【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI

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第三章

30. 次の国へ

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ジェシー家の近くまで戻ってくるとリトルマインを取りだした。

「今のうちに連絡しておこう。次の行先も気になるし。」
「あぁ、そうだな。絶花を手に入れたことも早く伝えておいた方がいいだろう。」

レイが私の頬に手を触れながら言う。どうしたの?と表情で問えば、髪の毛が唇についていたから、と返事が返ってきた。まだ甘い気配が消えずに少し動揺する。それを振り切るかのようにリトルマインに話しかけた。

「先生?師匠?いますか?」
「どうしたのですか?」

今日は先生の声だった。

「絶花を手に入れましたのでそのご報告をと思いまして。」
「まぁ、それはよく頑張りましたわね。絶花の効果はどうでしたか?」

「それが効果が分からないのです。いつもなら薬材の横に文字が見えるのですが、炎のように揺らめいて文字を読ませてはくれません。」

「そうですか。願いを叶えるというのはあながち嘘ではないということかしら・・・。」

「そういえば絶花についてエンヤ族の長から面白い話を聞きました。『絶花は調合する者の胸の内を見るだけではなく、ほかの薬材たちの意思をも継ぐ』のだそうです。」

「なるほど。それは面白い助言ですね。」
「先生は薬材の意思ってどう思いますか?」

「意思はあると思いますよ。同じように調合しても異なる効果が出ることがあります。それが薬材の意思なのでしょう。調合師は薬材たちにどの効果を出してほしいのか、どういう効果を持つ薬を作ろうとしているのかを伝える必要があると思っています。絶花はもしかしたら内に秘める効力の種類がたくさんあるのかもしれませんね。だからこそ、他の薬材や私たちの細やかな声まで取り上げて叶えることが出来てしまう。それが効果のバラつきに繋がる。これは面白いですわ。」

なるほど、と心の中で思いつつも先生が半分夢の中に足を突っ込んだかのような声色になったので、慌ててもう一つの本題を切り出した。

「先生、次に手に入れるべき薬材は思いつきましたか?」
「えぇ、勿論ですよ。次はフランシールへ行っていただきたいのです。」
「フランシールってあのオーヴェルの上にある大陸ですか?」

レイの声に先生がそうですよと答える。

「フランシールにあるガチョパールという森に命の源と言われる幽玄の木という木があるのです。漂うようにして森を移動する木で5年に一度現れると言われおり、今年がちょうど5年目のはずです。心操効果を持つあの薬は飲む者の生命力をも奪う。救うためには心操効果を解く以前にまず奪われた生命力を与えることが必要なのです。」

「わかりましした。準備を整えて明日にはフランシールへ向かいます。ところで先生、お忙しいとは思いますがウニョウ玉と眠り玉が欲しいです。ここ数日でたくさん使ってしまって。」

「えぇ、大丈夫ですよ。近頃はグラントもだいぶ使えるようになりましたから。」

先生のにこやかな声にグラントさんの無事を祈った。



ジェシーさん宅に帰宅すると、ジェシーさんがあからさまにホッとした表情をした。

「それで、成功したのかい?」
「はい、なんとか。」

「君たちは本当に凄いね。この町を救い、入手困難と思われた絶花を手に入れた。不可能と思われることを可能にする。その裏にはたくさんの頑張りがあるのだろうな。私も頑張らねば。」

「ジェシーさん、今晩一晩だけ泊らせてもらってもいいですか?明日の朝にはここを発とうと思っています。」
「あぁ、勿論だよ。私たちはいつまででもいてくれていいくらいなのだから。」

その言葉に温かい気持ちになりながらお礼を言った。



そして旅立ちの日。私に抱き付いて泣きじゃ来るユウをメイリンが優しく引き離す。

「そんなに泣いたら干からびちゃうよ。」

私がそう言うと、「干っからびても・・・いいもんっ」と可愛い声が返ってくる。そんなユウの頭をレイが撫でた。

「本当にありがとう。君たちのお蔭で村には以前のような活気と笑顔が戻った。私たちは君たちを忘れない。また遊びにおいで。」

ジェシーさんが軽やかに笑う。

「俺、立派な猟師になるから!そしたら、魚を送ってやる。」
「おぉーっ、それは嬉しい。楽しみにしているよ。」

私はタイラーの頭にポンポンと優しく触れた。

「メイリン、一緒に遊べて楽しかった。今度また遊びに来るよ。」
「うん、ライファ、約束よ!」
メイリンの笑顔に私もレイも微笑んだ。




旅立ちには有り難い晴れた空をフランシールへ向けて出発する。リュックには帰り際に分けてもらった導きの葉と食材が詰まっており、2、3日は買い物をせずに済みそうだ。
飛獣石にまたがりいつものように移動する最中、遠くを見ては指の指紋を見たり、過ぎる鳥の目の色を呟いたりしているとレイが何をしているの?と聞く。

