【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第四章

2. グショウ、ユーリスアへ

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「グショウ隊長、休憩しなくても大丈夫ですか?だいぶ疲れた顔をしていますよ。」
「あぁ、大丈夫です。本当に危ない時には言いますから。とにかく今は急ぎたいのです。」
「まぁ、着いて倒れる分にはいいですけどね。優秀な魔女がなんとかしてくれるでしょうし。」

ジョンの言葉に軽く笑う。リベルダ様の元へと急がなくてはならない。きっとターザニアを滅ぼしたあの魔女、第三王妃に一番近いところにいるのは自分なのだから。



オーヴェルでフランシール国王と会った翌日、私たちもフランシールへと旅立った。フランシール国王がガルシアがターザニアを滅ぼしたと言い出した人物を探ると言っていたからだ。フランシール騎士団を探ることでターザニアが犯人だと言い出した人物の居所を探ろうと考えたのだ。

アートからの情報によるとグレンデール伯爵という人物が取り調べを受けているとのことだったが、情報をもたらした人物の居所を吐かないまま命が尽きたということだった。つまり、拷問された末、有力な情報をもたらさないまま死亡したということだろう。第三王妃の有力な情報も得られないまま過ぎる日々の中で第三王妃はきっちり夢だけは見せてきた。


 カレンという名前だった少女はララと名前を変え売春宿で5年過ごした。その間にスキルの扱いを覚え人の心の声を聞かないという選択もできるようになった。12歳になったときララは魔女と出会う。明かに高い魔力をもつ少女、本来ならこんな格好で街をうろつくはずもないその少女に魔女は興味を持った。病に侵され余命幾ばくも無い魔女はララの境遇に同情し自分の知識をララに引き継がせることにした。

それは私の目から見れば希望を与える行為だ。物心つく前には幽閉されたララは教育を与えられなかった。字を読むことも書くことも出来なかったララが魔女の知識を手に入れば今の境遇から抜け出すことなど容易だ。

きっと魔女はこの知識を持ってララに幸せをつかんで欲しかったのではないだろうか。だがそれを知ってもらうには魔女には時間がなさ過ぎた。魔女はララに知識を引き継いだ直後に亡くなった。

引き継いだ知識、記憶。
ララがもう少し勇気を持って魔女の記憶に飛び込むことが出来ていたら、或は知識をくれた魔女がどんな思いで知識をララに引き継いだのかその想いのこもった記憶にアクセスしていれば結果は変わっていただろう。

人の心の声に疲れ果てていたララは知識以外の記憶に触れることを頑なに拒んだ。引き継いだ記憶から生きるのに必要な知識だけを得、魔力を学び、ララは生まれ変わった。ローザと名を変え復讐と憎しみ、怒りを胸に抱いて。



「ライファさんたちもユーリスアに帰ってくるのですか?」

「えぇ、リベルダ様がそう言っていました。ガルシアとフランシールの戦争に巻き込まれてしまっては危険ですから。」

「そうですか。では、ご飯が楽しみですね!」
ふふん、と鼻歌でも歌い出しそうなジョンの口調にガクっとなる。

「あなたはいつも呑気ですね。」
「自分の道に楽しいを散りばめておきたいだけですよ。ご褒美がないと、ね?」

背中にゾクッとした視線を感じそのままペースを上げた。
ユーリスア。リベルダ宅がある森に着く。リベルダ様には到着予定時刻を記したチョンピーを飛ばしてあり、森に着けば案内がいるという返事を貰っていた。

「案内がいると言っていたが・・・。」
前回の記憶を頼りに森の中を進む。

こっちですよ。こっち、こっち。

突然聞こえてきた声に驚き、ジョンと顔を見合わせたが他に案内らしい案内もないのでその声に従う。間もなくして不自然に体を揺らしている木に行き当たると木が声をかけてきた。

「グショウさん、お久しぶりですね。リベルダから聞いておりますよ。さあ、どうぞ。」

そうだ、この木だ。前回もこうして木に結界を開いて貰ったのだ。

「話す木とは珍しい・・・。」
ジョンが呟くと木は嬉しそうに葉を揺らした。

「そうでしょう、そうでしょう。新顔のあなたも、さぁ、リベルダがお待ちですよ。」

結界を抜けてリベルダ宅の敷地に入るとシュルシュルっと蔦が飛んできた。ウニョウだ。ここのウニョウはどうも人懐っこ過ぎる。自分に構ってくれる人が来たとでも思ったのだろう。サッと避けると私の少し後ろを歩いていたジョンに絡みついた。

