【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第三章

76. お茶会と作戦会議

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クッキー、メレンゲ、クリームブリュレが一人分ずつ綺麗にお皿に盛り付けられテーブルに並べられた。お花や葉っぱ、フルーツなども使いお皿の上に花畑が広がっているかのようだ。勿論、この素敵な盛り付けはランスさんのセンスだ。

「まぁ、これは素敵なお茶会ね。見ているだけで幸せな気分になれますわ。」
ヘイゼル公爵夫人が嬉しそうな声を上げた。

「こちらは全て君の従者が?」
「はい。ライファが料理長に手伝ってもらいながら作った菓子です。」
「初めて見る菓子ばかりだ。」

ヘイゼル公爵の隣でサリア嬢が口に手をあてて目を見開いていた。その背後でロッド様が何故か得意げな顔をしている。

「な、俺が言った通りだろ?ライファは珍しい料理を作る。しかも美味い。」
その言葉にヘイゼル公爵夫人が微笑んだ。

「さぁ、お茶にしましょう。」

本来ならジンさんとこっそりと行うお茶会だっただがロッド様のせいで大掛かりなもにになってしまった。家の主とお家小人が一緒に食事をすることもお茶会を共にすることもない。よって今はジンさんにはお茶会を遠慮してもらっている状態だ。「主とお茶を共にするわけにはいきませぬ」そう呟いて少しだけ残念そうな顔をしたジンさんに、夜に私の部屋でお茶会をしましょう、と誘うと嬉しそうに頷いた。多めに作ったお菓子たちは厨房で預かって貰っている。

「まぁ、美味しい。これはなんていうお菓子?」

公爵夫人の視線を受けて、おずおずと前に出た。
このような中で話すのは苦手だ。

「クッキーでございます。プレーンのタイプとナッツが入ったものを用意いたしました。サクッという食感をお楽しみください。」

「ははぁ、これがジンの言っていた菓子か。確かにクセになる美味さだ。しかもお茶によく合う。」

ロッド様の言葉に同意するようにヘイゼル公爵が頷く。サリア嬢は静かにクッキーを口に運んでいた。口に運んでいるから不味いということはないだろうけど、あんまりお気に召さなかったのかな。そう思ってしまうような態度だ。他の皆はメレンゲでは口の中に広がる甘さとナッツの香ばしさに驚き、クリームブリュレはその美味しさに皆が目を見開いた。

サリア嬢はやはり口に合わなかったのだろう。甘いのが苦手という人もいるはずだ。甘くないお菓子も用意すべきだったな。これは大きな反省点になった。

「ランス、このレシピは教えて貰ったの?レイ様がいなくなっても食べられるかしら?」
「はい、しかと教えていただきましたのでご安心ください。」
「そう、それは良かったわ。」

公爵夫人が微笑んだところで、お茶会の議題に入った。切り出したのはロッド様だ。

「親父、今日の捜索でチェルシー鳥の情報が手に入った。この森にいるということは確からしい。」
「ほう。ここ数年、どんなに探しても片鱗も見えなかったというのに。どんな魔法を使ったのだ?」

ヘイゼル公爵の問いにロッド様が一から説明を始めた。自分が怪しい木を見つけたこと、その内部にこの森の長となる魔獣がいたこと、病に伏せっていた魔獣をライファの調合薬で完治させたこと、その対価としてチェルシー鳥の情報を貰ったこと等だ。

「そこでチェルシー鳥がなぜ姿を見せなくなったのかの理由を知ったんだ。」
ロッド様は言葉を選ぶこともなく、単刀直入に告げた。

「俺たち人間のせいだよ。チェルシー鳥の外見を気持ち悪いと思う人間のせい。一匹しかいなく仲間を持たないチェルシー鳥は何もしていないのに嫌われる理不尽さから姿を見せなくなった。」

「なるほどな・・・。」
ヘイゼル公爵は何かを考えるように顎に手をやった。

「ですが、生理的に受け付ないものはどうしても受け付けられないでしょう?」
ヘイゼル公爵夫人は毅然とした態度でロッド様に向かった。ロッド様も負けない。

「だけど、何にもせずに嫌われていたらそりゃ隠れたくもなるだろうよ!だいたいいつもお袋は嫌いなものに対する態度が冷たすぎるんだよ!!」

「なんですって!!」
「あの、少しよろしいでしょうか。」

親子喧嘩に発展しそうな言い合いにレイが冷静に割り込んだ。

「なんだ?」
レイの言葉をヘイゼル公爵が拾い上げる。

「まず、チェルシー鳥と会ってみるというのはどうでしょうか。相手のことを知らずに好きになれと言うのは少し強引な気がします。イメージの悪い方でも接してみればそうではなかった、なんてことも良くあるでしょう?会って、相手を知って、それでも生理的に受け付けないのか判断してはどうでしょうか。」

