【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第二章

7. 飛獣石とマリア

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まずは飛獣石に触れ魔力を送ってみることにした。魔力は飛獣石の中に入らず、飛獣石の外側を伝うだけだった。
そうだよな。意識に侵入するってどういうことなのだろう。クルッとリベルダ様の方を見る。

「お前はバカか!お前がやったのは魔力を当てただけだ。当てればそりぁ、伝っていくわ!」

容赦なく怒号が飛んできた。

「飛獣石に意識を集中しろ。飛獣石の中に核のようなものを感じるだろう?そこが飛獣石の意識だ。その意識の中に
自身の魔力を滑り込ませる。最初は薄く、少量だ。そうやって少しずつ自分の魔力を飛獣石の魔力に溶け込ませてゆく。それを短時間で出来るようにし、最終的には魔力を供給しながら飛ぶ。以上だ。」

「な、なんかレベル高くありませんか?」
「あぁ?」
「いや、何でもないです。」

リベルダ様はスパルタだ。ライファもこうやって調合を学んでいたのだろうか。そりゃあ、ドゥブ毒の解毒剤も作れるわけだ。

「早くやれ。」

リベルダ様の視線に急かされるまま、再び魔力を通し始めた。

そのままやり続けること3時間。飛獣石の核を見つけることはできたが、魔力を滑り込ませることが出来ない。滑り込ませようとしても弾かれるばかりなのだ。
まだ細く、薄くが足りないのだろう。とにかく。細く薄くを意識する。

「飯だぞ。」

気づけばリベルダ様が隣にいて、食事を持ってきてくれていた。
籠には果物がたくさん入っている。

「ライファがいないとこうなるんだ。」
「あ、ありがとうございます。」

私は籠を受け取ると服で軽く拭いて口にいれた。果汁が体に沁み渡ってゆく。そういえば水分を取るのも忘れていたな。

更に3時間が経過した。もう魔力は殆ど残っていない。ヘロヘロになりながらリベルダ様の元へ行く。

「なんだ、もう無くなったのか。魔力ランク9もあればまだまだ持つんだがな。お前は余程魔力をまき散らしているらしい。」

うぅ、ぐぅの根も出ない。

「ほら、回復薬を飲んだらマリアがお待ちかねだぞ。」

そうだった。ストレス発散って何をするのだろう。

「ありがとうございます。」

回復薬を一気に流し込めば、体が熱を帯び魔力が回復してゆくのを感じる。魔力の回復は出来たものの、慣れない意識侵入を繰り返したせいで精神力が消耗しているのを感じた。

「回復したか?」
「はい、もう大丈夫です。」

リベルダ様がマリア様を呼ぶと、マリア様は大きな魔力を隠しもせずにやってきた。

「ちょうど運動したいと思っておりましたの。」

・・・嫌な予感がする。


「レイ、手加減は無用だ。マリア、お前は手加減しろよ。」

リベルダ様が声をかける。私には手加減するなというクセにマリア様には手加減しろという言葉に、分かっていてもムッとした。

「とどめを刺す手前まで。思う存分戦え。」

リベルダ様の声を合図に私とマリア様は同時に離れた。
隠しもしないマリア様の魔力が風を起こし草が靡く。体の外側に結界を張らないと飲み込まれてしまいそうだ。
私は刀を抜いた。

刀を振り上げ魔力を飛ばすかのように振り落す。私が飛ばした魔力はマリア様の魔力を引き裂きながら真っ直ぐマリア様へと飛んでいく。

マリア様は私が飛ばした魔力を蚊でも払うかのように軽く、ほんの指先を動かしただけで逸らした。

なっ。

「魔力ランク9というのはこの程度ですの?」

ポソッと呟いたかのようなマリア様の声が聞こえたと思った瞬間、マリア様が隣にいた。すでに手には大きな魔力の塊があり私にぶつけると破裂させた。

間に合うか!?

私は体をねじることで魔力の中心から逃れ、更に魔力を放出することで結界を作りつつマリア様から遠ざかった。顔の皮膚が裂け、血が流れる。

「まだまだ、楽しいのはこれからですわ。」
「はぁ、はぁ。」

魔女の魔力ランクは高いとはいえ、私との差などほぼ無いはずだ。もしかしたら私の方が魔力ランクは上かもしれない。それなのに、これほどまでに差があるとは。マリア様はちょこちょこ歩きながら魔力を飛ばしてくる。それをいちいち避け、止めるたびに消耗していく魔力。

「これでは、つまりませんわ。」

マリア様が大地に手をつけると地面が盛り上がり蔓が現れた。咄嗟のことに判断が鈍る。なんとか避けようと飛んだ先にはマリア様がおり、そのまま私の襟元をピッと摘まんだ。
それだけ、たったそれだけのことで私の自由は奪われた。

