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第三章
66. ボルシチ
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あったかい食べ物と言えば汁物だろう。
美味しそうなお肉とワインも貰ったんだよな。チョッキ―を探しに行くっていうのにワインをくれるとは、ピクニックか何かと勘違いしているに違いない。酔っ払って捜索なんてできやしないのに。ルカ、重かっただろうな・・・。
そうだ!このワインを料理に使ってしまおう。いいワインそうだから勿体ないかな・・・。えぇい、構うものか。きっといいワインなら美味しい料理になってくれるに違いない。
「むふふ。」
「お前・・・変なもの作る気じゃないだろうな。」
「ロッド様、失礼なことは言わないでください。私、美味しいものを食べるのが大好きなのです。一日3食しか食べられない大切な機会に変なモノなど、まず私が食べたくはありません。」
「ら・・・ライファ、ほどほどに。」
ビシッと宣言していると少し離れた所からルカの呆れ声が聞こえた。
「くすくすくす、それはどんなお料理が出てくるか楽しみですわね。」
「あ・・・、あの、もしも魔力に余裕があれば時短魔法陣を放ってもらうことは出来ますでしょうか。いつもはレイ様にお願いするのですが・・・。」
レイは今目を閉じて森に意識を集中している。あれは結構魔力を削ぐはずだ。
「それでしたら私がお手伝いできますわ。ね、いいでしょう、ロッド様。」
シンシア様に微笑まれればロッド様がダメと言えるはずはなかった。
お肉に下味をつけてから表面をさっと焼き、鍋に入れる。サワンヤや野菜などを適当に入れ、ワインを思い切って半分ほど入れた。
「あぁっ、料理に使うのか!?勿体ない。」
「半分しか使わないので、残りはロッド様飲みますか?」
ロッド様に話しかけつつ、この料理の要となるトマトに似た野菜を投入し、お肉の臭みを抜くために香りの強い葉っぱを投入した。
「半分か。一人で半分は多いな。お前も飲むか?」
「いえ、私はまだ飲んでいけない年齢なので遠慮いたします。」
「へぇー、まだか。こんなに美味しいものが飲めないなんてかわいそうだな。」
くぅーっ。ロッド様の言葉にくうっと声を出しそうになるのを必死に抑え、心の中で叫んだ。師匠が虜になっているお酒にはものすごく興味があるのだ。あと少し、18歳になれば・・・。
「そう言えば私、あと5日で18歳になります。そうしたらお酒も解禁です。あ、シンシア様、この鍋の上に時短魔法陣をお願いできますか?」
「えぇ、任せてください。」
シンシア様は流れるような動作で宙に魔法陣を描くと鍋の上に飛ばした。
へぇ、レイとは動作が全然違う。レイはもっとこう、ペッて感じに簡単に魔法陣を飛ばすのにシンシア様はまるでダンスか何かのように腕を動かす。これも魔力の差なのだろうか。
「・・・お前12月9日が誕生日なのか。ふん、いいだろう。5日後、俺が特別に祝ってやる。酒を用意してな。」
「えぇ!?そんなとんでもないです。恐れ多くて。」
「まぁ、遠慮するな。いい酒を用意してやるぞ。」
「いや、そういうわけには・・・。」
「酒、うまいぞ。」
なんて魅惑的な響きだろう。
「ありがとうございます!」
ゴホン、というルカの咳払いが聞こえたが、聞こえないふりをした。だいたい、貴族に誘われて断れるだけの話術など私には無いのだ。ここは諦めて申し出を受けるのが一番丸く収まるだろう。
「そうだ、シンシア様はワインはいかがですか?ロッド様とご一緒にお飲みになられるのでしたら何か入れ物を用意しますが。」
「残念ですが私もまだ18歳になっておりませんの。18歳になるにはライファさんより更にもう一か月ほど待たねばなりません。」
「では私と同じ歳ということでございますか?」
「ふふふ、そうね。」
親近感がわいて、わぁっとなっているとまたルカの咳ばらいが聞こえた。今度はちゃんとルカを見て身を引き締める。
「シンシア様にお会いできて嬉しく思います。」
「まぁ、そんな風に言っていただけて嬉しいわ。」