「だが、それでは我々が生理的に受け付けないとなった時にチェルシー鳥はまた引きこもってしまうのではないか?」

「それもそうですね。では、我々だけではなくこの屋敷にいる人間全員ではどうでしょうか。我々の他にこの屋敷には執事や侍女、庭師や調理師等ざっと見ても20人はいるはずです。まずは公爵がお持ちのチェルシー鳥映像からチェルシー鳥の姿を紙に映して屋敷に貼ることでチェルシー鳥の外見に慣れましょう?本当に生理的に受け付けないのか、見慣れなくて苦手意識を持ってしまったのか、それも試してみたいです。」

「自分を好きになってくれる人がいるって知れば、チェルシー鳥もまた現れるようになってくれるんじゃないかな。何もしなくて嫌われまくるのは流石に俺だってキツイ。」

「好きになる努力をせよ、と。ふっ、ロッド、お前も一応頭は使ったみたいだな。いいだろう、全面的に協力する。好きなようにやってみるがいい。」

「屋敷の皆がチェルシー鳥の外見に慣れた頃、チェルシー鳥をお茶会に招きたいと思っております。」
レイがヘイゼル公爵を見つめて言う。

「わかった。その心づもりでいよう。」

その後のお茶会はまたお菓子の話に戻り、終始和やかに進んだ。チェルシー鳥への道が見えたことでヘイゼル公爵はご機嫌な様子で、先ほど喧嘩になるかと思われた公爵夫人とロッド様も何事もなかったかのように笑顔で話している。流石は親子といったところだろう。ロッド様の性格は案外、お母さん譲りなのかもしれない。


ルカと交代しながらの夕食を終えレイを部屋に送り届けた後、ジンさんとのお茶会の用意を始める。厨房に預かって貰っていたお菓子を受け取り、ランスさん特製のお茶を頂いて部屋に戻ろうとすると廊下を歩いて行くレイとサリア嬢の後姿を見かけた。先ほどのお茶会の時とは違いサリア嬢がレイに笑顔を向けている。

お散歩かな。レイはジンさんとのお茶会には来ないのか。確かにきちんと約束をしたわけではないけれど・・・。

ブンブンと頭を振る。美味しいお菓子とお茶。作った時に味見をしたきり私もお菓子をちゃんと食べてはいないのだ。美味しいお茶があって美味しいお菓子がある。こんなに幸せな時間は無いっ。沈みそうになる気持ちをグッと上げ自分の部屋の扉を開けた。


そして時間は20時。
コンコンとノックの後に満面の笑顔の紳士が現れた。

「ジンさん、ようこそおいで下さいました。」
私が挨拶をすると、続いてルカも頭を下げた。

「この度はお招きありがとうございます。こちらをライファさんに。」
「素敵なお花ですね。とても嬉しいです。ありがとうございます。」

お礼を言いながらジンさんを席に案内していると、部屋をノックする音がまた聞こえた。誰かと扉を開けるとそこにいたのはロッド様だ。

「ロッド様、いかがなされたのですか?」
「お前の誕生日を祝ってやるといっただろ?ほら、酒を持ってきてやったぜ。」

そうだった・・・。自分の誕生日だということをすっかり忘れていた。そしてそんな約束をしたことも実はすっかり忘れていた。

「あ・・・、ロッド様、本当にありがとうございます。ただ、これからジンさんとのお茶会がございまして・・・。」

「構わない。俺も部屋に入れろ。さっきのお菓子も美味かったからな。お茶会とお前の誕生祝いを一緒にやればよい。」

「お気持ちはとても嬉しいのですがロッド様、ロッド様が参加なされますとジンさんがこのお茶会に参加することが出来なくなります。」

ジンさんがこちらを伺い見るようにして小さくなって項垂れている。それもそうだ。前々から楽しみにしていたお茶会を昼間に一度見ているのだ。参加できずに見ているだけだなんてどれ程我慢したことか。

「あぁ、一緒のお茶会に参加できないってやつか。俺は一緒でも構わんぞ。正式なお茶会でもないしな。これでもお前たちのお茶会に勝手に割り入った自覚はちゃんとあるぞ。」

「おぉっ・・・。」

ロッド様にそんな心があったとは・・・。思わず漏れた声を手で塞ぐ。チラッとルカを見るとルカも頷いていた。こうなっては部屋に入れるしかないだろう。



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