私には止める事は出来なかった。
でも…その判断が間違いだった様だ。
「マリアンヌ様、ロベルト様が御見舞いにお越しです。お会いになりますか?」
「まぁロベルト様が?そうね、お会いするから手伝いをお願い。」
急いで着替え、髪を整える。
準備を終え応接室へ向かう為に扉に向かおうとして窓の近くを通ると、庭のガゼボに人影が見えた。
(あれはロベルト様とアマンダ?)
「どうしてロベルト様を応接室にお通していないの?」
「それが、ロベルト様をお出迎えに出られましたアマンダ様が今日は天気が良いから庭のガゼボでお茶をと仰られまして。申し訳ないありません。直ぐに応接室の方に」
「そうなの、アマンダが…。」
2人は、まるで恋人同士の様に仲睦まじく隣り合って座り微笑んで話している。
あそこに入る勇気が私には残念ながら無い…。
「…やはり気分が優れないわ。ロベルト様には、謝りの言葉を伝えておいて」
そんな事が何回か続いた頃、ウイリアムが部屋にやって来た。
「マリアンヌお姉様、あの2人を放っておいて良いの!?アイツ、マリアンヌお姉様の婚約者だという自覚が無いんじゃないの!?あの女もマリアンヌお姉様の婚約者だと知っていて色目を使ってイチャイチャしやがって!」
「ウイリアム、口が悪いわよ!それにアマンダも貴方の姉でしょう。あの女だなんて…」
「はぁ?僕はあんな女を姉とは思いたくもないよ。いい歳していまだに我が儘言って人を困らせ、聞き入れられないと癇癪を起こして泣き叫び、何でも自分が1番じゃなきゃ嫌だと騒いでいる我儘馬鹿女じゃん!」
「ウイリアム、それは言い過ぎよ!」
確かにアマンダは幼少の頃から落ち着きが無く、いつでも両親や私の関心が自分に向けられていないのを嫌がり、我儘や癇癪を起こして騒ぎを起こしていた。
両親も私もその度にアマンダの我儘を聞き甘やかしてきた。
けれどそれもウイリアムが産まれるまでのこと。
ウイリアムが産まれた事でお母様はアマンダにもしっかりしてもらおうと甘やかす事をやめて家庭教師も付けて伯爵令嬢としてしっかり躾けようと頑張っていたのだけれど…。
「マリアンヌお姉様は、アイツが好きだったのではないの?あんな女に婚約者を取られても良いの!?」
私の初恋は婚約者のロベルト様だ。
ロベルト様と婚約が決まったと聞いた時は、嬉しくて興奮して夜も眠れなかった。
だからこそ好きなロベルト様が私ではなくアマンダを選ぶのであれば私は潔く身を引きたいと思う。
窓辺から見るロベルト様は、とても幸せそうで私には、あの笑顔を見せる事はない。
「ロベルト様が幸せになるのなら…」
「マリアンヌお姉様は、本当にそう思うの?あの女は、ただお姉様の物を奪って楽しんでいるだけだよ!いつもマリアンヌお姉様の物を欲しがって泣き喚いて。」
「それでも…ロベルト様がアマンダを選ばれるのであれば、私はそれを受け入れて身を引くわ」
ウイリアムは呆れていたが、チラッと窓の外でイチャつく2人を見て何か呟いていた。
「まぁあんな馬鹿女に引っ掛かる様な馬鹿な男には、僕の大切なマリアンヌお姉様を渡さなくて良かったのか…」
「マリアンヌお姉様の気が変わらないうちに、少し突っいてみるか…」
ウイリアムが部屋を出て行くと外が騒がしくなった。
窓から覗くとロベルト様とアマンダとウイリアムの姿がガゼボに見える。
此処からでは何を話しているのか聞こえないが、アマンダがウイリアムを怒鳴っている様だ。
ウイリアムは一体何をしたのかしら?
3人の姿が見えなくなり、少しすると執事が部屋にやって来て、お父様が呼んでいると伝えられる。
ノックをし応接室に入れば、お父様の他にロベルト様とアマンダ、ウイリアムが座っていた。
「お父様、お呼びでしょうか?」
渋い顔をした父に、ソファに掛ける様に促されウイリアムの隣に座る。
「マリアンヌ、落ち着いて聞いてくれ。ロベルト君が、お前との婚約を解消しアマンダと婚約したいと申し入れてきた。」
2人で手を繋いで並んで座っている姿を見て、そうでは無いかと思っていたけれど、まだ正式に解消したわけではないのに婚約者の前で堂々と手を繋いでいるのはどうなの?