「目を鍛えているんだ。遠くを見て近くを見る。これを繰り返すことで目のピントを合わせる機能を高められるんだって。過ぎてく鳥の目の色を見ようとしているのは、高速で動くものを目でしっかり捉えられるようにしているんだ。ウガの動き、線にしか見えなかったからそれではいけないと思って。この間、先生にトレーニング方法を教えてもらった。」

私が答えると、私を抱えるようにして支えているレイの手に力が入った。そして顔を肩にギュッとくっつけてくる。

「くすっ、どうしたの?なんか甘えん坊みたい。」
「・・・そうかも。」

いつもなら少し脹れた顔で違うと否定してくるのに、こうして素直に認めるレイは珍しい。

「初めて会った時のこと、覚えている?」
「私がブンの木に挑んでいた時だろ?覚えているよ。正直、レイがいなかったらちょっと危なかったもんなぁ。」
「ちょっと、なんかじゃないよ。あの感じは骨までいくやつだった。」

「そ、そうだったかな。へへへ。偶然って本当に凄いよね。レイがあの場所をあの時間に通らなかったら出会わなかったわけだし。私とレイじゃ、あの時に出会ってなかったら、もう出会うことなんてなかっただろうなぁ。」

「それは違うよ。あの時出会っていなくても、きっとライファとは人生のどこかで出会っていたと思う。人生には必ず出会う人っていうのがいて、その人達とはたとえどんな道を選んだとしても出会うんだ。」

そこまで話すと声を落として、ライファあったかい、と囁いた。

「ライファ。」
「ん?」
「私から離れていかないでね。」
「どうした?突然。」
「・・・どうしたんだろ。ライファとこうしていられることが幸せだから怖くなったかな?」

レイがそう言って笑った。ターザニアにいた頃もそう言われたことがあったことを思い出す。あの時は私がレイから離れる準備をしなくてはと口にしたことが引き金だった。また不安にさせているのだろうか。私はお腹に回っているレイの手に自分の手を重ねた。

「離れないよ。私もレイと過ごす日々が嬉しいから。」
一瞬、ふっとレイの空気が柔らかくなり安心していると、レイがピクッと体を硬くしたのを感じた。

「ライファ、そういうこと他の人にも言ったりしてないよね!?」
「えぇっ!?言ってはないかな。・・・うん、言ってない。」
「言ってはない・・・。言っては・・・。言われたことはあるの?」

レイの言葉に記憶の扉が開いた。「もしお前の場所がなくなったら俺の側に来い。俺が嬉しいから俺を幸せにしに来い」と言ったクオン王子。その言い方がクオン王子らしくて今思い出しても笑ってしまう。あの言葉にどんなに救われただろう。

「へぇ~、そんな顔するんだ。」
「ん?」

これはいつもデビルレイが出てくるパターンだ。デビルレイの気配を感じつつも、思ったことを口にする。

「でも、私が一緒にいて嬉しいのはレイだけだから。楽しいと思う人は他にもいるけど、嬉しいと思うのはレイだけだ。」

レイが私の肩にぎゅっと顔をうずめた。

「え?レイ!前見て!前、見ておかないと!」
「ちゃんと見てるから大丈夫。・・・ねぇ、ライファ、そういうのなんて言うか知ってる?」

レイからデビルレイの気配が消えている。

「さぁ、なんだろ・・・。」
「殺し文句って言うんだよ。」

レイが嬉しそうに囁く。

「あ、でも、それはそれだから。あとでしっかり私のものだっていう印をつけようね。ドーンテール伯爵の家でつけた印も薄くなっただろうし。」

「!!!。」
レイの言葉に動揺したまま移動は続いた。


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