【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第二章

8. ケビンとクロッカ

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クロッカさんと二人で通帳を眺めている。調合料理研究室名義の通帳に309万5千オンの記載。

「ではこのお金を分配しましょう。クロッカがパチパチと計算機を弾く。単純にこのお金の半分はライファのもの。
3割がこの研究室のもの、2割が魔木研究室へ。で、いいのかしら?というか、契約料の300万オンは魔木研究室にはあげなくてもいいんじゃない?」

「いや、魔木研究所には渡した方がいいと思います。何かしらの理由をつけて育てるのをやめられては困りますし。うちであの魔木を育てるには人員が足りないので、できるだけ魔木研究室で育てて欲しいのです。60万オンと木の実代で1万9千オン。61万9千オン渡せば、しっかりと育ててくれるんじゃないでしょうか。もしかしたら今後、もっと木を増やすことになるかもしれませんし、その場合にもちゃんと対応していただけるようにお願いもしたいです。」

「確かに、ライファのいう通りね。ふふふ、奴らをひれ伏させてやるわ!」

クロッカさんがガオーッと両手を伸ばす。因縁でもあるのだろうか。


コンコン

「はいどうぞ。」
「クロッカ室長、トトです。」

ドアを開けるとトトさんが両手に荷物を持って立っていた。

「トトさん?どうしたの?」
「調合研究室をやめてきました。ぜひ、こちらに置いてください!!」
「なにぃっ!?」

クロッカさんは驚いて声を上げ、少しだけ考える様な仕草をした。
トトが調合料理研究室に入りたいというのは絶対あののびケーキが目的だろう。

「まぁ、いいわ。うち、二人しかいないしね。それに、ライファが料理する時には魔力のある助手が必要でしょう?あれ?トトは魔力ランクいくつだっけ?」

「ランクは7です!」

「なら十分じゃない?トトがいれば私がいなくても料理が作れるようになるもの。トトの目的はのびケーキでしょうけど。」

トトさんはそんなことはないです!といいつつも、あのケーキを研究室仲間価格で譲ってもらうことはできますかね?と聞いてきた。

やはりそうか。

その後、午前中のうちにと3人で銀行に行く。

「奴らには現金よ。現金を見せた方が効果があるわ!」とはクロッカさんの言葉だ。窓口へ行き現金をもらう。

「そういえばライファ、通帳は?」
「持っていません。」
「金額が金額だし、あった方が安全だと思うけど作っておく?」
「はい!そうします。」

口座は魔力ランクが3以上あるのなら自身の魔力を登録したものが有効になるが、魔力ランクが3以下になるとセキュリティ面から自身の魔力と銀行員の魔力を混ぜて登録し、その魔力をリングに定着させたものが口座のキーとなる。

私は口座を作り144万オンを預け入れた。残りはナターシャさんに宿代として1か月分払い、あとは当面の生活費にするつもりだ。通帳に記載された数字を見てニヤリとする。これで、ようやく美味しい物探しができる!!
ターザニアに来て以来、節約のために外食も買い食いもせずにいたのだ。

「ぐふふふふ」思わず毀れた声に、クロッカさんとトトさんが引きつった笑みを浮かべた。


研究所の食堂で昼食を終えた午後。

「さぁ、行くわよ!」

まるで決闘にでも向かうかのように威勢よくクロッカさんが立ち上がった。

コンコンコン

「はーい。」

間延びしたようなのんびりした声が聞こえ、扉が開いた。

「副室長自らドアを開けてくださるなんて、副室長はお暇そうですね。」

クロッカさんがニコリと微笑む。

「やぁ、クロッカ。君の大きな足音が聞こえてね。ちょっと最近太ったんじゃないか?」

そう言ってケビンさんも笑みを深くした。クロッカさんはそんなケビンさんの言葉には触れず、お話がありますの、とすまし顔で言った。前回とは違い、魔木研究室の応接室へ通される。応接室と言っても研究室の一部を仕切りで囲んだもので、テーブルとソファがあるだけの質素な空間だ。綺麗な声でささやくように歌う魔木が飾られているのは、さすが魔木研究室といったところか。