「いい香りがする。もう出来るのか?」
ロッド様がいう通り、食材全体がよく煮込まれ香りが深くなった。
「もう少しです。」
味見をしながら調味料で味を調えてゆく。思い描いているのはボルシチだ。夢で見る本物のボルシチはビーツという栄養価の高い食材も使うのだがここにはないのだから仕方がない。とにかくたくさんの種類の野菜を入れて煮込むことで味に深みを持たせることにした。ワイン、野菜の旨み、肉、トンビャで更にコクを増し、ポン蜜で甘みをプラスする。
この寒さだ。保温効果を持たせた方がいいだろう。
先ほどから寒そうに手を擦り合わせているシンシア様の行動が気になっていたのだ。この料理を食べて温まってくれればいい。巾着の中からビョーン花を取り出すと鍋に投入した。スキルで確認しながら鍋をかき混ぜる。ビョーン花がしんなりしたところで取り出す。ボルシチの量に対しビョーン花が少なかったのだろう。本来なら保温効果3を持つ花なのだが料理は保温効果2になっていた。まぁ、いい。効果が全然ないよりは随分体が温まるはずだ。
「うん、美味しい。」
味見をすれば、体の中にボルシチの通り道を感じるほどやんわりとした温かさが広がる。いい出来だ。
「どれ?」
ロッド様が顔を近づけてきたので、ロッド様の分をよそって渡した。
「・・・宜しければどうぞ。」
一口目を口に含んだとたんロッド様が目を見開く。
「美味い。これは何だ?旨みが凝縮されているかのようだ。」
「ボルシチという料理です。体も暖まりますし、野菜たっぷりでお肉も入っていますから栄養もとれますよ。シンシア様も温かいうちにどうぞ。」
ふぅふぅと大胆にボルシチを冷ましながらパクパクと食べているロッドを尻目にシンシア様は受け取ったボルシチをそっと口に入れた。
「美味しいっ。これは美味しいですわ。なんて深みのある味なの!?」
シンシア様の笑顔が弾ける。その笑顔に嬉しくなりながらレイの元へと移動した。驚かせないように小さな声でレイの名前を呼ぶと、ぼうっとした眠りから目覚めるようにレイの目が私を見た。
「レイ様、食事の用意が出来ました。お食事になさりませんか?」
「あぁ、いただこう。すごくいい匂いがするな。」
レイにボルシチを渡すと軽く息を吹きかけてから口に運んだ。
「美味しい。初めて食べる味だね。体も温まる。」
「料理長に良い食材をいただいたので張り切ってしまいました。体が温まるようにビョーン花を入れて、保温効果を付与してあります。」
「まぁ!つまり薬にもなる料理ということですの?」
「薬、なんて大げさなものでは無いですが調合と料理を合わせた調合料理というものです。」
「そんなものがあるのか。どうりで体が温まるはずだ。温もりが体の先々まで行き渡るようだなとは思っていた。」
「そうなのです!さっきまで足の指先も冷たくなっていたのに今では温かい。いつもの料理を食べただけではここまで温まることはないのにと思っていたのです。」
ロッド様の言葉にシンシア様が同調するように頷いた。
「先ほど、シンシア様が寒そうにしていらしたので温かくなればと思いまして。」
「ありがとう、ライファさん。大変。ライファさんたちも寒いですわよね。どうぞ、お二人もお召し上がりになって。ここは正式な場ではないですし、一緒に頂いてもいいですわよね?」
「勿論です。」
「あぁ、いいぞ。」
シンシア様の言葉に皆が賛成して私とルカも食事にありついた。うん、やっぱり美味しい。お肉も柔らかいし野菜も良く煮込まれている。サワンヤが少し溶けだして、それがスープにとろみを与えているから余計に濃厚さを感じる。
「はぁ・・・。」
幸せのため息が零れるようだ。ルカを見ると普段の子供っぽい笑みが戻ってきていた。従者として過ごしている時には見ない顔だ。思わず素が出てしまう程美味しいということだろう。ふふふ。
「お前、調合ができるということか?」
二杯目をくれとばかりにロッド様がお皿を渡しながら聞いてきた。
「多少は・・・。」
「ふぅん、調合と料理か。面白いな。お前、使えない奴かと思っていたけどなかなかやるじゃん。」
使えない奴って・・・。
