【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI

文字の大きさ
113 / 226
第三章

9. お手伝い

しおりを挟む
「お昼ご飯、よかったの?」
リタさんが手を振って帰る後姿を見送りながらレイが小さな声で私に話しかけた。

「うん、食材は一日では腐らないし。あ、でもお肉はヤバいか・・・。」
「保存魔法かけておこうか?」
「え?あれって結構魔力を消費するんじゃないの?」

「んー、ライファの家にあるようなやつだと定期的に魔力を供給しなきゃならないし、作るのも大変なんだけど、二日程度持たせればいいやっていうのなら、私にとってはそんなに大変じゃないかな。」

「そ、そうなんだ。レイの凄さに頭がチーンてなるわ。」

レイが笑いながら、なんだそれ、と言う。レイとこうして話していると先ほどまで胸の中にあったモヤモヤが晴れていくから不思議だ。それから二時間ほど経っても成果は上がらず、地図を見ながら二度場所を変えて繰り返しても捕、まえられるのはシュトーだけ。

「本当に背中にチョッキ―の実が生えたシュトーなんているんだろうか・・・。」

辺りも暗くなった19時、私たちはガッカリと帰宅した。


 翌朝、今日こそは捕まえると気合十分にフロントへ行くと、リタさんが待っていた。

「今日は私もお手伝いさせてください!この辺の温泉なら全部案内できますし、お二人の邪魔にならないようにしますから!」

「でも、森の中は危険なんじゃないの?この辺のことはよく分からないけど、魔獣が出たりしたら危ないよ。今日は【森のうた】から離れたところにまで足を延ばしてみる予定なんだ。」

レイがやんわりと断るもリタさんは必至だ。

「この辺りの森のことは良く知っています。危なくなったら一人ででもちゃんと逃げます。だからお願いします、お手伝いさせてください。」

リタさんが勢いよく頭を下げた。その姿にレイが困ったように私を見る。連れていかない方がいいだろうとは思っているのに、レイの側にいたいと思う気持ちが痛いほどよく分かって、ついフォローするような言葉が口をついた。

「この地図に載っている温泉なら比較的安全ってことなんじゃないかな。ほら、危険なところなら温泉に泊まりに来た人にこういう地図なんか渡さないはずだろ?でも、私は強くないからレイがOKしないところには連れていけない。」

私がそうはっきり言うとリタさんは私の顔を見た後、レイの顔を見つめて、レイ様お願いします!ともう一度頭を下げた。

「わかった。じゃあ案内係としてお願い。でも、私たちがこの地図以外の温泉に向かう時は、リタさんには引き返してもらうからね。」

「わかりました!ありがとうございます!」
「あ、でも、今日のお昼ご飯は私が作るね。実は食材をもう準備してあるんだ。」
「はい!」



【森のうた】に来た時とは逆側にある崖を上り最初の温泉に向かう。

「こちらにある温泉は【薬湯】と言われています。ヒーリング効果のある木の根元にあり、どういうわけかその木のヒーリング効果が温泉にも流れているみたいなんですよね。なので、小さな傷なら治りますよ。ほら、着きました。」

薬湯は薄く緑がかった色のお湯で、スキルを使えば確かに【ヒーリング効果1】の文字が見えた。温泉の臭いを嗅ぎつけたベルがピョーンと飛び出してお湯で遊び始めたのを目の端で確認しつつ、このお湯にヒーリング効果を与えている木を探した。私の反対側に立っているあの木か。木というよりも小枝がたくさん集まって地面から生えているかのようだ。木自体はヒーリング効果が2あるらしい。せっかくなので、枝を少しいただくことにした。いただいた枝を巾着に入れつつ吹き出し口へと移動する。


「リタさん、この罠をこんなふうに岩陰にセットしてもらえる?」

私がお願いするとリタさんは張り切って罠を仕掛けに行った。ぴょんぴょんっと跳ねるように岩を渡りながら移動するリタさんを見て、レイが「あんまり急ぐと危ないよ!」と声をかける。はーい、と嬉しそうに笑うリタさんは背が低いこともあってか幼い子供の用でつい構ってしまう。つい放っておけなくなるというのは、リタさんのような子のことを言うのだろう。