「それで話というのは何?」
「先日のクルクルの木のことですけど。」

トン、と音をさせてクロッカさんが封筒をテーブルの上に置いた。

「約束の2割を持ってきました。」

ケビンさんはどれどれという風に封筒を持ち、その厚さに少し驚いたような表情をみせた。中身をみて確認する。

「は!?なんだ、この大金は!」

ケビンさんの反応に満足したようにクロッカさんがふふん、と笑う。

「クルクルの実の独占契約料とのびケーキの代金よ。私だってやる気になればこれくらい出来るんだから!」

どうやら、一番言いたかったのは後半の部分のようだ。

「わかった、わかった。君がこの研究室を去ってから初めて、ようやく手に入れた成功だもんな。素直におめでとう、と言わせてもらうよ。」

褒めつつもなぜか偉そうなケビンさんだが、そのあたりはクロッカさんには気にならないらしい。

「あの、私もお話させていただいてもいいですか?」

クロッカさんがすっきりした顔をしたのを見て、私も話しかけた。

「どうぞ。まぁ、このお金は君の功績だろうし、君から話を聞こうか。」

ケビンさんが悪びれもせずに言う。ハッとクロッカさんを見たけれど、クロッカさんはあの一言を言ったことで満足したらしく、心ここにあらずの様子でお茶を啜っていた。よかった、聞いてなかった。聞いていたら煩くなっていたに違いない。

「のびケーキ用のプロモーション動画を作るために美容室に行ったところ、そこのオーナーさんの目に留まって、専属契約を結ぶことになりました。今後はクルクルの実1個あたり8千円で調合料理研究室が買い取ります。オーナーさんの希望次第ではクルクルの木の栽培本数を増やしてもらうことになるかもしれませんが、それは可能でしょうか?」

「そうだなぁ。スペース的に増やせるとしてもあと1本が限界かなとは思うが、研究費はあるにこしたことはない。考えてみよう。ところでそんなに売れるものなのか?」

「わかりませんが、オーナーさんの様子を見る限り勝算があるのだろうなとは思います。それから、クルクルの木について知りたいのですが、実はどれくらいの期間で収穫出来ていくつくらい収穫できるのですか?」

「あの実は年に2回収穫できる予定だ。今の季節と秋の終わりだな。一つの木で30個程度収穫が可能だ。」

「あの実が年中供給できるように、保管庫か何かありませんか?」
「ある。だが、貸してやるかはクロッカ次第だな。」
「なんですと?」

自分の名前が聞こえたのか、クロッカさんが俊敏に反応する。

「週1デート、これが条件だ。」

「「えぇっ!?」」

私とクロッカさんの声が揃う。そういう関係なのか!とクロッカさんを見た私に対して、クロッカさんはケビンさんを見ている。

「それはイヤです!」

あ、はっきりと断った。あれ、そういう関係ではないのか?

「でも、それじゃあ保管庫は貸せないぞ?」

クロッカさんは黙り込む。そんなに嫌なら保管庫は他で借りてもいいんじゃないですか?と言おうと口を開きかけたとき、真っ赤な顔をしたクロッカさんがポソッと言った。

「・・・二週間に一度ならいいわ。」

え?そうなの?

「じゃぁ、そうしよう。」

ケビンさんは嬉しそうに目を細めた。
とたんに部屋に甘い空気が充満する。なんだ、これ?どういうことなんだ?

「じゃあ、そういうことだから。君たちは先に戻っていなさい。私たちは少し、打ち合わせをするからね。」

混乱している私と、いいなぁと呟いているトトさんを研究室の外へ送り出すと、ケビンさんはニコニコとクロッカさんの元へ戻って行った。
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