「・・・どうもありがとうございます。」
顔が引きつってないことを祈りたい。
美味しそうなお肉とワインも貰ったんだよな。チョッキ―を探しに行くっていうのにワインをくれるとは、ピクニックか何かと勘違いしているに違いない。酔っ払って捜索なんてできやしないのに。ルカ、重かっただろうな・・・。
そうだ!このワインを料理に使ってしまおう。いいワインそうだから勿体ないかな・・・。えぇい、構うものか。きっといいワインなら美味しい料理になってくれるに違いない。
「むふふ。」
「お前・・・変なもの作る気じゃないだろうな。」
「ロッド様、失礼なことは言わないでください。私、美味しいものを食べるのが大好きなのです。一日3食しか食べられない大切な機会に変なモノなど、まず私が食べたくはありません。」
「ら・・・ライファ、ほどほどに。」
ビシッと宣言していると少し離れた所からルカの呆れ声が聞こえた。
「くすくすくす、それはどんなお料理が出てくるか楽しみですわね。」
「あ・・・、あの、もしも魔力に余裕があれば時短魔法陣を放ってもらうことは出来ますでしょうか。いつもはレイ様にお願いするのですが・・・。」
レイは今目を閉じて森に意識を集中している。あれは結構魔力を削ぐはずだ。
「それでしたら私がお手伝いできますわ。ね、いいでしょう、ロッド様。」
シンシア様に微笑まれればロッド様がダメと言えるはずはなかった。
お肉に下味をつけてから表面をさっと焼き、鍋に入れる。サワンヤや野菜などを適当に入れ、ワインを思い切って半分ほど入れた。
「あぁっ、料理に使うのか!?勿体ない。」
「半分しか使わないので、残りはロッド様飲みますか?」
ロッド様に話しかけつつ、この料理の要となるトマトに似た野菜を投入し、お肉の臭みを抜くために香りの強い葉っぱを投入した。
「半分か。一人で半分は多いな。お前も飲むか?」
「いえ、私はまだ飲んでいけない年齢なので遠慮いたします。」
「へぇー、まだか。こんなに美味しいものが飲めないなんてかわいそうだな。」
くぅーっ。ロッド様の言葉にくうっと声を出しそうになるのを必死に抑え、心の中で叫んだ。師匠が虜になっているお酒にはものすごく興味があるのだ。あと少し、18歳になれば・・・。
「そう言えば私、あと5日で18歳になります。そうしたらお酒も解禁です。あ、シンシア様、この鍋の上に時短魔法陣をお願いできますか?」
「えぇ、任せてください。」
シンシア様は流れるような動作で宙に魔法陣を描くと鍋の上に飛ばした。
へぇ、レイとは動作が全然違う。レイはもっとこう、ペッて感じに簡単に魔法陣を飛ばすのにシンシア様はまるでダンスか何かのように腕を動かす。これも魔力の差なのだろうか。
「・・・お前12月9日が誕生日なのか。ふん、いいだろう。5日後、俺が特別に祝ってやる。酒を用意してな。」
「えぇ!?そんなとんでもないです。恐れ多くて。」
「まぁ、遠慮するな。いい酒を用意してやるぞ。」
「いや、そういうわけには・・・。」
「酒、うまいぞ。」
なんて魅惑的な響きだろう。
「ありがとうございます!」
ゴホン、というルカの咳払いが聞こえたが、聞こえないふりをした。だいたい、貴族に誘われて断れるだけの話術など私には無いのだ。ここは諦めて申し出を受けるのが一番丸く収まるだろう。
「そうだ、シンシア様はワインはいかがですか?ロッド様とご一緒にお飲みになられるのでしたら何か入れ物を用意しますが。」
「残念ですが私もまだ18歳になっておりませんの。18歳になるにはライファさんより更にもう一か月ほど待たねばなりません。」
「では私と同じ歳ということでございますか?」
「ふふふ、そうね。」
親近感がわいて、わぁっとなっているとまたルカの咳ばらいが聞こえた。今度はちゃんとルカを見て身を引き締める。
「シンシア様にお会いできて嬉しく思います。」
「まぁ、そんな風に言っていただけて嬉しいわ。」
「いい香りがする。もう出来るのか?」
ロッド様がいう通り、食材全体がよく煮込まれ香りが深くなった。
「もう少しです。」