「いくよ!」

レイが一気に二か所の岩を浮かべて私とリタさんがサッと蓋をする。一つの罠で平均して4~5匹取れる。それをチェックしては檻にいれ、2、3時間経過してもチョッキ―が見つかることは無かった。

「場所を変えよう。」
「うん、ベル、行くよ。」


森の中に人がひとり通ることが出来る道があり、その道をリタさんを先頭に進んでいく。道とはいえ最近は使われていないのか木が綺麗に避けただけの細長い空間であり、雪の上に足跡をつけるのはリタさんが最初だった。

「次の温泉は【森のうた】からは一番離れたところにある温泉になります。その名も【モユの湯】。モユという苔が生い茂っていて普段は黒いのですが、夕方になると苔が黄色く光るのです。とても幻想的な温泉なんですよ。ただ、今の季節は苔が冬眠するので、モユの湯を訪れる人はほとんどいません。ただの黒いお湯、しかも温泉街から離れているとなると皆さん、足が遠のくようで。」

「その気持ちはよくわかる。」

足のふくらはぎの真ん中までを雪に埋め、なんとか足を進めている私は心の底から共感した。ポンチョの裾は雪に触れ、材質のせいなのか雪が丸まってポンチョの裾に着くから、体が重くて仕方がない。

「ぷぷっ、ライファ大丈夫?なんか、こういう動物っているよね。」

後ろから抑えた声で笑うレイの声が聞こえる。

「抱っこしてあげようか?ぷぷっ。」

きっと半分雪に埋まりながら雪だらけになって遊ぶ動物の姿を思い浮かべているに違いない。振り返って「いらんっ!」と言えば更に爆笑する声が聴こえた。むむ。



「着きました。ここが【モユの湯】です。」

リタさんが前を譲ってくれ見えたのは雪の真ん中にぽっかりと浮く岩風呂だった。真っ黒のお湯に空の白が映り、湯面が輝いている。立ち上る湯気が、あたたかいよぅ、こっちはあたたかいよぅと誘っているかのようだ。その誘いにベルは一目散に飛んでいき、お湯にダイブした。時間はちょうど昼時。

「ここでご飯にしようか。レイ、罠を仕掛けるのを頼む。私はご飯の準備をするよ。」
「わかった。」
「私もなにか手伝います!」

「じゃあ、ライファを手伝ってあげて。」
レイに言われたリタさんが私の側まで来た時、リタの目の前に鋭い爪が見えた。

「あぶないっ!!」
咄嗟にリタさんをかばう。耳の下から顎にかけてのラインが熱い。

「リタさん、大丈夫?」
「ライファさん、私はだいじょうぶ。でも、ライファさん血が・・・。」

怯えたその声に、大したことないから大丈夫、と安心させるように微笑んだ。リタさんを襲おうとした鋭い爪が、鋭い爪を持った大きな鳥が空中で方向転換し、またこちらへと向かってくる。

「もう大丈夫だ。」

レイが私たちを守るように前に立ち、鳥を退けようと構えた。2mはある鳥は猛スピードで迫りながらも体が左右にぶれる。何かがおかしい。目を凝らしてみれば鳥の右翼に棒のようなものが刺さっており、片目もなにか怪我をしているかのようだ。

「レイ、殺しちゃだめだ。あいつ怪我をしている。」
私の言葉を受けたレイが構えを攻撃魔法ではなく防御魔法に変更した。

「あれは、コチョウという鳥です。人間を襲う事なんてないのに。」
リタさんがまだ怯えた声で呟いた。

「怪我で興奮しているのかも。助けてやらないと。」
私が言うと、レイがどうすればいい?と聞いてくる。

「とりあえず、捕まえよう。レイ、コチョウを結界で縛ることは可能か?」
「あぁ、できる。」

「では縛ってから治療しよう。実はさっき、薬湯のところからヒーリング効果のある枝を貰ってきたんだ。それを使う。」

「わかった。さっさと捕まえてしまおう。」
そう言ったレイの視線が私の傷に注がれているのを感じた。

「レイ、私は大丈夫だ。こんな傷、痛くないから。」
レイを安心させようと言葉にしたものの、レイは厳しい表情のまま頷いただけだった。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!

皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!

処理中です...