【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI

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第二章

18. 帰省

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翌朝、師匠からチョンピーが届いた。

「丁度良いから帰ってこい。オルヴまではレイを迎えにやる。」

という内容だった。レイを迎えに?師匠とレイが随分仲良くなっている気がするが、オルヴからジェーバ・ミーヴァまでの長距離馬車に乗らなくてよいと思うと随分と気が楽になった。丁度良い、という言葉が気になったが私も師匠や先生に聞きたいことはたくさんある。そうだ!みんなに新しくなった小弓も見せようっ。
帰ると決めると、途端に帰るのが楽しみになった。

研究所へ着くと私は容赦なく人だかりに突っ込んでいった。とにかく、何でもいいから掴めば師匠はともかく先生は喜ぶに違いない。私はいくつかの調合薬と種を掴むと購入した。購入したものをリュックに詰める。師匠にはターザニアの恋愛物語でいいだろう。

レイは・・・レイには何がいいのだろうか。それが一番の問題だな。あ、ヴァンス様にも何か買っていった方がいいだろうか。

その日からは大忙しだった。

長期間の休みになると考えると、のびケーキもブラウニーも前倒しで作っておかなくてはならない。両方とも効力が4ある調合料理だ。トトさんは魔力ランク7、クロッカさんは魔力ランク6あるとはいえ幾つも作れば当然、消費する魔力量は多くなる。二人とも魔力が空になるまで調合料理を作り、回復薬で魔力を回復させる日々だった。

研究所の帰りにレイとヴァンス様用のお土産を探しながら店を回る。レイもヴァンス様も上流貴族で、良い物はたくさん持っている。むしろ、良い物だらけだ。

困ったな・・・。

いくら多少お金はあるとはいえ、二人のお眼鏡に叶うような上等な物など買えるはずもない。
2件目のお店に入った時に、ふかふかの使い心地の良さそうなタオルがあった。タオルの真ん中には大きく言葉が書いてある。二人ともトレーニングはするに違いない。実用的だし、これなら邪魔にならないかも。そう思うとお土産にはぴったりな気がして、私は二人にタオルを買った。

お店を出ようとした時、綺麗な髪紐が目に入って思わず立ち止まった。髪紐は通常、女性が身に着けるものだ。でもそこにあるものは、赤に少しの黒とゴールドの糸が混じっており、レイにとてもよく似合いそうだった。男性に髪紐を贈るってどうなんだろう、と思いつつも身に着けたレイを想像してつい買ってしまった。


 そして帰省の日。
二日間、船に揺られ続けようやく降りたオルヴの街。午前9時頃ということもあり港は賑わいの後の静けさといった様子だ。ぐぅぅぅぅっと両手と背筋を伸ばすとベルも真似して体を伸ばした。

「ライファ!」

少し先で手をあげて駆け寄ってくる姿がある。レイだ。

「ただいま、レイっ」
「おかえり。」

レイが私の頭を撫でる。視線の違和感。そうか、身長が伸びたのか。久しぶりに会ったレイは前よりも身長が伸びて体つきも少し逞しくなったような気がする。

「ライファはご飯食べた?」
「まだだよ。」
「じゃ、どこかでご飯食べてから行こうか?」
「うんっ。」

レイと並んで街を歩く。以前来た時は夜だったし、宿屋ばかりを探していたから気付かなかったけど、こうしてみるとオルヴは観光で栄えているようだ。ツアー客らしき団体ともよくすれ違うし、土産屋や食事処も豊富だ。

「あ、あそこ、あの海産物屋がいい!」

魔女の家は森の中にあるので、海産物を食べる機会が少ないのだ。海の街に来たのなら、海産物だろう。

「いいよ、行こう!」

レイの後ろについてお店に入る。ん?

「レイ、髪の毛がない・・・。」

ポソッと呟くとレイが振り返った。

「あぁ、暑かったから切っちゃったんだよね。」

ぽかん、と口を開けた私をみてレイが複雑な顔をした。

「・・・似合ってないかな?」
「似合ってなくはない。似合ってなくはないけど・・・。」

買った髪飾りの行き場を失くしてしまった。少しだけがっかりしたまま席に着いて、おススメの海鮮料理を注文する。海鮮料理は基本的に塩で食べるのが普通だ。海水を蒸発させて作った塩は、その海で育った生き物によく合う。生で食べることはせずに、薄く切った食材をさっと湯にくぐらせる。