アマンダも勝ち誇った顔を私に向けないで欲しい。
「…そうですか。わたくしはお父様に全てお任せ致します。」
「すまないマリアンヌ。俺は君とではなくアマンダと結婚したい。アマンダは俺にとってかけがえのない運命の相手なんだ!」
「お姉様ぁ、本当にごめんなさ~い。私、ロベルトとは真実の愛で繋がっている運命の相手なのだと気が付いてしまったの。まさか運命の人がお姉様の婚約者だなんて。諦めようとしたのよぉ~。でも真実の愛で結ばれた運命の2人が結ばれないなんておかしいでしょう?お姉様は運命の相手を引き離すなんて、そんな事はしないでしょう?ねっ、お姉様」
「そう、真実の愛なのね。勿論そんな2人を引き裂く事は私には出来ないわ…おめでとうロベルト様、アマンダ。運命の人に巡り会えて良かったわね。」
(…真実の愛か。
ロベルト様の運命の人は私ではなくアマンダなのね。)
私の婚約解消を決めたお父様は、直ぐにロベルト様のお父様に連絡をし、私とアマンダの婚約者の交代という形で手続きをした。
「マリアンヌ、お前には辛く悲しい思いをさせたが、我が家としてはアマンダが片付いてくれてホッしている。このまま何事もなくロベルト君と無事に結婚してくれれば良いのだがな。」
「アマンダには子爵夫人が務まる様に、家庭教師は雇わずにお母様自身が指導すると仰っていましたが大丈夫なのでしょうか?」
アマンダは伯爵令嬢としての淑女教育も嫌がり、家庭教師を何人も辞めさせた。
(私が心配する事ではないわね。)
今日も窓からガゼボに居る2人の姿が見える。
ロベルト様が今日も笑っている。
隣に居るのは私では無い事に胸が痛む…。
侍女のマリーが気付き、そっとカーテンを閉めてくれた。
忘れなければ…。
初恋は実のらないと言うのは本当ね。
季節の変り目になると体調を崩し寝込んでしまう。
成長するにつれ寝込む事は少なくなったが、相変わらず季節の変り目や気圧が低い日などには体調を崩してしまっていた。
今回も婚約者であるロベルト様と観劇を観に行く約束をしていたのに頭痛がする為に御断りをする羽目になってしまった。
妹のアマンダがそれを聞き付け「私が変わりに行きたいわ!その観劇を観たい思っていたの♪」とロベルト様にお願いしている。
何を言い出すのかと思ったけれど、折角手配してくれたチケットを無駄にするのも悪いと思い、ロベルト様が了承されたのであればと痛む頭に堪えながらも笑顔で送り出した。
弟のウイリアムには「マリアンヌお姉様、本当に2人を行かせて良かったの?僕にはアマンダが本当に観劇を観たいと思ってるとは思えないよ。」と言われたけれど、体調を崩してしまった私には止める事は出来なかった。
でも…その判断が間違いだった様だ。
「マリアンヌ様、ロベルト様が御見舞いにお越しです。お会いになりますか?」
「まぁロベルト様が?そうね、お会いするから手伝いをお願い。」
急いで着替え、髪を整える。
準備を終え応接室へ向かう為に扉に向かおうとして窓の近くを通ると、庭のガゼボに人影が見えた。
(あれはロベルト様とアマンダ?)
