【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI

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第二章

31. 食事

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トトさんと一緒に食材を買いに行くと言えばクオン王子も行くと着いてきた。そうなると当然リュン様も着いてくる。結局みんなで食材探しだ。

この村にはお店というものがなく、物々交換をして手に入れるらしい。それでも、お金を全く使わないということではなくて、他の村に食材を売りに行ってお金を手に入れることもしている。交換する物を持たない私たちは、直接農家へ行って食材を購入するという方法をとった。

農家を訪問すれば、お客は珍しいと皆とても良くしてくれる。食材の美味しい調理法を教えてくれたり、味見をさせてくれたり、とにかく親切だ。食べ物を差し出されるたびにクオン王子は私を見て、私はスキルをチェックして大丈夫だと伝える。このやり方にすっかり慣れてしまった。

「俺はライファがいれば安心して食べ物を口に出来るんだな。」

クオン王子が何かに気付いたように言った。

「キースが毒味をしている時は、キースが自分の代わりに毒を受けたらと思うと・・・。」

クオン王子がまた複雑な表情をする。泣きたいのか笑いたいのか分からない表情だ。
そうか。クオン王子は食事の度に自分の代わりにキース様が死ぬかもしれないという恐怖を味わうのか。それを想像すると食事を楽しみにすることが憚れるような気がした。


食材をいくつか購入し帰宅する。夜まではまだ時間はある。ゆっくり休めるようにとリラックス効果のある料理を作ることにした。体力的に、というよりも精神的疲労感の方が大きい気がしたのだ。

メニューはトルティーヤにすることにした。とうもろこしはこの世界にはないのでとうもろこしとは似てはいないが黒花のタネ(ゴマ)で代用する。焼くことで香ばしさも加わり、美味しくなるはずだ。

焼いてから手作りの焼肉のタレを絡めたお肉、野菜、果物に至るまで食材は多種類用意し、それを巻いて必要に応じてタレをつけて食べる。イメージは洋風手巻き寿司だ。こんな時だからこそ、楽しく食べたい。

リラックス効果は別に用意した野菜たっぷりの優しい味のスープにつけた。

お昼ご飯を作りながら、夜ご飯用にと天然酵母を作る。果物の皮を煮沸消毒した瓶に入れ、湯冷ましとポン花の蜜を入れる。瓶のふたをしっかり締め、振ることで混ぜる。その後、トトさんに時短魔法陣を飛ばしてもらい、時折かき混ぜながら発酵させる。

移動しながら食事をとることを考えて、夜ご飯はハンバーガーにすることにしたのだ。


トトさんに二人を呼んできてもらい昼食にする。

「わぁっ!」

テーブルいっぱいに並んだ料理にリュン様が思わず声を上げた。
我慢できなかったのだろう、ベルが飛んできて平たいパンを一枚掴む。

「こらっ!」

ベルは私の声にハッとした顔をしたが、パンを離さずにトトさんの肩へと逃げていった。まったく。

「たくさんの種類の料理があるな。これは何だ?」

クオン王子が聞いてくる。

「トルティーヤという料理です。この平たいパンに好きな物を包んで食べるんですよ。」

私はそう説明すると、包んで食べて見せた。

「ね。」

私の姿をみて、みんなが真似をする。

「これは・・・中に何を包むかで味が随分変わりますね!」

トトさんが言う。

「フルーツを食べる時はこの生クリームを一緒にくるんでみてください。美味しいスイーツになりますよ。」

私が説明すると、リュン様が早速試した。ベルも興味があるらしく、リュン様の隣に行き少し分けてもらっている。以前のブラウニーの時もそうだが、リュン様はきっと甘党だ。

「おいしいっ!ライファさん、これ、帰ったらレシピを教えてください。弟たちにつくってあげたいです。」

なんと、リュン様には弟がいるらしい。たち、というくらいだから一人ではないのだろう。小さいリュン様か、きっとかわいだろうな。

「もちろん。」

そのうち、リュン様とトト様がこの組み合わせが美味しいとか、この組み合わせは微妙だとかで盛り上がり始め、そんな二人の様子を見ながらクオン王子も真似をして包み、マズイ組み合わせを試したのだろう。
「本当に微妙だな」と口元を押さえ呟いた。

