【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第三章

5. 犯人の行方

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山小屋を見に行ったその日のうちにコバトウの森までは急げば3時間程で着くからとライファとレイが旅立った。一体どう飛べば3時間で着くのだろうかと疑問に思ったが、きっとレイが言っていた飛獣石に魔力を通したことがあるというあの言葉にキーがあるのだろう。生き急がないように注意してもこの急ぎようだ。本当に無茶をする子たちだ。

「これからどうするのですか?」
ジョンが聞いてくる。

「どうって言われても、今のところあの山小屋しか犯人につながるものは無いですからね。明日、もう一度あの山小屋の付近を調べてみることにします。」

「確かに、それしかないでしょうね。」
ジョンも同意のようだ。

翌日はあいにくの天気だった。雪が降っているだけならまだしも風も強いときたもんだ。雪と風が容赦なく顔にぶつかり皮膚が痛い。目と鼻と口の部分だけ空いたマスクでも被りたいくらいだ。きっとジョンなら喜んで被るんだろうなと思いつつ、山小屋へと向かう。

「あれはどこの騎士団ですかねぇ。」

ジョンが空を見上げて呟いた。下から見上げた状態では視界も悪く、マントらしきものを纏っているから騎士団だろうという予測は出来ても、どこの騎士団かは分からなかった。

「方向的には山小屋ですね。」
私の言葉にジョンが頷く。

「ちょっと急ぎましょうか。」

山小屋へ近づくと5人の騎士団が小屋の周りをうろついているところだった。緑色のマントに美しい女性の横顔と赤い実をモチーフにした紋章を見れば、フランシール国の騎士団であることが分かる。

「お前たちは何者だ?」
フランシールの騎士団が警戒した声を上げた。

相手の目的も相手のことも分からない現状でターザニアの生き残りと名乗ることはしたくない、何か身分を考えねばと思った矢先、ジョンが口を開いた。

「我々はオーヴェルの騎士団です。詳しい事情は話せませんがこの付近に怪しい魔力の痕跡を見つけ調査しているところです。」

詳しい事情が話せないことは騎士団には良くあることだ。こういう場合、話せと凄んだところで労力の無駄になるのでそのまま詳しくは追及しないことの方が多い。私たちの姿を見つけた他の騎士団も集まってくる。

「そちらはフランシールの騎士団の方々とお見受けします。なぜここにいるのか、お話していただくわけにはいかないでしょうか?」

私は極めて丁寧に話しかけた。すると騎士団の一人が前に出てきた。

「私はフランシール騎士団隊長、ギャバンだ。其の方達がガルシア国に関わりがないと証明できない以上、お話しできることは無い。」

ガタイの良いグレイの髪の毛をした男が言う。何とも言えない威圧感のある男だ。

「そうですか。では、あなた方が探しているのはこの山小屋に入る方法ではないですか?」
私の言葉にギャバンが警戒を強めた。

「貴様、この山小屋に入ったのか?」

「貴様だなんてそんな言い方はしないでくださいよ。私はグショウ、こっちはジョン。ちゃんと名前があるのですから。」

私は微笑んだ。
やはり目的はこの山小屋だったか。山小屋にまだ入れずにいるところを見るとどうやら犯人一味ではないらしい。場合によっては何か情報を仕入れられるかもしれない。

「最初にお話ししましたでしょう?怪しい魔力の痕跡を調べていると。その魔力を辿ればこの山小屋に行きつくことはあなた達が証明してくれたじゃないですか。」

「それで何がわかった?」
「自分たちのことは話さずこちらの情報だけいただこうなんてあんまりですよ。」

ジョンが両手をあげて肩をすくめた。

「・・・わかった。ここを調べているということはガルシア側の人間ではないことは確かだろう。いいだろう、情報を交換しよう。」

「交換・・・ね。どうせ情報を渡したところで自分たちでも確認するのでしょう?山小屋の内部へご案内しますよ。」

「ほう、そうだな、確かにその方が手っ取り早い。」



それから私はレイの時と同じように内部へ潜入することにした。
外にはジョンとフランシールの騎士団を3人残し、内部にはギャバンともう一人のフランシール騎士団を連れていく。