味見をしながら調味料で味を調えてゆく。思い描いているのはボルシチだ。夢で見る本物のボルシチはビーツという栄養価の高い食材も使うのだがここにはないのだから仕方がない。とにかくたくさんの種類の野菜を入れて煮込むことで味に深みを持たせることにした。ワイン、野菜の旨み、肉、トンビャで更にコクを増し、ポン蜜で甘みをプラスする。
この寒さだ。保温効果を持たせた方がいいだろう。
先ほどから寒そうに手を擦り合わせているシンシア様の行動が気になっていたのだ。この料理を食べて温まってくれればいい。巾着の中からビョーン花を取り出すと鍋に投入した。スキルで確認しながら鍋をかき混ぜる。ビョーン花がしんなりしたところで取り出す。ボルシチの量に対しビョーン花が少なかったのだろう。本来なら保温効果3を持つ花なのだが料理は保温効果2になっていた。まぁ、いい。効果が全然ないよりは随分体が温まるはずだ。
「うん、美味しい。」
味見をすれば、体の中にボルシチの通り道を感じるほどやんわりとした温かさが広がる。いい出来だ。
「どれ?」
ロッド様が顔を近づけてきたので、ロッド様の分をよそって渡した。
「・・・宜しければどうぞ。」
一口目を口に含んだとたんロッド様が目を見開く。
「美味い。これは何だ?旨みが凝縮されているかのようだ。」
「ボルシチという料理です。体も暖まりますし、野菜たっぷりでお肉も入っていますから栄養もとれますよ。シンシア様も温かいうちにどうぞ。」
ふぅふぅと大胆にボルシチを冷ましながらパクパクと食べているロッドを尻目にシンシア様は受け取ったボルシチをそっと口に入れた。
「美味しいっ。これは美味しいですわ。なんて深みのある味なの!?」
シンシア様の笑顔が弾ける。その笑顔に嬉しくなりながらレイの元へと移動した。驚かせないように小さな声でレイの名前を呼ぶと、ぼうっとした眠りから目覚めるようにレイの目が私を見た。
「レイ様、食事の用意が出来ました。お食事になさりませんか?」
「あぁ、いただこう。すごくいい匂いがするな。」
レイにボルシチを渡すと軽く息を吹きかけてから口に運んだ。
「美味しい。初めて食べる味だね。体も温まる。」
「料理長に良い食材をいただいたので張り切ってしまいました。体が温まるようにビョーン花を入れて、保温効果を付与してあります。」
「まぁ!つまり薬にもなる料理ということですの?」
「薬、なんて大げさなものでは無いですが調合と料理を合わせた調合料理というものです。」
「そんなものがあるのか。どうりで体が温まるはずだ。温もりが体の先々まで行き渡るようだなとは思っていた。」
「そうなのです!さっきまで足の指先も冷たくなっていたのに今では温かい。いつもの料理を食べただけではここまで温まることはないのにと思っていたのです。」
ロッド様の言葉にシンシア様が同調するように頷いた。
「先ほど、シンシア様が寒そうにしていらしたので温かくなればと思いまして。」
「ありがとう、ライファさん。大変。ライファさんたちも寒いですわよね。どうぞ、お二人もお召し上がりになって。ここは正式な場ではないですし、一緒に頂いてもいいですわよね?」
「勿論です。」
「あぁ、いいぞ。」
シンシア様の言葉に皆が賛成して私とルカも食事にありついた。うん、やっぱり美味しい。お肉も柔らかいし野菜も良く煮込まれている。サワンヤが少し溶けだして、それがスープにとろみを与えているから余計に濃厚さを感じる。
「はぁ・・・。」
幸せのため息が零れるようだ。ルカを見ると普段の子供っぽい笑みが戻ってきていた。従者として過ごしている時には見ない顔だ。思わず素が出てしまう程美味しいということだろう。ふふふ。
「お前、調合ができるということか?」
二杯目をくれとばかりにロッド様がお皿を渡しながら聞いてきた。
「多少は・・・。」
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∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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