「うわっ。」
「・・・ジョン、油断しすぎですよ。ウニョウくらいは避けないと。」
「・・・。人様の家のウニョウを勝手に燃やすというのは非常識ですよね!?」

ジョンが確認してくる。そうですね、と笑顔で答えるとジョンは引きつった顔で微笑み返した。



「来たか。」
呼び鈴を鳴らしたわけでも声をかけたわけでもないのに、玄関に立ったとたんリベルダ様が現れた。

「お久しぶりです。」
私の言葉に、うむ、と頷くとリベルダ様はジョンを見てため息を吐いた。

「ジョン、お前はつくづく緊張感のない奴だな。それとも、絡みつかれるのがお好みか。」
「リベルダ様、私が絡みつかれたいと思うのはただ一人だけですよ。」
「グショウ、良かったな。」
「なっ!何が良かったですか!!」

思わず叫ぶとリベルダ様は可笑しそうに笑ったがジョンのウニョウを外してくれる気はないらしい。ウニョウ付きのジョンはそのまま中に通された。

「ダーナン村はどうだった?」

「第三王妃ローザの仕業だと思われます。村の惨状がターザニアとそっくりでした。近隣の村の話だとその日の夜、緑色の細い光が空に登り強い魔力を感じたと。その後聞いたこともないような魔獣の鳴き声が聞こえ、恐ろしくなって家の中に閉じこもっていたとのことでした。血だらけの女性がフランシールの人間が攻めてきたと助けを求めに来たという証言もありました。」

「その女性の居所は?」
「分かりません。家族がまだ村にいるとダーナン村に引き返したとのことです。」
「その女性がローザだという可能性は高いな。」
「そう思います。」

「何としてでも戦争を起こしたいか・・・。」
「リベルダ様、ひとつお願いがあります。」
「なんだ?」
「私の意識の中に私を私として置いておきたいのです。なんとかできませんでしょうか?」

「どういう意味だ?」
「どういう意味です?私は何も聞いておりませんが。」

隣を見ればジョンが私に何の相談もなく何を言い出すのかといった表情をしている。

「ガルシアからここに来るまでの間、ローザが私に見せる夢の意味を考えていたのです。私に自分の過去を晒すという行為が何度考えてもローザのプラスに働くとは思えない。事実、この夢のお蔭で私はローザに辿り通ことができたのですから。」

二人は黙って聞いている。

「ローザの過去は酷い物です。目をつぶり、耳を塞ぎたくなる日々の連蔵でした。そんな中ふと思ったのです。ローザは私に共感して欲しいのではないか、と。自分がどれ程の目に合ってきたのか知って欲しいのではないか。そう考えれば、私に自身の記憶を見せているのも納得がいくのです。」

「確かにな。人間は一人では生きられない。どんなに一人でいいと思っていたとしても、そう思えば思う程、人に寄り添って欲しいと思う生き物だ。」

「ローザはきっと私に会いに来ます。ローザの過去を疑似体験している私がどんな感情を抱いているのか知りたくなるはずです。ローザが会いに来た時に一方的に精神を覗かれるのではなく、会って話がしたいのです。」

「なるほどな。お前の言いたいことは分かった。お前の記憶の中に幼いローザが住んでいるようにお前もそこにいたいということか。やれないことはない。ただ、本体の魔力は落ちるぞ。」

リベルダ様はそういうと手のひらを上に向けて出し、そこに魔力を集中した。

「自分の全てを分け与える。」
リベルダ様が言い終わると手のひらに20cmのリベルダ様がいた。

「これが作れるようになったら私がお前の中に連れて行ってやる。」
「お願いします。」

「ミニチュアの私もグショウ隊長の中に行けますかね?いや、邪な心は微塵もないですよ。グショウ隊長が心配なだけです。」

ジョンはそう言いながらも怪しい笑みが止まらない。冷たい視線を送ると、何とも言えないいやらしい笑みを浮かべる。

「グショウ隊長のナカに私がいるってなんかエロくないですか?ぐふふ。」
「却下です!却下!!」

「ジョンの願いを聞き届けてやりたいのは山々だが、二人して弱くなってどうする。ジョンはグショウのサポートに徹しろ。ウニョウに捕まっている場合ではないぞ。」

自分の名前を呼ばれて嬉しかったのか、ウニョウがジョンの絡まりを強くし、うぐぐぐ、とジョンが唸った。いい気味だ。


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