【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第四章

24. 目覚めの予感

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ルカがライファから貰ったという薬を受け取りレベッカとのデート中に飲んでから3日が過ぎた。即効性は無いかもしれないとは聞いていたが、デート終わりにレベッカがしばらく会えないと言った時は寂しさに駆られたし、チョンピーが届けば今でも胸が弾む。

レベッカは私に惚れ薬を盛っていないのではないかという思いが日に日に増していた。正直に言えばルカが言っていたレベッカがローザの手先だという話も何かの間違いなのではないかと思っている。リベルダ様からの命でいつでもレベッカの魔力を追えるようにはしているけど。

「レイ、今日の補給は終わったのか?」
騎士団の宿舎を出たところで話しかけてきたのは幼馴染のロッチェだ。

「あぁ、回復薬一本分きっちり補給してきたよ。」

「しかしあの結界装置、凄いよな。騎士団の全員があれだけ魔力を補給してもまだ満タンにならないんだから。どれだけ溜められるんだよ。」

ロッチェは感心したように唸った後、ニヤリと口元を歪めた。

「そういえばレイ、お前レベッカと婚約したんだって?前にフェニックスで話した時は苦手だって言ってたくせに、一体何があったんだよ。あのダイナマイトボディにやられたか!?」

イヒヒと笑いながら私を小突く。

「そういうわけじゃないよ。気がついたらなんか、好きになっていただけだ。それにまだ婚約したわけじゃない。」

「そうなのか?街じゃ随分噂になっていたぞ。陰で泣く女がどれ程いるか。でもこれで俺にも女が回ってくるな。ふふふ。」

「噂に・・・。それは困ったな。」
「まぁ、いいじゃないか。いずれそうなるんだろ?」
「うーん。」

「なんだよ、歯切れ悪いなぁ。やばっ、もうこんな時間だ。急がないと演習に遅れる。最近、緊張感が増してきているから演習に遅刻なんてしてられん。急ぐぞ!」

ロッチェは私の肩を叩くと早く、と促した。婚約が噂になっている、どうしてだろう。私とレベッカしか知らないはずだ。もしかしてレベッカが言いふらしたのか?両親の許可も貰っていないのに?レベッカならやりかねない、不思議なほど素直にそう思った。レベッカに対する不信感を抱いた瞬間だった。




 演習場は町の外れにある膨大な原っぱを利用して行われる。この演習場は騎士団以外は立ち入り禁止になっており周囲に防御結界が張られている。本気を出しても余程のことが無ければ街の建物を壊すこともないので、思い切った演習が出来るのだ。

「これから10人ずつ2チームに別れて戦ってもらう。ここにヒーリング薬がたくさん用意してあるから気兼ねなく戦ってくれ。それから、更に緊張感を持たせるためにこちらの魔道具を用意した。」

団長が指し示したのは高さが50cm程の耳の短いヒューイを模したような外見をした魔道具だ。その魔道具が10体ある。

「この魔道具は素早く動き鋭い雷弾を発射する。雷弾を受けたものはその部分が緑色に染まり、暫く痺れて使えなくなるから用心しろ。この魔道具には敵も味方もない。誰でもいいから攻撃するように設定してある。つまり、敵のチームと戦いながらこの魔道具の攻撃も避けなければならない。それから、魔道具への攻撃は禁止する。結構高価なんでね。」

団長がニヤリと笑った。魔道具に対しては反撃することも出来ず避けるか防御するしかない。なかなか厄介な敵だ。団長の合図に二つのチームがザッと離れその間に魔道具が散った。敵チームから矢のような魔力弾が飛んでくる。チームリーダーの指示で防御結界が得意な4人が魔力弾を全て受け止めると、それを合図かのように目の前に敵が現れた。

「こういう時じゃないとレイと戦う機会なんてないからね。」
「ユーリさん。手加減してくださいよ。」
「そんな余裕はくれないくせ・・・にっ!」

言い終わると同時に円形の鋭い刃物のような魔力が私を襲う。体を反らして避けると背後で、うぎゃっという叫び声が聞こえた。ロッチェの声だ。ユーリさんに反撃の魔力弾を放ちながら視界の端にロッチを捉えると腕が緑色に染まっていた。大方、私が避けたユーリさんの魔力刃がロッチに迫り、それを避けて戦っている最中に魔道具からの攻撃を受けたのだろう。