その姿をみたリュン様が思わず吹き出して笑い、つられて私もトトさんも笑う。

食べるということは生きるということ。
だからこそ、食事の時間は楽しいものであってほしい。
私はそう思うのだ。





食事が終わり、夜に向けて仮眠をとった。私は皆よりも早く起きて、ハンバーガーを作ることにした。そっと部屋から出る前にクオン王子の方を見ると眠っているようだ。
よかった。なんとか眠れているみたいだ。
私はホッとして部屋を出た。


パンを作る為、サワンヤの粉と天然酵母を混ぜておく。
その間に、ハンバーグ用の食材を切ることにした。

「よし、急ぐぞ。」

私が気合を入れてみじん切りをしていると、クオン王子がやってきた。

「もう起きていたのか。」
「クオン王子こそ、もう起きたのですか。」

私がそう言うと、クオン王子がフッと笑った。

「何か手伝おうか?」
「クオン王子が料理をですか?今までやったことはあるのですか?」

私はびっくりして尋ねた。

「ない、だからやってみるのだ。」

ごもっともである。こうなったら色々と手伝ってもらおう。

「じゃぁ、とりあえず、あの瓶(酵母)に時短魔法陣をお願いします。」

私の言葉に王子がいとも簡単に時短魔法陣を配置する。

「次はこのお肉をみじん切りにしてください。」
「みじん切りとは何だ?」

・・・そこからか。

みじん切りの説明をし切ってもらう。

どぅうんっ!

大きな音に驚いて、私の肩にいたベルがパッと姿を消した。見ればまな板と台座まで割れている。

「・・・まじか。」

目を見開いて呟く。やった本人を見れば、あれ?という表情だ。
これは、あれか。レイの酷いバージョンか・・・。
その後2回ほど破壊しては修復し、微塵切りならぬ大ざっぱ切りが完成した。

王子にパン種を捏ねてもらいながら、私はパンバーグの形成をしている。

「王子があんなに不器用だとは思いませんでした・・・。」

思わず本音を言うと、俺も初めて知った、なんていうものだから可笑しくて笑った。

「そんなに笑うな。」
「だって。王子ってなんでも出来る様な雰囲気をしているから。ぷぷっ。」

二人で笑っていると、トトさんとリュン様が走ってやってきた。

「す、すみません。すっかり寝過ごしました!!」

「私が早く起きただけですから大丈夫ですよ。ぐっすり休めたようで良かったです。」

私がそう言っても、二人は焦った様子のままだ。

「気にしなくてよい。こっちは俺たちに任せて、二人は水の調達を頼む。」
「「はいっ。」」

王子の言葉に二人はホッとしたような表情を浮かべると、水の調達へと向かった。

「次は何をすればいい?」
「丸めて、発酵させます。」

ハンバーグを焼きながら説明し、クオン王子に丸めてもらう。時短魔法陣を使って発酵させ、窯で焼いた。

「肉もパンもいい匂いがする。」

「お肉は数が少ないのでダメですけど、パンならひとつ食べてもいいですよ。あ、でも私も食べたいので半分こにしてください。」

私は答えも待たずにパンを半分にするとクオン王子に渡した。

「あ、熱いから早く受け取ってください!!」

急かして受け取らせ、私は自分の分を口に入れる。ベルが私に手を伸ばしてきていたが、私がパンを口に入れる方が早かった。

「あついっ、ほっ、ほっ、でも、美味しいっ!」

パンはやはり焼きたてに限る。焼き立てのパンはどんなパンにも敵わない。

「うまい!これはパンか!?」

「本当に焼き立てのパンは、素材の香りがふわっと口の中に広がってびっくりするくらい美味しいのですよ。」

「あぁ。こんなに、楽しくて美味しい食事は初めてだ。」

クオン王子が嬉しそうに笑うから私も嬉しくなった。その隣でベルは不機嫌顔である。私がベルにパンを一つ渡すとベルがコロッと表情を変えご機嫌になった。

ほら、料理には人を笑顔にする力があるんだ。
私は改めて料理の素晴らしさを感じていた。


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