そして今、マリア様に蔦でぐるぐる巻きにされリベルダ様の前に座らされている。

「見ていて泣きそうになるくらい情けないぞ、レイ。」

本当に、自分の弱さに泣きたいのはこちらの方だった。

「これではストレス発散になんかなりませんっ!!」

マリア様が子供のように駄々をこねている。

「ったく、仕方ないな。」

リベルダ様がジロリと私を睨む。

「・・・すみません。」
「落ち込むくらいならちゃんと見ておけ。魔力ランク9の力を見せてやる。」

リベルダ様はそう言うと今までに見たこともないくらい好戦的な目をした。


グルグル巻きのまま、離れたところで向き合う二人を見ている。

マリア様が一気に魔力を体内に循環させリベルダ様に突進する。目で追うのもやっとという程のスピードだ。そのスピードのマリア様をリベルダ様は腕だけを動かし一気に地面に叩きつけた。どうぅううん!!音を残したまま、砂ぼこりを抜けて二つの影が宙を飛ぶ。

いくつもの魔法陣が宙に描かれ輝き、マリア様の皮膚を切り裂いてはリベルダ様の服をも切り裂く。それが終わったかと思えば互いに離れ、互いに魔力を打ち放つ。魔力はぶつかり合い同時に消えたかに思えた。

「なっ!」

マリア様が声を発した。
ぶつかり合った魔力は打ち消されたがリベルダ様が発した魔力は二重構造になっており、打ち消された魔力の中から魔力が生まれマリア様に襲い掛かったのだ。マリア様は両手で防御をしたが、リベルダ様が放った二重構造の小さな魔力は飛びながら鋭い矢のように形を変え、マリア様の防御を突き破った。

マリア様が静かに地面に下りてくる。両手にはリベルダ様の魔力が貫いた穴が開いていた。

「やられましたわ。ジュリア、調合室からヒーリング薬を持ってきてください。効力は7でお願いしますわ。」
「大丈夫ですか?」

傷だらけで両手が血まみれのマリア様に、思わず声をかける。

「大丈夫だ。いつものことだ。」

マリア様が答えるよりも先にリベルダ様が答えた。ジュリアが持ってきたヒーリング薬をマリア様が飲む。

「だいたい、お前は戦いになるとアドレナリンが出過ぎる。戦いの昂揚感に夢中になるから隙が出来るんだよ。」

ヒーリング薬により、体が修復し始めているマリア様は口を尖らせていう。

「んもうっ、リベルダはいつもそればかり。」

二人はあーだこーだ言いながら建物の中にもどって行った。

「あの・・・この蔦は・・・。」

私はよろよろと立ち上がると、グルグル巻きのまま二人を追いかけていった。


魔女の家からジェンダーソン家へ魔獣石を飛ばしながら、私は今日の出来事を思い返していた。一日の間に何度自分の未熟さを思い知ったのだろう。リベルダ様とマリア様のあの戦いは凄かった。いくつもの魔方陣を操りながら魔力を飛ばし、相手の動きを読みながら攻撃をしかけ、かわす。

それに・・・。

リベルダ様のあの最後の攻撃、あれは一体何だったのだろう。大きな魔力がぶつかって消滅したかと思えば、その中に小さな魔力の塊が生まれ、マリア様に迫りながら形状を変化させた。あんなことが可能だなんて・・・。もしも魔女が敵になったとしたら国なんか簡単に滅ぶのではないか、そう思うと身震いがした。

ヘロヘロのまま家に辿りつき、ベッドに倒れる。シャワーを、と思ったのは束の間、気づけば朝になっていた。

それからは毎日、騎士団から帰宅すれば裏庭にこもり飛獣石に触れ意識を侵入させる練習をした。さすがにリベルダ様の元にいた時のように自身の魔力を空にするほどは練習できないので、自身の魔力を半分は残す様にしている。そんな日が3日程続いた日、いつものように森にいるとリトルマインに干渉してくる魔力を感じた。

まさか・・・と思い部屋へ急ぐ。リトルマインを手に取ればほんのりライファの魔力の気配がある。


胸が高揚するのを感じた。

私は急いでリトルマインに魔力を通すと「ライファ。」と話しかけた。ライファの魔力がまだリトルマインに残っていたからだろう。リトルマインからベッドにうつ伏せになるライファの姿が見えた。

「ライファ、眠ってるの?」

耳元に声をかけるとライファが、ガハッと勢いよく起きた。

「レイ?おぉ、レイだ!こちらからは話しかけられないのかと思った。」

ライファはそう言うとニコっと笑った。

「どうしたの?」

そう聞くと今度はうふふふふ、と低い声で笑った。

「聞いてレイっ、今日凄いことがあったんだ。私が作ったのびケーキがね、あ、のびケーキって髪の毛が伸びるケーキなんだけど」

ライファが嬉しそうに話してくるのが嬉しい。

「なんと、300万オンで売れた!」
「へっ、300万オン!?」

「正確に言えば、独占契約料が300万で、その他にケーキ1つあたり5千オンで売る契約を結んだんだ。」
「おぉー!ライファ、すごい!」
「でしょー。むふふふ、レイならすごいって言ってくれるかもと思ったんだ。」

ライファがニコニコしながら体を揺らす。

「レイは元気だった?」

ライファがリトルマインの頭を触っているのがわかる。
なんか、くすぐったいな。

「うん、元気だよ。今、元気になった。」

「ふふふ、なんだそれ。」

ライファに触れられている頭から、耳に聴こえる声から、心の中の何かが満たされていくのが分かった。

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