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第一章
30. 誘拐 1
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ゆらりゆらり揺れる体。振動、蹄の音。意識が浮上する。頭が痛い。なんだこれ。混乱している頭を立て直す様に記憶を整理する。先を走るエマお追いかけようとして・・・誘拐された・・・か。エマ、エマは大丈夫だろうか。モタモタせずに早々と逃げ出そうとするべきだった。そうすればエマを巻き込むこともなかったのに。
私は後悔の念に苛まれた。だが後悔しても遅い。起こったことは変わらない。一刻も早く逃げ出してエマの無事を確かめなければならない。とにかく今はこの手足のロープを切ることが先決だ。両手は後ろ手に一つにまとめられ、足は足首にロープが巻かれ両足がひとつにまとめられている。
このロープは耐魔ロープだろうか?
試しに魔力でロープを切ろうとしたが魔力がロープに吸い込まれていった。やはり耐魔ロープか。歯でロープをかじってみるも噛み切るまでには何時間もかかりそうだ。
この馬車に乗っている間がチャンスだろう。今ならば敵はまだ2人だけだ。意識を失ってどれくらい経ったのだろうか。
キュイっ、キュイっ
ポンチョの下から音がする。キュロだろう。
「しー、静かにして。今、ピンチなんだ。」
そう言葉をかけるもキュロはお構いなしだ。
なんとか黙らせようと、腰ひもを回転させキュロを手の所まで移動させ籠を外した。キュロを見ると黄色い体に顔ぐらいある大きな耳、耳の先と鬣、尻尾に茶色の毛が混じっている。これが本来の姿らしい。大きな目を細めたり見開いたりしている。手をしきりに口に当て、あむあむと口を動かす。まるで腹へったと言っているかのようだ。
それどころじゃないのにな。
そうは思うが、何度も鳴かれては困る。
「いいか、今、私たちは大ピンチだ。うまく逃げ出さないとこの先、生きていられるかもわからない。君にはこれをあげよう。お願いだから大人しくしてくれ。」
私はそういうと、腰の巾着の中から少し焦げたクッキーを取り出し、キュロにあげた。
キュロはすごい勢いで平らげ、承知したとばかりに頷いた。
「君に何ができるのかは分からないけど、逃げるのに協力してくれたらまたクッキーをあげる。」
先ほどの様子からクッキーが気に入ったのだと判断し協力をお願いしたのだが、ご褒美クッキーは思ったより効果がありそうだ。キュロはチャっと姿勢を正して、キリっとした顔をした。
「このロープ、解けるか?」
一応キュロに聞いてみるが、キュロは首を振っただけ。そうだよな。さすがに無理か。
どれくらい気を失っていたのかが分からない以上は迷っている時間はないな。
ロープに魔力が効かないなら、自分の手にやるしかない。
後ろ手に結ばれた状態のまま、巾着の中から小弓と眠り玉2個を取り出し床に並べる。口にその辺の布を咥えると魔力と繋がれている右手、体重を使い一思いに左手親指の骨を砕いた。
ぐっ。
呼吸が熱い。左手の親指に急速に熱が集まってくるのが分かる。私は腫れる前にロープから手を引き抜いた。
「なんだ?いま、音がしたよな。」
男の一人が後ろを覗いた瞬間、荷台に積まれていた大きな木箱と左手で小弓を挟んで固定して持ち、右手でセットした眠り玉を放った。顔に命中した男はそのまま崩れ落ちる。
「おいっ!おいっ!」
もう一人の男は馬車を運転したまま片手で倒れた男を揺さぶった。その手を目がけてもうひとつ眠り玉を放った。
もう一人の男も倒れる。小弓を口にくわえ、両手をついて座席を飛び越えた。両足を結んでいるロープが邪魔だが今は馬車を止めることが先決だ。手を伸ばしてなんとか手綱をつかみ思いっきり引っ張った。
馬は嫌そうに首を振ったが、仕方なしに止まった。馬車が止まるとすぐに足のロープを解く。左手の親指はこれでもかというくらいパンパンに腫れあがっていたが今は見ないことにした。少しでも左手に力を入れると激痛が走る。次の行動を思い描くことで痛みに意識がいかない様にした。
