🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙

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加筆修正版 1 ◇知らなかった夫の顔

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登場人物   



樋口眞奈 《ひぐちまな》   専門職 薬剤師       35才

松本眞奈 《旧姓-松本》

樋口瑛士 《ひぐちえいじ》   リーマン        37才

神崎 蓮 《かんざきれん》 -----僧侶    元 建築家  43才



関根槙子《せきねまきこ》 ---樋口瑛士の同僚      39才


寺の住職の妻 小夜 《さよ》  60才

未来の〇〇〇 将大《まさひろ》


松本綾子《まつもとあやこ》----眞奈の母親 59才

松本浩志《まつもとこうし》---眞奈の父親         62才



藤原紀子《ふじわらのりこ》---浩志の部下        57才


        ―――――――――――――――――――――――

1.


妻ご乱心?
◇知らなかった夫の顔



  私は今の会社に新卒で入社してからン十年勤めている独身で
所謂お局的存在なんだけど、煙たがられないように周りの若い女子社員には
気配りを忘れないし、口は堅いほう。


 だけど先だっての3年に一度既婚者は配偶者や子供と参加してもよいと
言われている会社の慰安旅行での樋口瑛士の妻の言動は、明らかに常軌を
逸していたと思われ、それで口の堅い私だけど、つい樋口くんに尋ねてしまった。

 
「ね、あなた奥さんに何かした? それともよその女に盗られることを
脅えるくらいあなたのことが好きなのかしら?  あなたの奥さん。
どっちかよね?」



 私は奥さんが彼を激しく憎んでるように思えた。
 ……と言って、まさか本人にそんなことを面と向かって言えるはずもなく
意味不明でそれでいてちょっぴり過激ともとれる発言で彼を挑発して
みたのだった。



「藪から棒に何を言うかと思えば。どうしてそんなことを俺に聞くんだよ」



「あなたの奥さん旅先で若い女子社員に向かってすごいことを言ってた
からさぁ……気になっちゃって、私」



「そういうのいつもの関根らしくないな」


「でしょ? 私もそう思うけど、いつもの冷静な私を突き動かすほどの発言
だったのよ」


「な、それでどうなんだよ、そのすごい俺の妻の発言を俺に聞かせたいの?」


 とても奥さんがすごい発言をしたなんて信じられないとでも
言いたげで、樋口瑛士は私にそんなふうなセリフを放った。



「あなたに心当たりがあってもなくても、是非とも聞かせたいわよ。
 たぶんあなた、ショック受けると思うけど何人もの人が聞いてたことを
当の本人である樋口くんが知らないっていうのもねぇ~、実は私何かぁ
この辺がモヤモヤしてて嫌なのよ」


             ◇ ◇ ◇ ◇

 そう言って関根は自分の胸の辺りを苦し気に押さえて見せた。

 俺に従順でどちらかというと大人しく控えめでLOVE LOVEな妻が
一体全体どんな言葉を吐いたというのだ。


 まるで物議を醸すような言動だったと言わんばかりだ。

 くだらないジョークを本気にしているとか? とにかく関根は、妻の語った
話を聞かせてほしい、という言葉を俺に言わせたくてたまらないようだ。



 大して聞きたいとも思わないが、この流れではそれで? と聞いてやるしか
あるまい。



イメージ画 AI自作
表紙画像神崎 蓮 かんざきれん樋口眞奈 ひぐちまな


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