「何度かここに入ったことはあるのか?」
内部の豪華さに驚き、異様な空間の歪みに警戒しつつ城の内部を歩く。

「いいえ、昨日初めて来ました。フランシール国もターザニアがなぜ滅んだのか調べているのですか?」
私の直球の問いにギャバンは一瞬こちらを見たが、あぁと言って頷いた。

「一つの国が一晩で滅んだのだ。その脅威が自国に向かないと言い切れる国王などいない。滅ぼした国以外にはな。」

その言葉にハッとした。
フランシールはどこかの国がターザニアを滅ぼしたと思っているのだ。そしてガルシアにその証拠を探しに来た。それが意味するのは、フランシールはガルシアがターザニアを滅ぼしたと思っている、ということだ。

ギャバンは私に連れられていくつか部屋を回った。
魔獣を飼っていたと思われる部屋についた時、その匂いに鼻と口を塞ぎながら「やはりな・・・」と呟いたのを私は聞き逃さなかった。

「この部屋の奥に空間移動魔法陣がありました。どこに繋がっているのかはわかりませんが。」
「ターザニアに決まっている。・・・あの女のいう通りだな。」
「あの女とは?」

私の言葉にギャバンがチッと舌打ちをした。

「グショウさん、ここまで連れて来てくれたことには感謝しますが、これ以上は何もお話しできません。」
ギャバンの目を見て、本当にこれ以上話してはくれないだろうと判断した。


次に行ったのは私たちが何の痕跡も発見できなかった薬臭い部屋だ

「ここは薬臭いな。調合部屋か?」
「そうっぽいですね。」

ギャバンともう一人の騎士団が話をしている。

「魔獣に何らかの薬を飲ませて狂暴化させていたはずだと言っていた。ここで調合していたとすれば辻褄は合う。」
「と、するとここに?」

「あぁ、あの女の言うことが当たっているのなら証拠があるだろうな。グショウさん、この部屋になにか変ったものはなかったか?何か持ち出したりは?」

「変わったものもなかったですし、持ち出してもいませんよ。」

ギャバンはそうか、と返事をしながら部屋の壁際に行きしゃがんだ。そして右手を床につけると、「恐ろしいくらい当たりやがる」そう言って魔力を発し、腕をぐぐっと持ち上げると床から棚が出てきた。

なんだと!?

声にさえしなかったが、こんな空間があったとは気が付かなかった。
そしてギャバンはその棚の扉を開けると、「これが証拠か」と呟いた。ギャロンの手にはガルシアの紋章の入ったナイフが握られていた。

「王家に代々伝わるナイフだ。王家の人間が出入りしていた証拠になる。」

事件がなにかとんでもない方向へ向かい始めたのを感じてゾクッとした。

「待ってください。王家の人間が大事な刀をこんなところに残していく方が不自然ではないですか?」
「あんな大きなことをやったんだ。通常では考えられないミスを犯してもおかしくはないだろう。」
「決断を下すにはまだ早すぎます!」

「君に何が分かるのだ?我々には信頼できる情報源があるのだ。」

このまま話をしていてもギャバンの情報源への信頼がある限り、こちらの印象が悪くなる一方だ。私は口を噤むしかなかった。

「この部屋で全部です。そろそろ出ましょう。」
「あぁ、必要な証拠は手に入った。」


フランシール騎士団と別れ、コテージに着くなり私はジョンに先ほどの出来事を話しつつ荷造りを始めた。

「ギャバンの言う情報源と言うのが気になります。どこからその情報を得ることが出来たのか。ターザニアとあの山小屋との関係は私でなければ分からないはずです。それ以外に気付いた人がいるとは思えません。」

「つまり、犯人がその情報源となっている可能性は高いですね。」
ジョンの言葉に頷いた。

「ジョン、フランシールへ行きますよ。」
「へいへい。」

ジョンは間の抜けたような返事をしつつも荷造りに協力し始めた。



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