「キュロ!おいで!」
私の声に反応してキュロがやってくる。私は馬と馬車との連結を解くと馬に跨った。
とにかく街に戻らなくては。
ここがどのへんなのかさっぱり分からないが進行方向とは逆に馬を走らせれば街に近付くだろう。船着き場で待っている人たちに気付かれる前に街に入りたい。キュロをポンチョの下に入れると馬を走らせた。
道は両側に林のある一本道。今どこにいるのかが分からない以上、一本道というのはありがたかった。だが、これは同時に敵にも見つかりやすいと言えた。森に入るにはここの森の性質が分からなすぎる。手がこの状態のまま魔獣に会うのは避けたい。見つからないようにと祈りながら、私はひたすら馬を走らせた。そのまま30分は走っただろうか。キュロが高い声をあげた。動物のこういう声は良く知っている。警戒音だ。
私は馬から飛び降り、森の草むらに姿を隠した。そのまま走り続ける馬を飛獣石に乗った男が追ってゆく。
「誰も乗ってないぞ!その辺にいるはずだ。探せ!」
獣魔石から二人下りると森の中を捜索し始めた。草むらをかき分ける音が近づいてくる。
私は巾着から小弓と眠り玉を取り出した。小弓を構えようとするも左手に激痛が走り、小弓がうまく持てない。焦りばかりが強くなる。
ガサっ
目の前の草がかき分けられ、黒いレンズの眼鏡をかけた男の顔が目前に現れた。
見つかった。そう思ったのに、男が呟いた言葉は「ちっ、ここにもいねぇか。」だった。
もしかして見えていないのか?なぜ?・・・まさか!
キュロを見るとキュロの体が青く光っている。もしかしてキュロの擬態か?
キュロの擬態が私にまでかかっている?疑問は消えないが、キュロのおかげで助かったのは間違いないようだ。
「ありがとう。あとでたくさんクッキーをあげるね。」
私がそういうとキュロはなんだかドヤ顔をしたように見えた。
「もっと向うなんじゃねぇか?俺たち、追い越しちまったのかも。」
男たちはそう言うと来た道を引き返し始めた。男たちの姿が十分に遠ざかったところで、街へ向かい歩き始める。
師匠に、レイに、会いたい。エマは大丈夫だろうか。手当してもらえているだろうか。
あぁ、お腹も減った。
朝ごはん、食べ損ねたな。
私は後悔の念に苛まれた。だが後悔しても遅い。起こったことは変わらない。一刻も早く逃げ出してエマの無事を確かめなければならない。とにかく今はこの手足のロープを切ることが先決だ。両手は後ろ手に一つにまとめられ、足は足首にロープが巻かれ両足がひとつにまとめられている。
このロープは耐魔ロープだろうか?
試しに魔力でロープを切ろうとしたが魔力がロープに吸い込まれていった。やはり耐魔ロープか。歯でロープをかじってみるも噛み切るまでには何時間もかかりそうだ。
この馬車に乗っている間がチャンスだろう。今ならば敵はまだ2人だけだ。意識を失ってどれくらい経ったのだろうか。
キュイっ、キュイっ
ポンチョの下から音がする。キュロだろう。
「しー、静かにして。今、ピンチなんだ。」
そう言葉をかけるもキュロはお構いなしだ。
なんとか黙らせようと、腰ひもを回転させキュロを手の所まで移動させ籠を外した。キュロを見ると黄色い体に顔ぐらいある大きな耳、耳の先と鬣、尻尾に茶色の毛が混じっている。これが本来の姿らしい。大きな目を細めたり見開いたりしている。手をしきりに口に当て、あむあむと口を動かす。まるで腹へったと言っているかのようだ。
それどころじゃないのにな。
そうは思うが、何度も鳴かれては困る。
「いいか、今、私たちは大ピンチだ。うまく逃げ出さないとこの先、生きていられるかもわからない。君にはこれをあげよう。お願いだから大人しくしてくれ。」
私はそういうと、腰の巾着の中から少し焦げたクッキーを取り出し、キュロにあげた。
キュロはすごい勢いで平らげ、承知したとばかりに頷いた。
「君に何ができるのかは分からないけど、逃げるのに協力してくれたらまたクッキーをあげる。」