「どうしてロベルト様を応接室にお通していないの?」
「それが、ロベルト様をお出迎えに出られましたアマンダ様が今日は天気が良いから庭のガゼボでお茶をと仰られまして。申し訳ないありません。直ぐに応接室の方に」
「そうなの、アマンダが…。」
2人は、まるで恋人同士の様に仲睦まじく隣り合って座り微笑んで話している。
あそこに入る勇気が私には残念ながら無い…。
「…やはり気分が優れないわ。ロベルト様には、謝りの言葉を伝えておいて」
そんな事が何回か続いた頃、ウイリアムが部屋にやって来た。
「マリアンヌお姉様、あの2人を放っておいて良いの!?アイツ、マリアンヌお姉様の婚約者だという自覚が無いんじゃないの!?あの女もマリアンヌお姉様の婚約者だと知っていて色目を使ってイチャイチャしやがって!」
「ウイリアム、口が悪いわよ!それにアマンダも貴方の姉でしょう。あの女だなんて…」
「はぁ?僕はあんな女を姉とは思いたくもないよ。いい歳していまだに我が儘言って人を困らせ、聞き入れられないと癇癪を起こして泣き叫び、何でも自分が1番じゃなきゃ嫌だと騒いでいる我儘馬鹿女じゃん!」
「ウイリアム、それは言い過ぎよ!」
確かにアマンダは幼少の頃から落ち着きが無く、いつでも両親や私の関心が自分に向けられていないのを嫌がり、我儘や癇癪を起こして騒ぎを起こしていた。
両親も私もその度にアマンダの我儘を聞き甘やかしてきた。
けれどそれもウイリアムが産まれるまでのこと。
ウイリアムが産まれた事でお母様はアマンダにもしっかりしてもらおうと甘やかす事をやめて家庭教師も付けて伯爵令嬢としてしっかり躾けようと頑張っていたのだけれど…。
「マリアンヌお姉様は、アイツが好きだったのではないの?あんな女に婚約者を取られても良いの!?」
私の初恋は婚約者のロベルト様だ。
ロベルト様と婚約が決まったと聞いた時は、嬉しくて興奮して夜も眠れなかった。
だからこそ好きなロベルト様が私ではなくアマンダを選ぶのであれば私は潔く身を引きたいと思う。
窓辺から見るロベルト様は、とても幸せそうで私には、あの笑顔を見せる事はない。
「ロベルト様が幸せになるのなら…」
「マリアンヌお姉様は、本当にそう思うの?あの女は、ただお姉様の物を奪って楽しんでいるだけだよ!いつもマリアンヌお姉様の物を欲しがって泣き喚いて。」
「それでも…ロベルト様がアマンダを選ばれるのであれば、私はそれを受け入れて身を引くわ」
ウイリアムは呆れていたが、チラッと窓の外でイチャつく2人を見て何か呟いていた。
「まぁあんな馬鹿女に引っ掛かる様な馬鹿な男には、僕の大切なマリアンヌお姉様を渡さなくて良かったのか…」
「マリアンヌお姉様の気が変わらないうちに、少し突っいてみるか…」
ウイリアムが部屋を出て行くと外が騒がしくなった。
窓から覗くとロベルト様とアマンダとウイリアムの姿がガゼボに見える。
此処からでは何を話しているのか聞こえないが、アマンダがウイリアムを怒鳴っている様だ。
ウイリアムは一体何をしたのかしら?
3人の姿が見えなくなり、少しすると執事が部屋にやって来て、お父様が呼んでいると伝えられる。
ノックをし応接室に入れば、お父様の他にロベルト様とアマンダ、ウイリアムが座っていた。
「お父様、お呼びでしょうか?」
渋い顔をした父に、ソファに掛ける様に促されウイリアムの隣に座る。
「マリアンヌ、落ち着いて聞いてくれ。ロベルト君が、お前との婚約を解消しアマンダと婚約したいと申し入れてきた。」
2人で手を繋いで並んで座っている姿を見て、そうでは無いかと思っていたけれど、まだ正式に解消したわけではないのに婚約者の前で堂々と手を繋いでいるのはどうなの?
アマンダも勝ち誇った顔を私に向けないで欲しい。
「…そうですか。わたくしはお父様に全てお任せ致します。」
「すまないマリアンヌ。俺は君とではなくアマンダと結婚したい。アマンダは俺にとってかけがえのない運命の相手なんだ!」
「お姉様ぁ、本当にごめんなさ~い。私、ロベルトとは真実の愛で繋がっている運命の相手なのだと気が付いてしまったの。まさか運命の人がお姉様の婚約者だなんて。諦めようとしたのよぉ~。でも真実の愛で結ばれた運命の2人が結ばれないなんておかしいでしょう?お姉様は運命の相手を引き離すなんて、そんな事はしないでしょう?ねっ、お姉様」
「そう、真実の愛なのね。勿論そんな2人を引き裂く事は私には出来ないわ…おめでとうロベルト様、アマンダ。運命の人に巡り会えて良かったわね。」
(…真実の愛か。
ロベルト様の運命の人は私ではなくアマンダなのね。)
私の婚約解消を決めたお父様は、直ぐにロベルト様のお父様に連絡をし、私とアマンダの婚約者の交代という形で手続きをした。
「マリアンヌ、お前には辛く悲しい思いをさせたが、我が家としてはアマンダが片付いてくれてホッしている。このまま何事もなくロベルト君と無事に結婚してくれれば良いのだがな。」
「アマンダには子爵夫人が務まる様に、家庭教師は雇わずにお母様自身が指導すると仰っていましたが大丈夫なのでしょうか?」
アマンダは伯爵令嬢としての淑女教育も嫌がり、家庭教師を何人も辞めさせた。
(私が心配する事ではないわね。)
今日も窓からガゼボに居る2人の姿が見える。
ロベルト様が今日も笑っている。
隣に居るのは私では無い事に胸が痛む…。
侍女のマリーが気付き、そっとカーテンを閉めてくれた。
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