【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第四章

32. マリアとリアン

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遡ること一時間前。ユーリスア。

「・・・女、・・・王女・・・リアン王女!!早く起きなさい!!」
「ん・・・、マリア様、どうしてここへ?それに随分小さくなられて。」

「私の分身ですわ。本体はオーヴェルへ向かいましたから。そんなことよりもこのまま眠っていてはユーリスアが滅びますよ。」

「まさか、ローザが!?」
「えぇ、ローザの魔獣が来ています。騎士団が魔法陣の森で戦っていますわ。」

ベッドから飛び起きるとマリア様の前であることも憚らず着替え始めた。

「リアン、準備は出来ているのでしょうね?」
マリア様はそう言いながらテーブルの上に薬を並べた。

「勿論です。知識の泉、堪能させていただきました。」

「よろしい。ここに回復薬とヒーリング薬、そして解毒薬を置いておきます。健闘を祈りますわ。」

「ありがとうございます。マリア様もどうかご無事で。」

私が言い終わるや否やマリア様の体が透け始め、数秒後には完全に消えた。本体と合流したのだろう。

戦況はどうなっているのだろう。みんな無事だろうか。

部屋を出てピリッとした空気の中を足早に進む。

「リアン。」
「・・・お父様。」
「みんなを頼む。」
「お任せを。」

親子として話すのはこれが最後だろう。魔女となった私はもうここには戻らない。お父様が心配そうに私を見つめている。あぁ、最後くらい笑ってくれればいいのに。

「では、行って参ります。」




飛獣石に飛び乗ると冷たい風が猛スピードで私をすり抜けていく。それはまるで眠りの中で体験した知識の泉のようだ。映像版の本がたくさんある感じだと以前リベルダが言っていたが、正にその通りだ。

その膨大な本は私の意志で簡単に動く。どの知識を得るべきか悩んでいる時は、風のように映像がザーッと流れていくのだ。知識を受け継いで暫くはその景色に圧倒され、膨大な映像の風を呆然と眺めていた。

いけない、ぼーっとしている時間は無い。攻撃、防御、とにかくローザに対抗できる魔法を覚えなくては。

そう思った瞬間、映像が速さを増して流れ、攻撃魔法の映像部分で止った。ひとつの映像本を読み終えればもうひとつ、次々と知識が現れ夢中で知識を貪った。この映像本たちの凄いところは体感できることだ。魔法のトレーニングもまるで自身がトレーニングしているかのように経験ごと体に入ってくる。

なんて素晴らしいのだろう。

マリア様が起こしてくれなければもう暫く眠り続けるところだった。ここは知識を求める者にとってはそれだけ魅力的な場所だ。



 魔法陣の森へ着くと血の匂いと熱気のようなものが立ち込めていた。

「リアン王女、どうしてここへ?ここは危険です、早く城にお戻りください!!」
「大丈夫よ。私はもう王女ではないの。」

「何をおっしゃるのですか!!」
「理由はいずれ分かるわ。」

私の事情を知らない若い騎士に手早く答えていると、騎士の背後に魔獣が立った。

グガガガガガガガー!!

魔獣は爪で騎士を引き裂こうと腕を大きく振り下ろした。

「リアン王女、首を狙って下さい。そこが弱点です!」

どこからかヴァンスの声が耳に届く。振りおろした魔獣の腕を圧縮した魔力弾で弾き飛ばすと魔力を足のうらから発射し高速で魔獣の背後に回った。そこから瞬時に魔力刀を出し魔獣の喉を貫く。

「結界用意!!」

ヴァンスの声の直後、魔獣の体が大きく膨らみ破裂した。それを結界で防御する。

凄い。知識の泉で体感したことがこんなに上手く出来るなんて。攻撃系の魔法は得意な方ではあったがこれほど滑らかに魔力を使えるようになっていることに驚いた。これならいける。