「おいしいっ。さすが海の近くだ。新鮮だから臭みが全然ないね!」

ベルに一切れあげながらレイの顔を見るとレイも頷きながら、美味しいと言って食べている。もう一口と魚を口に入れれば、レイと目が合った。

「なに?」
「ライファは本当に美味しそうに食べるよね。」
「そりゃぁ、美味しいからそういう顔になる。」

子供っぽいということだろうか。少し照れくさくなって顔を引き締めた。

「そういえば、さっき、私が髪を切ったって言ったら微妙な顔になったけど、それはどうして?」
「え?」

顔に出ていたか。レイはいつも鋭い。こういう時は正直に言うに限る。

「実は、レイにお土産で髪紐を買ってしまったんだ。男性に髪紐ってどうかとも思ったんだけど、似合いそうだなって。あ、でも気にしなくていいから。ほら、もう結ぶ髪の毛ないし。」

「どうして?俺、その髪紐、すごく欲しいんだけど。」

レイがデビルレイ風に微笑む。えぇ?なぜに今、デビルレイなんだ?

「髪紐、ちょうだい。」

レイが手を出すから、おずおずと巾着から小さな袋を出して渡した。

「これ、すごくキレイだね。嬉しい。」

レイは嬉しそうに笑うと、右側の長い横髪を少しだけ持って魔力を使ってその髪の毛の先の方に髪紐をつけた。

「どう?」
「すごく似合う!思ったとおりだった。」

レイはまた嬉しそうに笑うと、これ大事にするね、と言った。

「他にもまだあるんだけど、荷物になるから後にするよ。ヴァンス様に渡してほしい物もあるんだ。」

「まさか、兄さんにも髪紐買ってないよね?」

デビルレイが目を細める。

「買ってない、買ってないよ!」

髪紐が似合う男性なんてそういないよ。と心の中で続ける。

「そう、ならいいけど。」

デビルレイはすぐにご機嫌になり、指で髪紐に触れた。





「レイっ!なんかすごく速い!!」

レイに抱きかかえられるように飛獣石に乗り、空を飛んでいる。今までの飛獣石とは比べ物にならないほどのスピードで風に体が押され、圧力でレイの体に押し付けられる。私の重さでレイの体も押されているはずなのに、レイの体はしっかりと安定していた。しかも、飛んじゃうといけないからと、髪紐を魔力で守る余裕まである。

「実はリベルダ様に魔力の扱い方を教えてもらっているんだ。おかげで今までの半分の時間で移動できるようになった。魔力はがっつり使うんだけどね。」

レイが私の耳元で話す。なるほど、だからレイが迎えに来てくれたのか。

「レイが迎えに来てくれて助かったよ。長距離馬車はしんどいのだと知った。」

レイがクスッと笑う。

「師匠、結構スパルタだろ?大丈夫?」
「あぁ、だいぶ、精神的に逞しくなったと思うよ。打たれ強くなった気がする。」

レイの口調がゲッソリしたような口調だったので、ズケズケものを言う師匠を想像して笑ってしまった。

「私も良く怒られたなぁ。勝手に調合して家を半分吹き飛ばした時には、スージィの木に逆さ吊りにされたもん。」
「逆さ吊りって・・・。リベルダ様、すごいな。家を吹き飛ばすライファも凄いけど。」

レイはトホホ、と言うように私の肩に顎を乗せた。

「ほら、もうすぐ家だよ。」

レイに言われて下を見ると懐かしい景色が広がっている。4か月弱、離れただけなのに、もうこんなにも懐かしい。


「ただいま!スージィ!ただいま!師匠―っ!!」

私が玄関の扉を勢いよく開けると、師匠がやれやれという顔をして出てきた。

「少しは成長したか?」
「ん~、どうでしょうか。でも、ターザニアに行って師匠と先生の偉大さを知りました!」

私がそう言うと、師匠はフンっと笑った。

「してレイ、その髪紐はどうした?」
「ライファにお土産で頂きました。」
「ほーぅ。」

師匠が意味ありげにニヤッと笑う。

「ライファ、髪紐をあげるという行為が何を意味するか知っているか?」
「え?」

「私はあなたが好きです、だ。最も、髪紐は普通、男が女に贈るものだからお前に当てはまるかは不明だがな。」

カッと顔が熱くなるのを感じながらレイを振り返れば、レイはにこやかにほほ笑んでいる。

え?えぇっ?

「何はともあれ、レイの士気が上がるのは助かる。未だに、魔力ばら撒き人間だからな。」

師匠の言葉に明らかにレイが落ち込んだ。



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