先ほどの様子からクッキーが気に入ったのだと判断し協力をお願いしたのだが、ご褒美クッキーは思ったより効果がありそうだ。キュロはチャっと姿勢を正して、キリっとした顔をした。
「このロープ、解けるか?」
一応キュロに聞いてみるが、キュロは首を振っただけ。そうだよな。さすがに無理か。
どれくらい気を失っていたのかが分からない以上は迷っている時間はないな。
ロープに魔力が効かないなら、自分の手にやるしかない。
後ろ手に結ばれた状態のまま、巾着の中から小弓と眠り玉2個を取り出し床に並べる。口にその辺の布を咥えると魔力と繋がれている右手、体重を使い一思いに左手親指の骨を砕いた。
ぐっ。
呼吸が熱い。左手の親指に急速に熱が集まってくるのが分かる。私は腫れる前にロープから手を引き抜いた。
「なんだ?いま、音がしたよな。」
男の一人が後ろを覗いた瞬間、荷台に積まれていた大きな木箱と左手で小弓を挟んで固定して持ち、右手でセットした眠り玉を放った。顔に命中した男はそのまま崩れ落ちる。
「おいっ!おいっ!」
もう一人の男は馬車を運転したまま片手で倒れた男を揺さぶった。その手を目がけてもうひとつ眠り玉を放った。
もう一人の男も倒れる。小弓を口にくわえ、両手をついて座席を飛び越えた。両足を結んでいるロープが邪魔だが今は馬車を止めることが先決だ。手を伸ばしてなんとか手綱をつかみ思いっきり引っ張った。
馬は嫌そうに首を振ったが、仕方なしに止まった。馬車が止まるとすぐに足のロープを解く。左手の親指はこれでもかというくらいパンパンに腫れあがっていたが今は見ないことにした。少しでも左手に力を入れると激痛が走る。次の行動を思い描くことで痛みに意識がいかない様にした。
「キュロ!おいで!」
私の声に反応してキュロがやってくる。私は馬と馬車との連結を解くと馬に跨った。
とにかく街に戻らなくては。
ここがどのへんなのかさっぱり分からないが進行方向とは逆に馬を走らせれば街に近付くだろう。船着き場で待っている人たちに気付かれる前に街に入りたい。キュロをポンチョの下に入れると馬を走らせた。
道は両側に林のある一本道。今どこにいるのかが分からない以上、一本道というのはありがたかった。だが、これは同時に敵にも見つかりやすいと言えた。森に入るにはここの森の性質が分からなすぎる。手がこの状態のまま魔獣に会うのは避けたい。見つからないようにと祈りながら、私はひたすら馬を走らせた。そのまま30分は走っただろうか。キュロが高い声をあげた。動物のこういう声は良く知っている。警戒音だ。
私は馬から飛び降り、森の草むらに姿を隠した。そのまま走り続ける馬を飛獣石に乗った男が追ってゆく。
「誰も乗ってないぞ!その辺にいるはずだ。探せ!」
獣魔石から二人下りると森の中を捜索し始めた。草むらをかき分ける音が近づいてくる。
私は巾着から小弓と眠り玉を取り出した。小弓を構えようとするも左手に激痛が走り、小弓がうまく持てない。焦りばかりが強くなる。
ガサっ
目の前の草がかき分けられ、黒いレンズの眼鏡をかけた男の顔が目前に現れた。
見つかった。そう思ったのに、男が呟いた言葉は「ちっ、ここにもいねぇか。」だった。
もしかして見えていないのか?なぜ?・・・まさか!
キュロを見るとキュロの体が青く光っている。もしかしてキュロの擬態か?
キュロの擬態が私にまでかかっている?疑問は消えないが、キュロのおかげで助かったのは間違いないようだ。
「ありがとう。あとでたくさんクッキーをあげるね。」
私がそういうとキュロはなんだかドヤ顔をしたように見えた。
「もっと向うなんじゃねぇか?俺たち、追い越しちまったのかも。」
男たちはそう言うと来た道を引き返し始めた。男たちの姿が十分に遠ざかったところで、街へ向かい歩き始める。
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朝ごはん、食べ損ねたな。
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