これは思っていたよりたくさんのことを把握せねばならない。生き物なら殺気で気配を感じ取ることが出来ても魔道具は別だ。

ロッチェ負傷のチャンスにここぞとばかりに攻撃を仕掛ける敵。ユーリさんに対する警戒を解かないままロッチェへの援護射撃を数発放った。

「随分と余裕だねぇ、じゃあ、これでどう?」

ユーリさんが懐から取り出したのはユーリの相棒ともいえる魔道具だ。ユーリさんの魔力に馴染ませて作られており、ユーリさんが命令を解除するまで敵を追跡して攻撃し続ける厄介な魔道具だ。地面を高速で動き回る魔道具の攻撃を避けながら、ユーリの飛び魔道具の相手もしなくてはいけない。

チッ。どんなに避けてもついてくる。

ユーリさんの魔道具に向き合って迎え撃とうとすれば背後にユーリさんが迫る。ユーリさんを避けつつ刀を抜きユーリさんに切りかかった。剣の刃元でユーリさんが魔力を破裂させ勢いで刀が弾かれる。立て続けに飛んできた魔力弾をバック転で回避、ユーリさんの魔道具に魔力弾を放って蹴散らした。魔道具は一度私から離れたものの、すぐに体勢を立て直しまた攻撃をしかけてくる。

埒があかない。息が上がる。

ユーリさんが懐に手を突っ込み、4つ目の魔道具を放とうとしていた。
勘弁してくれ!

ユーリさんの手首に魔法陣を放ち空間に固定した。キュンと青白い光の柱が昇る。だが魔道具の放出は食い止められず、4つ目の魔道具が私に向かってきた。その魔道具にも魔法陣を放ち固定させる。同じ要領でユーリさんの魔道具は全て魔法陣で固定させた。

「へぇ、複数の魔法陣を操るのは至難の業なのにいつの間に?」

ユーリさんはそう言いながら自身の手の魔法陣に解魔法を使用し、魔法陣の固定から逃れた。
本当だ、いつの間にこんなことが出来るようになったのだろか。複数の魔法陣を操ることは繊細さが要求される。私の知っている私には出来なかったことだ。

「知らない。」
そう言いながらユーリさんの足に向かって二つの魔法陣を放つ。

「げ、まだ魔法陣を飛ばせるのかよ。」

ひとつは避けられ、もう一つは辛うじてユーリさんのつま先を捉えた。すぐ逃れられるだろう。だがそんな時間は与えない。魔力を片手に集中して集めると小さな弾の中に閉じ込めた魔力がチリチリと音を立てた。高速に回転させてユーリさんに投げつける。避けきれないと判断したユーリさんが同じく大きな魔力を練り迎え撃った。二つの魔力弾は中央でぶつかり、そのまま消滅したかに見えた。

「なっ!!」

ユーリさんの声が上がる。消滅したかに見えた私の魔力弾から新たな魔力弾が生まれユーリさんの腕を貫いたのだ。

「ユーリ、戦線離脱。救護班保護!」

団長の声が響きユーリさんが回収される気配を感じながら私はまた戦いの中に身を落としていった。





「ユーリさん!大丈夫ですか?」
演習後、救護室から出てきたユーリさんを見つけ駆け寄った。

「うん、ヒーリング薬を飲んだから、ほらこの通り。」
ユーリさんは腕をクルクルと回してニコリと微笑んだ。

「それにしても、いつの間にかレイは強くなったんだね。あれだけの魔法陣を扱えるにも驚いたし、最後の技も凄かった。今までは魔力量に頼り切った力任せ攻撃だったのにねぇ。団長もちょっと驚いていたよ。」

「ありがとうございます。」

頭を下げつつ、以前の自分の攻撃に対するユーリさんの評価の低さにクラッとなる。
こう思われていたんだな・・・、ははは。

「でも、どうしてこんなことが出来るようになっているのか全然思い出せないんですよね。」

「レイはリベルダ様の元に通って魔力の扱い方を教えて貰っていたことがあったから、その時に覚えたのかもね。記憶になくても体が覚えているってことだよ。こういうことから、失われた記憶も戻っていくのかもね。」

「だといいんですけど。」

姿を消したライファがわざわざ私に薬を届けるために一度戻った。それだけこの薬が私にとって重要なものなのだと想像がつく。それなのにレベッカへの想いが消えたわけでもなく、記憶を思い出すわけでもない。このままで良いのだろうかという気持ちが胸をざわつかせていた。

「まぁ、そんなに焦らないことだよ。記憶は頭の中の回路だからね。ある日突然、回路が繋がってザーッと思い出すさ。」



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