「ヴァンス!魔獣の解毒薬を団員に渡して。これを飲ませてから倒せば魔獣は破裂しないわ。」
「わかりました!」

「団長!これより数体ずつ魔獣の動きを止めます。投薬と攻撃は騎士団の皆さんにお願いします。」 
「承知しました。」

「全員気合を入れなさい。一気にいきます!!」

おぉぉぉぉぉぉ、騎士団の勇ましい声が響いた。





 一方、オーヴェル。

「うじゃうじゃ、うじゃうじゃ、おりますわね。」

騎士団たちは魔獣の相手をするので精一杯の様子だ。空間移動魔法陣から現れた私たちに気が付いているものの、警戒する視線を送るばかりでこちらにまで手は廻らないようだ。

「思いっきり不審者ですよね。」

戦いの真ん中に出たというのに意外と冷静さを失わないルカが言った。

「ジョーンっ!!返事をしなさい!ジョーンっ!!」

叫びながら襲い掛かってくる魔獣の足を砕く。解毒薬を飲む前に死なれては困るのだ。

「グラント、私から離れないように。」

グラントは返事をしながらも私が足を砕いた魔獣に解毒薬を飲ませていた。
グラントは気も利くし使い勝手がいいのよね。小うるさいのが玉に瑕だけど。

「ジョンっ!!ジョーンっ!!チッ、聞こえないか。」
「マリア様、これを。声が大きくなります。」

グラント、なぜにこんなものを持ってきたのか・・・。助かるけど。

「ジョーン!!」

拡声器を使って叫んだ声はそこいら中に響いて、魔獣さえも一瞬動きを止める程だった。

「マリア様!?」
「遅い。」
「す、すみませんっ。」

「解毒薬です。これを飲ませてから魔獣を仕留めれば、爆発しなくなりますわ。魔獣を仕留めるたびに結界を張る必要もなくなるでしょう。」

「ありがとうございます。皆に配ってきます!」
「ルカもジョンについて行きなさい。多少は役に立てるでしょ。」

飛獣石に二人乗りで飛んでいくジョンとルカを背に魔獣たちに向き合った。

「手加減しなくてもいいですわよね?」

思わず舌なめずりをする。

「マリア様、騎士団員は葬らないでくださいね。」
「グラント、それくらい分かっていますわ。」
「それと、殺すのは解毒してからですよ。」

「分かっていますわ」、と言いながら手に溜めていた魔力量を半減させるとグラントのため息が聞こえたような気がした。

「行きますわよ!!」

足に魔力を宿すと思いっきり地を蹴り、勢いのまま魔獣の足を狙って砕いて行く。足を砕いて動きを緩慢にさえすればあとはグラントや騎士団が何とかするだろう。致命傷にならない部分になら思いっきり魔力を打ち込んでもいいのだ。

襲い掛かる魔獣を強化した体で蹴り上げ、足を目がけて鋭く細い魔力弾を撃つ。背後からきた魔獣の攻撃は結界を張った腕で受け流し、その流れのまま上体を低くし魔力刀で足を切断した。

気持ちいい・・・。

魔獣は時に甲高く鳴きながらしりもちをつく。私が近づくと騎士団たちは魔獣から離れ私に道を開け渡した。心臓の音がドクドクと音を立てているのを感じる。左から来た魔獣を足で蹴り飛ばすことで防御、右側にいる魔獣は先ほどの蹴りの反動を利用し体を回転させて斬る。片手を腰の巾着に入れると回復薬を取り出し一気に飲み干した。

ぐががががががが

「休ませてくれる気はなさそうですわね。」
そう言いながらこの状況が楽しくてたまらない。

「マリア様、危ない!!」

調子よく魔獣を倒し続けていた時だった。倒したと思っていた魔獣の傷が案外軽く、背後から魔獣の蹴りが迫っている。ヤバい。間に合わない。

その瞬間、私と魔獣の間に影が飛び込み、無様に崩れた。

「グラント!!」

グラントは倒れたのち、数秒痙攣を繰り返しその後、復活した。

「グラント!なんてことを!生き返らなかったらどうするつもりですか!」

私がそう言うと、グラントが困ったように笑った。そうだった。グラントはむしろ死にたいのだ。

「とにかく、私の身代わりになる様な真似はもうやめてください。魔女の恥ですわ。」
「わかりました。マリア様はもう少し冷静にお願いします。」
「分かっています。」

あぶない。あぶない。アドレナリンが出まくって冷静を失っていましたわ。まさかグラントに窘められるとは。リベルダに知られたら爆笑される・・・。

「さぁ、もうひといき、早々と全滅させますわよ。」



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